芥川賞候補 アイスネルワイゼン
おかしさに彩られた悲しみのノクターン
ちょっとした悪意のある言葉が琴音を追い詰めていく。そして、彼女自身も悪意のある言葉を出し続けるのだ。
その言葉の循環が切れることなく、うわすべりしながら心を蝕んでいく。
こんなクリスマスイブがあっていいのだろうか。
お節介で心配性なピアノ教室の生徒の母親は、琴音が恋人とうまくいっていないことも知らず、「プロポーズされるかも」と言う。
予定があると言っているのに、クリスマスイブにピアノの伴奏をするよう押し付けてくる小林。
自己中心的な歌手よし子。そして・・・。
どんどん負の連鎖が積み重なっていく世界。
何もかもがちぐはぐだ。けれど一つひとつの出来事はあっても不思議ではない日常の一コマなのである。
それが、ちょっとした悪意によって連鎖していく世界
根っこのところにある人間の怖さを感じさせる作品だ。
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