見出し画像

映画『ファーストラヴ』での「写真展」について

島本理生さんの小説が原作となった映画『ファーストラヴ』が2月11日に公開となります。

ストーリーのはじまりは、ある殺人事件でした。父親を殺害した容疑で、大学生だった娘の聖山環菜が逮捕され、その事件はワイドショーや週刊誌で大々的に報じられていきます。北川景子さん演じる公認心理師・真壁由紀は、取材を通し、その動機に近づこうとします。環菜の供述が二転三転する中、由紀は心の奥底に押し込めたはずの自身の「ある記憶」と向き合うことになっていきます。

画像1

窪塚洋介さん演じる由紀の夫・我聞は、写真館で地域の人々の姿を撮り続けています。かつては報道写真家として、世界中を駆け巡っていた人でした。

そんな我聞が開く写真展に展示する写真を、私と、同じくDialogue for Peopleフォトジャーナリストの佐藤慧で提供させて頂きました。海外取材で出会った子どもたちの写真と、日本国内で出会ってきたご家族の写真です。

この映画は、心の奥底に閉じ込められてきた「叫び」と、様々なトラウマに触れるストーリーです。自分の心の傷と重ね、苦しくなる人もいるかもしれません。法廷が「二次加害」の場になるシーンは、私自身も胸が張り裂けそうになりながら観ました。

それぞれの「過去」が複雑に交錯する中、我聞は決して、誰かの心の扉を無理やりこじ開けない人でした。相手の心のリズムに耳を傾けながら、そっと待つのです。それは私が取材で、最も大切にしたいことのひとつでもあります。

この映画でとりわけ印象的だったのが、登場人物たちの「視線」でした。圧するような上からの視線なのか、それとも相手に敬意を持って接するまなざしなのか、そうした違いがストーリーの鍵となる出来事と密接に関わってきます。

その上で私はこの映画を、メディアに携わる人にこそ観てほしいと思っています。詳しくは映画を観て頂きたいと思いますが、メディア内のジェンダーのアンバランスさが、環菜が心の中に閉じ込めてきたものを呼び起こす「引き金」となってしまいます。

権力を持つ男性が、女性をじろじろと値踏みし、品定めする「視線」…その暴力的な構図は、いまだ続くメディア内の根深い問題のひとつだと感じます。

上映の情報などは、公式サイトをご覧下さい。

最後に、映画内の写真展で展示している日本国内での写真は、岩手県陸前高田市をはじめ、東日本大震災や熊本地震の被災地で出会った方々のものです。陸前高田市で出会ったある写真館のお父さんの姿が、我聞と重なることがありました。

「学校に撮影に行って生徒がたくさんいても、一人一人を主役として撮るんだぞ」

既に他界してしまったその方の言葉は、今でも私の大切な指針です。

この映画を通し、私たちが取材で出会った方々の息吹を、写真と共に感じて頂ければ幸いです。

==============

私たちDialogue for Peopleの取材、発信活動は、マンスリー・ワンタイムサポーターの方々のご寄付に支えて頂いています。サイトもぜひ、ご覧下さい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?