見出し画像

未来への手がかり『自律する子の育て方』

「未来への手がかり」は、社会のこと、会社のこと、自分のこと、未来を考えるヒントになった本を記録するマガジンです。

元・麹町中の校長である工藤勇一さんと、神経科学と教育を結ぶ青砥瑞人さんの共著「自律する子の育て方」を読んで、自分の子育てと地域の教育を考えた話。

人はネガティブな記憶をより強固に記憶する

これはもう、今までのいろんなことが、なるほど、これは脳の仕組みだったのかと納得したのですが、ヒトの脳は本来、自己否定に陥りやすいそうです。

もともとは自分の欠点や弱みを把握したり、まわりの欠点や弱点を見抜き、生存確率をあげようとする機能のようです。(原始時代、野性的な環境を生き抜くには有効な機能だったことでしょう。)

そして人間の記憶の引き出し方として、ポジティブな記憶よりも、ネガティブの記憶の方が呼び起こされやすい傾向にあるとのこと。
例にあがっているのが、営業マンが5回の商談で4回成功し、1回失敗したとしても、失敗した1回の記憶がより思い出され、次の商談では不安になったりしてしまう。

ちなみに残るのはそのときの感情。否定された、自分はだめだという想いが記憶され、その後もそれが自分の欠点だと思い起こされ、自己否定の傾向が強まっていく

家庭でも職場でも、思い当たることが自分にもあるし、みなさんにもあるのではないでしょうか。

できないことを求めない

さて、そんなヒトの脳の仕組みがあることを前提に、どうこどもと接していけばよいのか。

まず怒らないようにする必要がありますが、そのためには高すぎる線引きをしないということだといいます。理想が高すぎると、それに届いていない自分を「自分はダメだ」「自分は恥ずかしい」と思うようになってしまう。

「みんなと仲良くしましょう」
⇒人ぞれぞれ違うから、みんなと仲良くするのは難しい。でもできたら素敵だよね、どうすればできるかな?
「差別してはいけません」
⇒人間は自分と異なるものを排除しやすい。差別の心はなかなか消せない。でもどうしたら意識して減らせるかな?

理想を押し付けるのではなく、できていないことが普通なのだと受け入れてあげること。そのうえで、意識と行動を変える問いをなげること

そうだよね、完璧な人なんていないよね。

ここではこども向けに書かれていますが、職場でも同じ。心理的安全性がなければ、恐怖で頭は停止し、言われていることは入ってこず、ただ自分はできない人間だという認識が強まるのみ。失敗してもいい、できないのが当たり前、そういう文化をつくる必要がある。

途方もなく大きな問題、はない

一方でじゃああらゆるストレスをかけないようにするのがいいのね、というともちろん違う。学校では、トラブルに向き合うことで、課題解決の方法や、その過程でのストレスの対処法を身に着けていく必要がある。

課題解決の方法というとたいそうだけれど、こどもに投げかけるのはこれ。

問題があるとき、とれる行動はこの4つ。
①我慢する
②気分転換をする
③自分で解決しようとする
④人に相談する

みんなは①②を選ぼうとするかもしれないけれど、実はこれは何も解決できない。そうすると問題の解決につながるのは、③と④の組み合わせなんだ

そうすると自分の抱える問題のうち、③でどこまでできるか、どこは④なのかを考え始める。

と、これを書きつつ、最近こどもと話したことを思い出した。
ここ1~2週間くらい、こどもがよく頭が痛いと言っていた。頭が痛くて、保育園を休む日もあった。でも他は悪くなさそうで。これは心の問題かな?と思って聞いてみても、しばらくは教えてくれなかった。

それがある夜、
私「やっぱり頭痛いの心配だな。何か心配なことでもあるの?」
こども「4月になるのが嫌なの…」
とぽつり。

あぁそうか。来年の4月、こどもは小学生になる。
そのあとも、「友達と会えなくなるのが悲しい」「朝起きれないよ」「一人で道を覚えられない」とぽつりぽつりと言葉をこぼす。
練習してひとりでできるようにするもの、ママとパパが頑張るものなどを決めた。

すると不思議と、その後頭が痛いということは減ってきた。
まだ5歳。でもすでにたくさんの不安や心配と向き合っているんだよね。私はこれからもその問題を分解する手伝いをするよ。

面白い教育は、お金のある地域の専売特許ではない

この本は、自分の子育てや職場のことを考えつつ、地域の教育のあり方のヒントにもなる。書いたのは千代田区にある区立麹町中の元校長先生。麹町中は公立でありながらエリート校として有名です。

施設もいろいろ整っていたりするのですが、でもこの本に書かれているのは、どこの学校でもできることでした。

自分の地域では教育的な魅力がなくて、子育て世帯を呼べない、という地域の方の声を聞きます。もちろんどうしても呼び込めない高等教育はあると思います。でも地域でできることはたくさんあると思う。

RCFが岩手県釜石市でやっていた釜石コンパスもそのひとつ。地域内外の人との交流を通じて、地域を知り、社会を知り、自分の生き方や価値観を考える。

住民参加型で小学校の新校舎をデザインした秋田県五城目町では、町のあらゆる教育をコーディネートする「教育フリースタイル協力隊」を募集しています。

地域に留学する取り組みも、広がりつつあります。

面白い教育は、地域でこそつくれる。そんな時代が既にやってきはじめている。

この記事が参加している募集

推薦図書

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?