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突然終わってしまった留学を振り返る〜①日本を「外」から見た経験

世界中で猛威を払うコロナ。その影響で、多くの日本人留学生が留学継続を中断せざるを得なかった。私もそんな一人だ。14日間の自粛要請の中、だんだん薄れていく留学中の記憶を留めるため、今この投稿を書いている。

こんな中途半端な留学でよかったか?といわれると、正直なところ、素直に「よかった!」と言える訳ではない。まさか、ここまでコロナが短期間で広がり、日常生活に支障が出る状態になると思っていなかった。そもそも留学開始時(2019年9月)では、新型コロナウイルスなど存在せず、そんな強制帰国なんてないだろうから思い切り10ヶ月頑張ろうと10ヶ月間の色んな計画を立てていたものだからショックは計り知れない。

それでも、私は

留学してよかった!

と思えることは沢山ある。

大きくわけて6つある。

①日本を外から考えられたこと。
②現地の文化に触れ、実際に体験できたこと。
③国籍問わず、深い話ができる友人ができたこと。
④日々、自分の見たこと聞いたこと感じたこと考えたことを「言語化」する習慣がついたこと。
⑤現地の社会問題に貢献する活動ができたこと。⑥生活を大切にすることができたこと。

今回は、①について書き留めていきたいと思う。これは、個人的に「予想外の収穫物」だった。普通、留学となると「現地の文化に触れる、現地の政治を考える」ことを考えがちだと思う。しかし、それと同時に自分の国、日本を客観的に捉える機会もできる。

具体的にしてきたことは、以下の4つだった。

①「日本を外から学ぶ学習会」の運営
②在英日本人のコミュニティへの参加
③日本語教師のアルバイト
④「日本」に関するイベントへの参加

①は、ご縁があって関わらせていただいた。年に3-4回、日本でかなり有名な方をスカイプ等で繋ぎ、日本の社会問題について講演していただく学習会だ。日本にいても気づけることかもしれない、でも日本ではそれに対して「声を上げる」ことは難しいし、話すことさえも「タブー」とみなされがちだ。でも、それでは問題は解決しない。だから、声を上げる、人を巻き込む。その大切さを学ぶ経験となった。この学習会の参加者は、意識の高い学生ばかり。そんな仲間と知り合えたことも良い思い出だ。

②は、大学内のソサエティ(サークル)繋がりでできた出会いだった。年代は様々。自分のような学生から60代の方まで多岐に渡った。沖縄に関する読書会をしたり、NHKのドキュメンタリーを見て議論したり...と、自分と周りの友人ではなかなかできないものばかりだった。また、このコミュニティで自分の抱く社会問題について話させていただく機会を得た。色々準備は大変だったし、人前で話すことにあまり慣れていなかったので、自分が伝えたいことが伝わったかは確かではないが、「とにかくやってみる」精神で考えたら上等だと思う。

③は、かなり大変だった。留学中の個人的な目標の一つに「経済の中で、自分を存在させる機会を持つ」を掲げていたので、頑張ってみた。飲食店のアルバイトなら日本とあまり変わらないからやりやすかったかもしれない。でも、留学している「日本人」であることを生かして「お金」という対価を得たかった。
日本語で知っているのは「こんにちは」くらいの相手に一から日本語と日本文化について教えていく。「どうして"の"をつけなきゃいけないの?」や「rとlの区別はどうしたらいい?」など、答えづらい質問に悩まされた。ネイティブな自分にとっては「当たり前」なことが彼らには当たり前ではない。それをどう伝えればいいのか?どうしたら相手に理解してもらえるか?凄く難しかった。
そして、彼らに日本文化について伝えていくと「すごい」と感嘆してくれた。よくメディアで報じられる外国人は「日本文化すごいよね」と言っているが、まさにそうだった。①や②の経験で日本を外から考えると、ジェンダー格差や投票率の低さなどの「日本の悪い面」しか目がいっておらず、落ち込むことが多かった。しかし、このアルバイトで日本を楽しみながら学ぶ生徒達を見て「日本はまだポテンシャルがある。」と確信できた。

④は、以前のnoteでも書いたように日本舞踊のボランティアをしたことも含まれる。

それ以外にも、日本に関するイベントがロンドンではかなりあったので出来る限り行ってみた。

ケンジントンにある、Japan Houseでは毎月日本のイベントが開催されている。50年以上前に渡英し、活躍した日本人のトークショーや、日本文化の実演、日本政府の政策の講演会など、日本を離れていても日本と触れる機会は多かった。
留学し、慌ただしい生活の中で日本が恋しくなる時が何度もあった。そんな時、このようなイベントで元気をもらっていたりした。

また、2月末からヴィクトリア&アルバート博物館では日本の着物の展覧会が行われていた。日本人の自分にとってもなかなか見られない様々な年代の貴重な着物を見て、「日本の美意識」を再確認できた。ドイツ人の友人と行ったが、彼女も大満足だった。ロンドンにはナショナルギャラリーや大英博物館など、西洋の芸術に触れる施設が沢山あり、それらを訪れるたびに私は「西洋の美意識」に陶酔し、日本の美意識を忘れがちだった。しかし、久しぶりに日本の文化と向き合い、西洋とは違う日本独自の美しさや文化の概念の良さを実感できた。

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長くなってしまったが、日本の良い面と悪い面を「外から」考える経験はとても貴重だったと思う。人間、あるものを失ってからそのものの大切さ気づくというが、本当にそうで、日本を離れたからこそ自分にとっての日本の重要性を再確認できた。再確認できたこと、色んな経験ができたことに満足するのではなく、そこから行動をしていく予定だ。コロナが落ち着いたら再び、書道を習おうと思っている。日本の博物館巡りもしたい。そして、このように「声をあげる」ことも大切にしていきたい。そんなことに気づけた留学を、私はよかったと思うのである。(②に続く。)


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