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FFXIV 僕らは久遠の絆を誓い合うことにした。(1)

エターナルバンドセレモニーとは。

MMORPGのFINAL FANTASY XIV (以下FFXIV)には、エターナルバンドと言うシステムがある。

特別な相手と久遠の絆を誓い合う「エターナルバンド」が追加されます。

特別な相手と久遠の絆を誓い合う誓約です。
エターナルバンドのスペシャルクエストを進めることで、誓約の儀式「エターナルセレモニー」を挙げることができます。

※2014/12/9 19:30 修正 (公式サイトより)


断続的にゲームを休止・再開を繰り返していた私には知らぬ間に実装されていたシステムで、ピンと来るものがない。
公式サイトでその内容を確認してみると。

…ほぼ、結婚式じゃないか。

公式では『結婚式ではないです』と明言されているけれど、見た目100%結婚式。

[ 公式サイト : エターナルバンド・セレモニーとは 参照。]

ただ、キャラクター同士の性別や種族に関係なく、Lv50以上で条件を満たせば、特別な相手久遠の絆を結べる、とのことだった。
実際どんな風に行うのだろうか。

・ゲーム内ではなく公式サイト内から申し込み。
・無料と有料のプランがある。
・金額が高いほど特典が豪華。
・クエスト受注後2人でそれを達成し、セレモニー様式を決め、会場を予約。招待したいプレイヤーに招待状を渡すなどして当日へ。
・セレモニーを終えるとスペシャルクエストがコンプリートとなる。

エターナルバンド・セレモニー、略してエタバン。
性別や種族の隔たりがなく、見た目の面白さや楽しさを追求した『ネタバン』や、セレモニーを行ったプレイヤーだけが得られる特典目当ての『アイテム婚』などと言った造語が目を引いた。
遅れ馳せながら復帰してきたプレイヤーの私は、やや冷めた目でそれらを眺めていた。特定のプレイヤーと長く仲良く付き合うのが、容易ではない事を知っているからだ。
自分には、あまり関係のないイベントだなぁ、その時はそう思っていた。

気持ちの変化、気持ちの整理。

新規キャラクターでの復帰後、5か月程で最新パッチの内容まで遊んだ頃。その後長く親しく遊んで下さるプレイヤーさんと出会った。
(他のプレイヤーさんと書き分ける為、以下「相棒さん」と呼ぶ。)

フレンドさんもぽつぽつと増えて来て、何度かエターナルバンド・セレモニーに招待された。実際にそのイベントに参加してみると、案外楽しいものだな、と素直に思った。洋画で観る結婚式にどこか似ていたし、人によっては『マンマ・ミーア!』状態で、そういうお祝いも興味深かった。

外見の組み合わせはどうであれ、縁あって仲良くしているプレイヤー同士がこれからも仲良くしようね、というイベントだと考えたら、とても温かな気持ちになるものだ。

そんな事を何度か経験すると、自分と相棒さんともエターナルバンド・セレモニーが出来たらいいな、と考えるようになった。
これからゲームをより楽しく遊ぶ為に自分たちもと思い、相棒さんに相談してみた。『我々もいずれエターナルバンド・セレモニーしませんか?』と。

返事は保留された。
私とエターナルバンド・セレモニーを行いたいとは思うけれど、以前のことがあるので気持ちの整理をしたい、という話だった。

な、なんだか現実(リアル)のバツイチ同士の話みたいで生々しいな?(笑)
現実の我が身も振り返りつつ(どーでもいいが、筆者は離婚歴あり)苦笑いをしたが、相棒さんの気持ちは大切にしたかった。

我々は元々同じサーバーでスタートしていたが相棒さんは引越し、出会った時は別々のサーバー、再び私と同じサーバーに戻って一緒に遊ぶ機会が増えて今。戻って来たのには理由があった
以前の交友関係があまり好ましいものと思えず、そのプレイ環境を変える為に戻って来たのだった。
相棒さんは、かつて交流のあったフレンドさんとエターナルバンド・セレモニーを行っていた。絆を誓い合った者同士とは言え、その後のプレイスタイルの大きな違いから共に冒険する事もなくなり、相手への不信感からエターナルバンドを解消。セレモニーを行ったことを酷く後悔している様子だった。

そんな気持ちのまま強引に勧めるものでもないし、話を伺いつつ一緒に考えてみることにした。

たかがゲーム、されどゲーム。
そこに生身の人が関わっている以上、その気持ちを無下に扱うのは私の信条に反した。
これからも仲良く楽しく遊びたいなと思う人に出会えたのだから。

整理の時間と心ない投稿。

話しを聞き、時には一緒に考え、時間をかけて相棒さんの気持ちの整理を見守っていた。
なにしろ、私が休止していた長い間、その長い間と同じくらいずっとゲーム内の人間関係に悩まされていたらしい。わずかな時間で解決できるものとは、到底思えなかった。
それでもFFXIVが好きだから人間関係を理由に止めたくないと、プレイ環境を変えて、新たな人間関係を築こうと決めた相棒さんの勇気を、私は称賛したい。

その環境を変える行動を起こして一年が過ぎようかというある日。
あるSNSで、相棒さんのキャラクター個人名が書かれた晒しスレスレの投稿を目にした。

正直、腹が立って仕方なかった。
相棒さんは以前の人間関係の悩みから脱しようと努力しているのに、何故そっとしておいてくれないのだろうかと。

その投稿は、以前の相手がエターナルバンド解消に伴う不満を、周囲に触れ回っているのが見て取れる内容だった。本人ではなく、話を聞いた第三者が事の一側面を捉えて好き勝手に吹聴しているものもあった。
フォロワー同士で庇護している訳だ。
相手が目にする可能性のある場所に非難を投稿するのは『ちょっとそれはあんまりでないの?』と腹立たしさを通り越して、気味が悪かった。SNSでやることじゃない。
自分のことを棚上げするのに余念がない、私にはそう見えた。
その投稿の一部には、比喩ながら私のことも書かれていた

エオルゼアの離婚には守秘義務もなにもないのか…いや、これはプレイヤー個人の人間性の問題だな、と唸った。
※エターナルバンドの解消について、リアルの様に協議書の作成やその守秘義務はないけれど、ネットのエチケットとして口外すべきではない話もある。また、個人を特定できる名称を用いた誹謗中傷は公式の定める「禁止事項」に抵触する可能性はある。

私の聞いていることも、相棒さん側からの話で一側面でしかない。
ところがある日、SNS上に間接的に繋がりのあるフォロワーが居た為に、その相手の言動が投稿と言う形で私のタイムラインに流れて来て、又聞き状態となってしまい知る羽目になった。
そのおかげで、相棒さんの証言の裏付けが取れてしまった。

結果、ことの良し悪しと言うよりは「プレイスタイルが決定的に違うので仲良く遊ぶのは難しい」と私には思えた。
(突き詰めると以前の相手の言動に疑問符が多過ぎるのだが、ここでは割愛)

FFXIV公式の利用規約内にある禁止事項に則って通報したかったが、それを私はしなかった。
私の気持ちだけで事を荒立てて相棒さんを傷つけることになっては、元も子と無い。
それに相手の投稿内容のあまりのアホらしさに憤るのも、しょーもな…と思えたからだ。(だがしかし忘れはしない)

おかげで、『私とエターナルバンド・セレモニーをしませんか?』などと切り出せる状態ではなくなってしまった。
それからしばらくは、エタバンの話題には触れなかった。

修行僧はお山を下りた。

MMORPGはFFXIVが初めてだと言う相棒さんは、やや閉塞感ある限られた人間関係の中で悩んでいた様子だった。
悩むことは決して悪いもんじゃないけれど、落ち着いて客観視する為には環境を変えた方が良いとも思っていた。
私が進言する前に相棒さん自らワールド移転を決めたので、応援したい気持ちは以前にも増して高まった。

そうして遊んでいる内に新しいフレンドさんとのご縁も広がり、誘ったり誘われたり交流のある冒険を楽しんでいた。
私は、これぞMMOの醍醐味だよねと思うシーンで、相棒さんは感極まって泣いてたり。これくらいの失敗は気にしなくていいよと言うシーンで、相棒さんは大慌てになったりと、本当に新鮮な気持ちで遊んでいるのが窺えた。

今の方がこれまでよりとても楽しい、そう言ってくれるようになった相棒さんを見た時は、正直ちょっと泣けた。
私が想像していた以上に、誰かと一緒にコンテンツを遊ぶことが極端に少なかったそうだ。絆を誓った相手がいても、一人で黙々とクエストをこなす姿を想像したら薄ら寂しい気持ちになる。勿論、絆を誓ったからと言って共に遊ばなければいけないなどという義務はないにしてもだ。

一人で自問自答を繰り返していた長い時間を経て、今は少しずつ悩みと対峙でき始めている相棒さんの様子がどこか「下山した修行僧」を彷彿とした。煩悩と対話し乗り越え悟りを得ているかのようだった。
相棒さんがこれまでとは違うプレイスタイルを獲得して、更にゲームを楽しみ始めている様子に、私も日々考えさせられた。

楽しむと言うことについて。

そうして昨年の夏。
『今はこれが精いっぱいだけど』
と私の誕生日にエオルゼアで、ある指輪を相棒さんは贈ってくれた。
エターナルバンド・セレモニーを行う為に必要なスペシャルクエストで使う指輪だった。以前のことやSNSのことで相棒さんのショックが大きかっただろうと思っていた私は、このタイミングでお祝いとして贈られた上に意思表示も頂けると思っていなかったので、存外に喜んだ。
私からも後に同じ指輪を贈って、折に触れて話し合って来た。

そうしてFFXIV復帰から2年が過ぎた頃。このタイミングでもう一度尋ねてみようと私は思った。

お互いの考えの再確認。

プレイスタイルや出来事について、事後に互いの考えや感想で雑談する我々のデブリーフィング。最近はVC(ボイスチャット)の代わりにハングアウトを使うなどしてMMORPG以外にもFPSも一緒に遊んでいた。
どのタイトルでも自然とデブリーフィングをしていた。

そうして先月(2019年2月)19日、シーズナルイベントのヴァレンティオンデーが延長された最終日に、華やかな会場をもう一度見ようとふたりでやって来ていた。エターナルバンド・セレモニーの会場にも似たその場所で撮影するのも楽しいひとときだった。
そのイベント後『我々もエターナルバンド・セレモニーをしませんか?』と尋ねてみた。
来月末に我々は出会って丁度2年。
こんなにも長く一緒に遊べると出会った当初は考えていなくて、その記念にどうだろうかと切り出した。

答えはYesだった。

まだスペシャルクエストも受けてないのに、胸を撫で下ろす気持ちだった。
ゲームの中だろうが現実だろうが、痛手から立ち直るのは誰しも容易なことではない。『今はこれが精いっぱいだけど』と相棒さんから受け取った指輪をいつも持ち歩いて、いつ話そうかと考えていた半年ほどの間を振り返っていた。

『ネイサンとだったらいつでもokですよ!!』

え?(笑)

…半年前は『本当はエタバンしてみたかったんですけど、なかなか決心がつかず』と言われていたので、私も『のんびり考えましょう』と返事をしていた手前、いつでもってどういうこと???と思ったものの、それだけの心境の変化があったことを喜びたいので、言葉選びはどうでもよくなった。

本当に嬉しかった。

それまでお互いが考えていたことも併せて話し合った。
実際行うとなれば我々は男性キャラ同士のセレモニーとなる。
私が事ある毎に“性別を気にせずできるセレモニーがいいですね”と話していたせいで、「ネイサンはエタバンしたくないようだ」との誤解を招いていたのも判った。ネガティブな意味合いになる言葉選びや会話は、誤解防止の為に自重しよう
会話の内容よりも、イメージで記憶されることもあるからだ。

僕らはエタバンできるのだろうか。

そうして翌日深夜、ふたりでスペシャルクエストを受注しに、会場となる大聖堂に向かった。
今から準備すれば、希望の開催日まで一ヶ月以上の猶予がある。慌ててバタバタとした準備は避けたかった。
まだプランも決めていなかったので、打ち合わせとちょっとした確認も兼ねて下見気分で現地に向かった。

特別なイベントの為の特別なクエストなんだと考えると、大聖堂に向かう道中、ちょっと緊張した。ゲームなのにな、と思いながらもワクワクと高揚もしていた。

現地に到着して、セレモニーのお手伝いをしてくれるNPC(ノンプレイヤーキャラクター : ゲーム内の登場人物)に話し掛けて、進行手順を確認した。やっぱり一番自由度の高いプランで申し込もうかな?などと考えていたら、後ろで別のNPCに話し掛けていた相棒さんが、

『エタバンできないかも』

『えっ!?』

続く。

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