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映画感想:『プロメア』をもう一度見て魂まで燃やし尽くしてこい。

お、アマゾンプライムに『プロメア』来てるじゃないの。

天元突破グレンラガン』『キルラキル』の監督今石洋之さんと脚本の中島かずきさん、そしてそのスタッフトリガーの作品だ。熱血の名作を創る最高のクリエイターたちだ。

いやぁ去年映画館で見たが良い映画だった。時間の都合上ゴジラKOMとプロメアの1日連続同時視聴なんてやったが情報量が多すぎて頭がパンクしていたんだった。シアタールームから出てすぐにUターンするように受付にチケットを切ってもらうなんて経験は初めてだった。これほど早くアマゾンプライム入りするのは予想外だが僥倖だ、ぜひもう一度見直して……

見て……

ん…………?

………………!?


ホワアアアアアアア!?


何が起きた、ワッツハップン!?!?
スクリーンで見てるわけでもない、ゴージャスなシアタールームで見てるわけでもない、PCでプレゼントにもらった26インチモニタでイヤフォンを耳につけながら見てる程度だ。特段何か工夫はしていない。
それなのに面白い。
美しすぎる! 
燃え盛る幾何学の炎と世界を彩る彩色! 熱血の物語を際立たせる作画と線と粋な動き! 
どういうことだ、一度見たはずの作品がまるで違って見える! 記憶通りのストーリーなのにキャラクターの心情が表情が、バーニッシュのあり方がまるで何もかもが輝いて見える! 
なぜ! ストーリーが知ってるからなおさらに面白くなるのか!?

はっ、そうか!
1日で超大作を同時に二作連続視聴なんてしたものだから、脳みそが情報過多でショートして、後半に見たプロメアのほうをまったく冷静に物語を受け止めきれずにいたんだ。
まだ許容範囲内だと思っていたが、実は限界を迎えていたのか! だからまるで初見のような発見と感動を覚えてしまう!

いやはや、新しい発見ばかりだ……徒然なるままに書いてみよう。なおちょっと筆を走らせたら文字数がとんでもないことになりそうなのでセーブモードで行くのであしからず。
ちなみに「去年見た時との印象との違い」を書いてるので、ネタバレは豊富に含まれる。
まだ見てない人はあっちむいてホイでアマゾンプライムでプロメア見てこよう。大いに推薦できる最高の名作だったので。


これ去年書いた記事ね。連作になってるので読んでスキしてサポートしてくれると私はうれしい。


1:テンポの速さと抑え方がすごい。

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『地球全土で突如現れた人類の変異体が、大規模な火災を引き起こす。恐怖した人類は変異体に対する過度の弾圧と粛清を強行し、変異体はこれに抵抗。地球全土が極彩色の炎に包まれる悲劇が起きてしまう。
炎を操る変異種は、バーニッシュと名付けられた』

オリジナル作品を書くにあたって世界観説明とは非常に重要だ。やらなすぎたらお話がわからないし、やりすぎたらくどくて邪魔になる。
今作『プロメア』では実にスマート。
霞がかったようなモノトーンの映像で平穏の中でストレスを抱える人々が移り、どこかから来た蛍光色の「力」によって発火能力を発動させてしまう。閉鎖された電車、渋滞の橋、妊娠した赤ん坊。色々なところで世界各地の悲劇が始まる様は容赦なく物語に引きずり込む。
そして現在に至ると、そこに広がるのは澄み切った青空と白亜のビル街が立ち並ぶ復興の街だ。

それがもう清々しいのってなんのって。

そして間髪入れずに始まるのはバーニングレスキューへと届く通報と出動シーン。足を止まらせずに騒動へと繋がってストーリーへと繋がっていく。ここらへんは王道だし2時間で作品を描くには必須なアクションだ。
そこから最初の大捕物であったり衝突であったり、再びの遭遇からの疑念であったり陰謀であったり。ガロ・ティモスが直情まっすぐ熱血馬鹿なおかげでストーリーがサクサクと進む。そこの抑え方がプロだった。

型破りでありあがら型を守る。型を熟知してるから型を壊して戦えるのだ。たまらんね。

2:バーニッシュへの感情移入の仕方が違う。

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再度見直した時に衝撃を受けたのが、特にこの要素だ。

バーニッシュとは、プロメアとは。そういった真実を予め知っているせいで彼らへの感情移入の程度が猛烈に膨れ上がった。
突然変異種であり、人間であり、燃やし続けなければ生きていけないし、命が尽きれば肉体は灰へと還る。
そして燃やしていない時は本当に穏やかな人々であるのだ。未知のエネルギーで繋がれた新人類とも解釈できるだろうに、逆に彼らは捕獲され排斥され隔離され、利用される側となっている。

以前JOKERの記事でも「善悪は主観でしかない」と書いたが、人類側とバーニッシュ側の双方の見解を知った上で物語を見ると「こりゃあ人類側もといアイツやりすぎだわな……」と思うことも多々あったり。しかしバーニッシュに対するかの非道でも、彼にとっては絶対なる正義であるのだからもう頭を抱えるしかない。

あとSSは控えているので本編で各人が確認してほしいシーンがある。
リオが火山で激昂して「覚醒」するカット、白黒暗転している彼の目元をよく見てもらいたい。
一瞬だけ丸い粒が涙のように目の周りに湧き上がってるカットがあるんだ。なかなかに印象的だった。

怒りだけじゃなかったんだな……って。

3:クレイ・フォーサイトは/変わらない?

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堺雅人が怪演を演じたことで一躍超人気キャラとなったクレイ・フォーサイトだ。
彼に対する考察は過去の記事にも書いたので、暇があったら読んでスキをつけてサポートして以下略。

恐ろしいことに彼に対するほとんど変わらなかった……と思っていた。

実のところ「記憶違い」や「解釈違い」が多かったな……と再認識した。

いやね? クレイがガロを助けたシーンとか、恐ろしく認識違いしてたな……と。
てっきり「暴発したバーニッシュフレアでガロのアパートを燃やしてしまい、周囲の目があったためにクレイは否応がなしにガロを救出した」と思っていたんだ。

だけど蓋を開けてみればどうだ?
幼少期のガロは自力でアパートから脱出して、たまたま入り口にいたクレイが受け止めたのが、周囲の目からまるで救出劇のように演出されて見えていただけ」だったじゃないか!!

上述の記事で「合理性のために自分の犯した火災から逃げずに利用した」と書いたけれど真っ赤な嘘だったわ。

逃げようがなかっただけだったんだ!!
ただの成り行きでしかなかったんだ!!

ここを再認識というか認識の更新された時には「うっそぉー!?」と言ってしまったものだった。心底ビビった。
だって、私の中のクレイにとっての唯一の成果であったはずの「ガロの救出」ですら、ガロが自分で脱出しただけだったという!

彼の英雄性なぞ欠片の微塵にも残ってないじゃないか!

4:クレイ・フォーサイトの邪悪が深まっていく。

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ただし作中で出てきた「滅殺開墾ビーム」で宇宙船内部のビルを土に変えてしまった時、ビルの中の人を心配するガロに対して「地下シェルターに避難させてある、当然だろう!」と堂々と言い切るクレイのシーンがある。

戦闘の合間の絶妙な息抜き的表現であったのかもしれないが、彼を英雄性皆無の邪悪と見るとなかなかにちぐはぐに見えるとこ。

まぁこれに対する答えが、本来のクレイの計画が「ワープを可能とするプロメテックエンジンを使えば、プロメアに接続された地球が確実に崩壊することを知り得ながら、地球全土の人間を捨てて1万人の選民を生き残らせる」ことにある。

自分が支配者となるための礎たる1万人を守り切ることは、英雄性の裏付けじゃなくて支配者という善悪関係なしの合理性でしかなかったんだろうなって……

惑星冷却&対プロメア用蝶急速冷却兵器である「絶対零度宇宙熱死砲」を使った時にもガロに「それを地球の火消しに使えよ!」と突っ込まれたが、その反論が「この機体(惑星改造用巨大兵器クレイザーX)では地殻の熱に耐えられないから」であったが……問題は、その程度なのか? と。

クレイの根底の願いは「自分の命を賭して人類を守る」ではなく「人類とバーニッシュを犠牲にしてでも自分が支配者として生き残る」であるから、ガロやリオのようにやせ我慢や命がけができないから、たったそれだけのことで限界に突き当たってしまったんだろうと思う。

リオは命がけでバーニッシュたちを守護し救済しようとしたし、ガロはすべての人々を救うために火消しとやせ我慢を貫いて試練に立ち向かい続けた。

クレイ・フォーサイトには主人公となるべき要素は一切無かった。何もかもが借り物や略奪したものであり、だから壁に突き当たってもなお「最善を尽くした」を言い訳にして他者を犠牲にする。

それは、倒されるべき悪以外の何者でもないのかもしれない……
悲しいが、クレイを擁護できる要素は粉微塵に砕かれてしまった。これが再視聴で得たものだ。

ただ塞翁が馬の如く、クレイがリオをプロメテックエンジンのコアに繋いだから、リオがプロメアの意思を理解できて解決策を見いだせたのもあるか。

だけどそこには意味はない。デウス博士のいったような「偶然の産物」でしかなかった。それを彼の功罪の一つに選べはしないだろう……


一旦ここまでにしよう。書いても書いても終わらない。
また会おう。

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