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初雪の降る大阪の街に、いつまでも君の残像をみるのだろう

昼寝から目がさめると体が冷え切っていて、吐き気と焦燥感が体をおそう
また時間を無駄にしてしまった

「この子宮がまだ使い物になるうちに」

勢いでマッチングアプリに登録しそうになって、やめる
無数の顔写真を見ることに疲れ、嫌になって退会して、まだ1ヶ月経っていないことを思い出した

鏡に映る顔が青ざめている

お米を炊いて、作り置きしておいたそぼろをのせて食べる
なおさら気持ち悪くなって、白湯を流し込む
体調が悪くなると食欲がなくなるという現象を忘れていた
今日スーパーに行くのはやめておこう





好きだった人のことを思い出す

知り合ったのは画面の中で
自然すぎて覚えていないほど、自然に好きになった
とにかく好きで好きで好きだった

悲しみやつらさをそのまま一気に文章にぶつけて書き上げて
その温度を感じる生き物みたいな文章の向こうで、泣いている彼が見えるようだった
傷つきやすくて優しい人だからなのか、悪いことなんかちっともしてないのに、人から受けた傷を真面目に受け止めて、自分が悪いって真剣に考えて、ボロボロになっているようにみえた

私はおせっかいでずうずうしいから
何もしないままでは気がすまなくて、いてもたってもいられなくて
どうにか、この人の近くに居られないかなって思うようになって
私にも似たような傷があるから、私たちきっと話せるよって、伝えたくてしかたなかった




一人で悲しんで苦しんでつらかった
今までの傷と同じぶんだけ全身を舐めてあげるって
約束して

思いは熱く膨れ燃え上がり、暴走にも似たほとばしる感情のまま
でもすっごく真剣に彼を好きで、近くに居たいって、それしかなくて

熱い皮膚に触れた
彼の大きな手も唇も、私に触れた
感性の似ている人とのセックスはつながりあえてる感動がすごくて
なんて気持ち良いのだろう
彼の腕の中にいると私の穴が塞がっていくみたい
幸福そのものだった
ずっと続いたらいいのにって、思ってたんだよ




その日、大阪に初雪が降った
あざやかな青いダウンジャケット
言葉を慎重に手探りしながら、自信のなさそうに話す、小さな声

最後の日
私の住んでいるところでは降らない、頼りなく小さな雪の粒が雨のように降るのを、手を繋いで一緒に見ていた




恋人になれたかもしれなかった

離れたのは、自信がなかったから

もっと私のこと知ったらきっと離れていってしまうって

求めてくれたのに

もっと長い話が続くはずだったのに

差し伸べてくれた手を振り払ったのは、私の方だった



今になって、また出会えたらなんて
きっとすっかり思いなんて変わってしまって
私のこと忘れてしまっているだろうな

もう会うことすらとてもむずかしいのに
また好きになってもらうことなんて奇跡みたいにとてもむずかしいね




あの瞬間にしか私たちは存在することができない

あの人が私の体の中にいるうちに書かなければ
この美しい気持ちが消えてしまう前に
まだ残像を愛でていたい

記憶の中で、会いたくなったら何度も何度も再会して
あのきれいな記憶の中に閉じ込もって
お互いを求める熱い思いの中にずぶ濡れにぐしゃぐしゃに溺れて
記憶の中に二人でいたい
嵐をおこすように彼の感性は、私を引き込んだ




わたしを愛してくれたのと同じように、今、誰かを愛しているのかな

君の優しさに包まれた生活はきっと、とても幸せだろうね
君も、君の愛する人も、幸せだろうね

愛された記憶は今も私に体温をくれる

初雪のふる大阪の街に、いつまでも君の残像をみるのだろう




36.7度 
いつもより高いけど、熱なんてないみたい
家にばっかりいるのに、一体どうやって体調崩したんだろう

子宮が使い物になるうちに決めなければならない

諦めること、探すこと、手放すこと、これから生きていく道のこと

ああ人生はもうすっかり重いものになってしまったな

大阪に行って、奈良にも行って、桜でも見ながら考えたいよ

いないなんてわかってるのに、街の中であの子の残像、また探してしまうだろうな。

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