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広告業界の正論 ~「非クリエイターのためのクリエイティブ課題解決術」

どんな本?

電通を独立し、マーケティングコンサルティング企業のdofを立ち上げた齊藤太郎さんの著書。
ハイボールブームの火付け役であり、配車アプリGOやポケトークなどのコミュニケーションを成功に導いた斎藤さんのスタンスと仕事術が学べる。

どんな人に向いている?

マーケティングに関わる人、特に広告代理店の若手は必読だと思う。
理由は2つ。
①若手としてどうすればマーケティングにおいて価値を発揮できるのか
インプットの仕方からアウトプットの出し方までシンプルかつ簡潔にまとまっている。
②本来、マーケティングとその手段でもある広告がどうあるべきか、
「正論」がズバッと書かれており、色んな事情論にまみれてしまう前に読んでもらいたい。
つまり、本書1冊で若手マーケターとしての振る舞いとスタンスが学べる。

学びはなに?

①マーケターとして成果を出すために近道はない、という正論
齊藤さんはさらりと書いているが、良いアウトプットを生むために日ごろ心掛けていることがすごい。
具体的に「あの人」といえるくらいペルソナを想像しきる
そのために、本質とトレンドの両方を追求する。
具体的には、常に街を観察、コンテンツをこれでもかと摂取、
常に新しい人と会って情報収集、
考えたことは常にアウトプットする。そのために、メモを欠かさず
打ち合わせでは率先してホワイトボードの前で図示し続ける…
もう一つ重要なのが、ビジネスの構造を理解すること
具体的には、クリエイター・マーケターが財務諸表を
理解できるようになるべきだと言っている。
「それが難しいんだよな…」ということばかりなのだが、
真似できないことは一つもない。

②マーケターはどうあるべきか、という正論
dofのパーパスは、文化と価値を作ること。
もう少し解きほぐすと、
未来に残る仕事をするということであり、
ただ得意先を接待する仕事ではなく
本当の意味で結果を生める仕事しかやらないということ。
具体的には、
得意先と対等になれない競合プレゼンには参加しない
スコープが広告に絞られた業務は受けない
といったスタンスを取っている。
このスタンスの是非はあるし、全ての企業がマネできるわけではないと思うが、
背後にある「広告は本来的に嫌われ者であるからこそ、
接する人に価値をもたらさなければならない」という姿勢には共感する。
ただ、広告主の言われたことをこなすだけの業者に成り下がったり、
上司の言われた通りマーケティング会社に発注する担当者になっていては、
お互いに凋落していくだけだし、なによりつまらないだろう。

おまけ)どう思った?

広く使える考え方が書かれてはいるが、やはりこの本の
ど真ん中のターゲットは齊藤さんのいる広告業界だと思う。
広告市場は年々拡大しているものの、
広告代理店ビジネスは斜陽産業だと言われている。
個人的には、自由な社会と資本主義がある限り
広告というビジネスは存在し続けると思う。
ただし、マスメディアの衰退に従って
従来型のメディアの仲介で儲けるだけの代理店は縮小していく。

あらゆるものが、圧倒的にコモディティ化していく中で
違いを生み出し、売上という結果を残せるマーケターの価値は
どんどん上がっていくだろう。
個人としてはそういう指名されるマーケターになれるかどうか、
企業としては、そういった人材をどれだけ育て、囲い込めるかが
重要になってくるはずだ。
そういった世の中の道しるべになるような本だと思う。


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