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eスポーツチームはどのようにコンテンツマーケティングを活用できるか?

GW前から『ゴールデンカムイ』が110話まで無料で公開されていて、毎夜読み耽っていたら生活リズムが狂ってしまい、さらには続きが気になりすぎて110話以降が掲載されている単行本を買い揃えてしまった。

誰にでも覚えのある経験だが、ここには明らかに仕掛けがある。集英社と野田サトルはまったくの善意で『ゴールデンカムイ』を無料公開したわけではなかった。商品の一部を呼び水に使い、気に入ったら商品を購入させようと企んでいたのだ。

この仕掛けは一般にコンテンツマーケティングと呼ばれている。無料のコンテンツを提供することで商品を知ってもらい、好意や愛着を抱いてもらい、商品を購入してもらう手法だ。全人類、「無料」ほど胸の躍る言葉はほかにない。

コンテンツマーケティングは活用できる分野が非常に広く、eスポーツ業界も例外ではない。今回はビジネス(お金を稼ぐこと)を営むeスポーツチームやプロゲーマーを中心に、必ずしもビジネスとしての活動をしてはいないストリーマーなどの個人も対象にして、コンテンツマーケティングという言葉を初めて聞くような人のためにその考え方と使い方を解説する。

eスポーツチームがコンテンツマーケティングを適切に使いこなせるようになれば、まず間違いなく売上に貢献できる。個人にしても、考え方を取り入れることで自分自身や作品(動画や生放送など)をどのように宣伝・告知すれば効果的にチャンネル登録者やフォロワーを増やせるかが掴めるだろう。

「無料」の裏にある(べき)もの

まずはコンテンツマーケティングがどういうものかを簡単に説明していく。

知ってのとおり、このところは特にエンタメ系の商品が無料で提供されSNSが歓喜の渦に包まれていた。在宅を推奨されている状況ゆえの出来事だった。

一方で、エンタメの享受者が無料に慣れてしまうと有料に戻せなくなるという危惧もあった。一度無料が当たり前になると、以前のように有料に戻されてもお金を出そうとする気持ちはなかなか復活しづらい。「こないだまでタダだったのに、なんで?」。

ただ、ほとんどの場合でこれは杞憂に終わると思う。もし企業が心の底からの善意だけで在宅している人を応援したいと考えていたなら、商品のすべてを無料で提供していたはずだ。けれど、たいていはそうではなく、『ゴールデンカムイ』が110話までだったように商品の一部のみを無料で公開していた。

もちろん、大なり小なりの善意があったには違いない。それでもビジネスなのだから、無料という最強のキャッチコピーを利用して売上に繋げたい意図があっただろう。現実に、僕は『ゴールデンカムイ』を購入した。

商品の一部ではなくすべてを無料で提供した企業もあったかもしれない。この場合も、その商品を呼び水として別の商品を購入してもらう狙いがあったはずだ。「無料」の裏では絶対に何かしらの糸が引かれている

コンテンツマーケティングはこのように、ターゲットに商品の一部やサンプル、別の商品、あるいは関連する情報、物品、サービスを無料コンテンツとして継続的に提供することで認知や興味を促し、好意や愛着を抱かせ、購入や継続課金へと誘う施策である。

もう少し抽象化すると、コンテンツマーケティングは無料コンテンツを利用してターゲット(顧客)を次のステージへと遷移させる施策のことだ。コンテンツの制作や配布には相応のコストがかかるが、それを差し引いて成果を得ることが目的となる。

【顧客ステージの変遷】
未認知 → 認知 → 興味・検索 → 理解・参加 → 購入・課金 → リピート・継続 → ファン化

だから、ビジネスなのに目的を設定せずに無料でコンテンツを提供するのは愚策と言える。どれほどコンテンツが閲覧されても、結局売上に貢献しなかったとしたら無意味だ。

この目的は売上だけでなく(KGI:重要業績評価指標)、売上を左右する要素でもいい(KPI:重要目標達成指標)。会員の解約率が重要なら下げるためにコンテンツを使うべきだし、店舗の滞在時間が重要なら長くするためにコンテンツを使うべきだ。

個人で活動している人なら必ずしも売上(収益)が目的ではなく、SNSのフォロワーやYouTubeのチャンネル登録者数を増やしたいと考えているかもしれない。だとすれば、それを目的にすれば問題ない。

コンテンツマーケティングは、無料の言葉の裏でどんな目的を設定しておくかが欠かせない。なんとなくコンテンツを提供していても、そこから目的の実現に誘導できていなかったらどうしようもない。

宣伝文句だけでは商品の魅力が伝わらない

僕はあらゆる商品でコンテンツマーケティングを活用できると思っているが、それは商品の機能や魅力を「役立つ!」「面白い!」といった宣伝文句で伝えるだけではもはや顧客には何も届かないと考えているからだ。

「こういう機能がある」「こういう面白さがある」と説明するのは有効でも、その商品のよさが濃縮されたたった1つのコンテンツを体験してもらうほうがはるかに興味や理解を得られる場合が多い(それでもそのきっかけを作るための言葉=宣伝文句は必要だが)。

最近は特にBtoB(法人向け)の商品でコンテンツマーケティングの必要性が謳われるようになっている。もともとBtoC(個人向け)の商品ではコンテンツマーケティングが(その意識はなくても)当たり前に行なわれていて、効果的であるだけでなく応用が可能だと知られるようになってきたからだろう。

ただ、これはBtoBとBtoCの商品の違いというよりも、課題解決(ソリューション)型と感情充足(エモーション)型の商品の違いだ(この区別はeスポーツチームにおいても大事)。後者では古の時代からコンテンツマーケティングが行なわれてきたが、ここで両者をしっかり理解しておきたい。

ソリューション型の商品は顧客の抱える課題を解決するために作られる。BtoBの商品はほぼすべてがこのソリューション型で、ウェブサイトから問い合わせを増やしたい、データを可視化したいといった課題に対して便利なツールやノウハウを提供する。当たり前だが、BtoCでもこのタイプの商品はたくさんある。

ソリューション型の商品ではお試し利用もコンテンツマーケティングに相当するが、それ以外にも商品に関連する情報がコンテンツとして利用される。例えば、ウェブサイトの制作・運営ノウハウを提供している企業なら、自社が何を提供でき競合と何が違うのかを記載するホワイトペーパーは前提として、来訪者が迷わないウェブサイトの作り方や、問い合わせが増えるフォームの作り方を解説したコンテンツを提供する。それらを通して繰り返し情報に触れた人は、実際に役立つ情報を得られたことで少しずつポジティブな感情を蓄積し、「この企業やサービスなら任せてみてもいいかな」と購入・課金することになる。

他方、エモーション型の商品は顧客に喜怒哀楽を得てもらうために作られる。BtoCの商品の中でもエンタメ系があてはまり、課題解決の機能だけでは差別化できない商品にもあてはまる。こちらはBtoBの商品にはほとんど存在しない。

エモーション型の商品では、商品の一部がコンテンツマーケティングで利用されることが多い。例えば、映画のトレーラーやゲームの体験版、漫画の試し読み、それら作品のレビューやUGCなどが該当する。動画や生放送ならクリップや切り抜き、動画配信サービスならお試し期間がそうだ。「全米が泣いた」「ドキドキが止まらない」などの宣伝文句を重ねるよりも、数秒でも体験してもらうことが商品の魅力を伝えるベターな手段となる。

よって、ソリューション型の商品ではソリューション型のコンテンツ、エモーション型の商品ではエモーション型のコンテンツがふさわしい。

コンテンツマーケティングにおけるコンテンツにどんなものを含めるかは人によるが、僕は商品に関連する情報や物品、サービスのうち無料で提供されているものはすべてだと考えている。そのほうが取りうる施策の幅が広がるだろう。

eスポーツチームは何を売っている?

さて、ここからは実際にeスポーツチームでどのようにコンテンツマーケティングを活用できるかを見ていく。

よくも悪くも、eスポーツ業界では大会の視聴、チームや選手による動画・生放送、イベントや大会の参加など、主要なコンテンツのほとんどが無料で提供されている。この業界はいったい何を売ることで市場を形成しているのか、たまに分からなくなるほどだ。

しかし、一見すると無料の世界に思えて内実ではいろんなところでお金が動いているし、無料だったコンテンツも少しずつ適正な値付けがなされるようになってきている。

ゆえに、eスポーツチームは自分たちの商品・商材(有料で提供するもの)が何なのかをしっかり定義し、自覚しておかなければならない。もし企業とのスポンサーシップが主たる収益源だとしたら、そのときチームは実際には何を売っているのだろうか?

eスポーツチームには法人向けの商品と個人向けの商品があり、それぞれによってコンテンツの切り口や内容は変えなければならない(ここで言う商品とは購入や課金をする対象のこと)。そのうえで商品がソリューション型なのかエモーション型なのかを考慮し、ターゲットが求めているタイプのコンテンツを作る。

以下では4パターンの商品について、それぞれのコンテンツマーケティングの可能性について検討する。いずれも商品を例示しているが、ほかにいくらでも考案できるだろう。

ちなみに、商品の価格の裏づけとなる価値にもソリューション型とエモーション型がある。SNSやメルマガのインプレッション(エンゲージメント)数や動画再生数、生放送の視聴時間、チームと選手のメディア露出回数などはソリューション型の価値であり、ゆえにソリューション型の商品の価格を裏づけるのに適している。企業は自社が抱える課題の解決を求めているので、ソリューション型の商品がふさわしい。

一方で、チームや選手が有するゲームのプレイスキルはエモーション型の価値である(あくまでビジネス視点でだが、大会で優勝すればファンに感動をもたらす)。プレイスキルだけでは企業にスポンサーになってもらえないと言われるが、前述のように企業はソリューションを求めており、エモーション型の価値がそぐわないのは当然だ。

法人向け×ソリューション型の商品

現在の国内シーンでは、チームの主要な収益源として企業とのスポンサーシップやパートナーシップが挙げられる。これは法人向け×ソリューション型の商品だが、より抽象化すると広告枠とクリエイティブだと言えるだろう。

◆広告枠(スポンサーシップ)

チームはメディアとしての機能を持っており、いわゆる媒体資料(ホワイトペーパー)は広告枠を求める企業に対して重要なコンテンツとなる。ホワイトペーパーにはチームが有する上記のデータやユーザー・ファンの属性、これまでの取り組みや実績などを掲載する。

ほとんどがオープンな情報のためチームとして見せたい形でまとめることに意義があるが、公開しているチームはほぼ存在しない。ここの透明性を高めていくことが企業の投資をより盛んにする1つの契機になるのではないかと思う。

また、ホワイトペーパーのような形だけでなく、チームの公式サイトやブログで各種のデータや分析・考察、ファンの属性やアンケート結果などの情報を随時掲載していくのも有効だろう。こちらのほうがコンテンツマーケティングらしさがあり、商品である広告枠の魅力を高める一助となる。

◆クリエイティブ(パートナーシップ)

クリエイティブというと聞き慣れないかもしれないが、企業とのコラボ商品やコラボ企画、あるいはプロモーション用の動画や記事での出演など、チームが企業と一緒に何かを作るケースは多々ある。

その意味で、チームはクリエイティブを担うプロダクション的な機能を有している。所属する選手がストリーマー、クリエイターは日常的に動画を制作したり生放送を行なったりしているだろうし、写真に力を入れているチームもある。

これらは通常、個人向けのコンテンツとして提供されているかもしれない。だが、eスポーツに関心がある人たちに刺さるコンテンツを作れることは、その人たちをターゲットにする(したい)企業にとって大きな魅力になる。そのため、いつも制作しているコンテンツはそのままに、「自分たちのチームではこうしたコンテンツを作れる」と企業に対するセールスの際に活用できるだろう。

クリエイティブに関しては改めてコンテンツマーケティングの考え方を取り入れる必要はないと思うが、関心を持ってくれている企業にコンテンツ力をアピールしないのはもったいないので、ホワイトペーパーなりセールス資料なりに入れておくといいだろう。

個人的には、チームは単にメディアとして機能して広告枠を提供するだけではなく、企業のクリエイティブパートナーを志向しても高い将来性があるのではないかと考えている。スポンサーシップだけだと投資の効果が分かりにくい場合もあるものの、クリエイティブがベースなら効果測定もやりやすい。

法人向け×エモーション型の商品

先ほど、法人向けの商品はほとんどすべてがソリューション型だと書いた。エモーション型の商品が見当たらないのは、企業や社員の感情が満たされただけでは何ともならないからだ。もちろん、社員の福利厚生の面でエモーション型の商品が導入されることはあっても、企業にとってそれは社員により成果を出してもらうためのソリューションにすぎない。

しかし、それゆえにソリューション型の商品にエモーション型の価値を組み合わせた商品はいくつも存在する。食事系やレクリエーション系のサービスがそうだ。ただし、こうした商品でもエモーションの部分だけを訴えても法人には響かない。衝動買いがありえないからだ(ただ、最終的にエモーション型の価値が購入の引き金になることはよくあるし、チームが強いことはこれ以上にない価値だ)。

eスポーツ業界でも同様で、法人向けに純粋なエモーション型の商品は提供できなくても、ソリューション型×エモーション型の商品は提供できる。チームにおけるその1つは、「チームが目指す夢の実現をともにする権利」である。

企業は数字の成果を求める存在だが、中の人たちにはチームや選手を応援したいと考えている人がそれなりにいる。市場規模やチーム規模から広告枠とクリエイティブの魅力が小さくても、応援することや一緒に夢を目指すことの価値を伝える意義は充分にある。その夢(大会での優勝など)が実現すれば、チームは人気を獲得し市場も拡大し、ソリューション型の価値が生み出されるので企業にとって有益である。

そのためにはビジョンを明確にし、発信し、実践していく必要がある。夢の実現に向けてチームが普段どんな活動をし、選手やスタッフが何を考えているのかも伝えなければならない。これこそがコンテンツマーケティングであり、それによって自分たちの夢の価値を高めることがどれほど重要かは言うまでもない。

個人向け×ソリューション型の商品

そもそも個人にとってゲームやeスポーツはエモーション型だが、その中でも探してみるとソリューション型の商品がある。今後もいろいろな商品が開発されていくだろうが、主だったものを検討する。

◆コーチング

さまざまなサービスが立ち上がっているように、ゲームのプレイスキルを教えるコーチングや講習もある。これはゲームで勝つためにプレイスキルを高めたい人に向けた典型的なソリューション型の商品だ。

プレイスキル向上のためのTIPSはいくらでもコンテンツにできる(し、すでにされている)ので、それらを無料で提供してサービスの質を知ってもらうなどステージを遷移させ、1対1での講習や具体的なアドバイスを購入してもらう。無料コンテンツの提供は、エモーションもありながら、自身のコーチングや知識の質を紹介する手段になる。

チームや選手によっては必ずしも有料のコーチングを購入してもらうためにコンテンツを提供しているわけではなく、フォロワー増が目的の場合も多い。しかし、コーチングなどの商品に誘導するコンテンツとして展開するのも悪くないだろう。

◆企業とのコラボ商品

前述したように、企業のクリエイティブパートナーとなることで、ソリューション型の商品を開発・制作することが可能だ。PCメーカーやデバイスメーカーがチームや選手とのコラボ商品を販売するのは、ゲームプレイを快適にするためのソリューションの提供にエモーションの要素をかけ合わせるためだ。

こうした商品の場合、当然エモーションだけでなくソリューションの要素も強調するほうがいい。選手が普段の練習や特別な大会で商品を使用しているシーンを見てもらうことは、まさにコンテンツマーケティングの一環である(PVが制作されることもある)。商品が高価なほど時間をかけて訴求する必要があるので、選手が繰り返し商品を使用してファンに興味を深めてもらうことが欠かせない。

個人向け×エモーション型の商品

最後になったが、この個人向け×エモーション型の商品がチーム、また業界において主要な地位を占めていることは疑いない。ここでは直接課金とグッズ・チケットについて検討する。

◆直接課金の機会

投げ銭やサブスクリプションなど選手自身への直接課金が少しずつ浸透してきたが、こうしたお金はそもそも何に対して支払われているのか。言いかえると、どんなときに直接課金が発生するのか。答えはいろいろがだが、僕は感謝と感動が起きたときだと考えている。

感謝の課金は普段から面白いコンテンツを発信してくれていることへの対価であり、今後も期待していることの表れである。これには継続的な課金形態であるサブスクリプションがあてはまる(有料コミュニティへの参加も含む)。

感動の課金は爆発的に気持ちを高めてくれたことへの対価であり、チームが大会で好成績を残したときや、選手が生放送でスーパープレイを成し遂げたときに課金が行なわれる。熱はすぐに冷めるので、その場限りの課金形態である投げ銭(ご祝儀)が適している。

ファンは、基本的には何度も感動に触れることで感謝に至る。だとすると、感動の提供は感謝の課金のためのコンテンツマーケティングだと言えるだろう。

では、いかに感動のコンテンツを作るか。1つは前述したように、大会で好成績を残すことだ。チームや選手はしばしば経験するように、何かを達成したときに投げ銭の数が増す。

また、自分で目標を設定し、努力している姿を見せ、達成することも重要だ。YouTubeで大量のスーパーチャットが飛び交うのは、たいていは配信者が何か大きな目標を達成したときだ(大会で優勝したときの祝賀配信、ゲームをクリアしたとき、バトルロイヤルのゲームで「100キルするまで寝れません」を達成したときなど)。

人は他人の挑戦や努力を楽しみたいし、他人に仮託して達成感を味わいたい(そのために応援する)。選手やストリーマーは視聴者の代わりに挑戦や努力をする。その素養や手段を持つという意味では、視聴者に達成感を味わってもらうためのソリューションを提供しているとも言えるだろう。

大会で常勝するほどのプレイスキルを持たなくても人気の高いチームが存在するのは、大会という目標よりもむしろ自分たちで目標設定と目標達成を実現できているからだ。もちろん、大会で優勝することの価値はほかに代えがたいと言い添えておく。

◆グッズ、チケット

上記を参照すれば、グッズやチケットが直接課金の代替物であることが分かる。チームのグッズを購入するのは感謝の対価であるし、大会のチケットを購入するのは感動の対価の前払いである(期待は返すべき負債だ)。

ただし、それぞれが持つ独自の魅力を訴求することで購入が促されることは多々ありうる。

グッズはパーカーやシャツなどアパレルの場合が多いが、所有・着用することで自分がチームを応援していることを強く自覚でき一体感を味わえる。だから、チームとしてはグッズを購入することが応援になることを訴求する。そのためには選手が所有・着用している姿を見せたほうがよく、それがコンテンツマーケティングとして機能する。

チケットは大会運営側が販売するもので、チームが関与することは現状少ない。ただし、過去には『CoD』の公式大会で出場チームにチケット枠が供与された例がある。

今後この取り組みはeスポーツシーンの拡大に伴って一般化していくのではと思うが、その際にチケット販売を有効活用できるよう、チームは自分たちに期待してくれるファンを獲得しておかなければならない(チームが販売数のノルマを負うべきかは議論すべきだが、チケットの購入はチームへの期待の表れなので利益の還元とともに販売ノルマを負ってもいいかもしれない)。

チケット販売に関しては、特別にこのためにコンテンツマーケティングを行なうというよりも、出場するチームが普段から動画や生放送などでチームへの期待を高めておくほかにない。だから、販売告知は別として、チケット販売のために何か施策(割引など)をしているようでは遅すぎるだろう。

チケット販売で具体的なコンテンツマーケティングを行なうとしたら大会運営側であり、ここでは言及しない。一例として、Twitterで「「コール オブ デューティ」eスポーツ公式」のアカウントがトップチームの紹介をするようになったのは、間違いなく大会の価値を高めるためだ。これもコンテンツマーケティングである。

商品特性を見極めてコンテンツマーケティングに取り組む

以上、eスポーツチームがどのようにコンテンツマーケティングを活用できるかを検討してきた。少し見方を変えれば、選手個人やストリーマーでも応用できるはず。

いちおう内容を振り返っておこう。前提として、商品とその価格の裏づけとなる価値にはソリューション型とエモーション型がある。

ソリューション型の商品は課題を解決するために利用され、ソリューション型の価値が価格の裏づけとなる。ソリューション型の価値とは、SNSのインプレッション数や動画の再生数のことだ。

エモーション型の商品は感情を充足させるために利用され、エモーション型の価値が価格の裏づけとなる。eスポーツチームの場合、エモーション型の価値とはファンに感動をもたらす源泉となるゲームのプレイスキルのことを指す。

ソリューションを求めている相手にエモーション型の価値にもとづく商品や訴求はそぐわない。また同様に、エモーションを求めている相手にソリューション型の価値にもとづく商品や訴求はそぐわない。このことを理解できていると、コンテンツマーケティングで外しにくくなる。

コンテンツマーケティングは無料でコンテンツを提供し、目的を実現するための施策だ。その目的が曖昧では単に無料でコンテンツをばらまくだけになってしまうので、まずチームとして目的=何を売っているのかを定義しておく。

また、各コンテンツを制作するときにはターゲットをどのステージからどのステージへとステップアップさせるためなのかを考慮しなければならない。顧客ステージは基本的に下記のようになっている。

未認知 → 認知 → 興味・検索 → 理解・参加 → 購入・課金 → リピート・継続 → ファン化

未認知から認知に至らせるコンテンツと、理解・参加から購入・課金に至らせるコンテンツは同じであるはずがない。場合によってはチームではなくファンがコンテンツを作ってくれることもあり(UGC)、必ずしもすべて自分たちだけでコンテンツを作るのが正解ではないことは意識しておきたい。

それと、無料のコンテンツがちゃんと役割を果たしてくれているかは常に検証しなければならない。改善しながら、より効果のあるコンテンツを作ろう。

いろいろ書いてきたが、何のために無料のコンテンツを作るのか、これさえ理解できていれば大丈夫だ。

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