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空前のesportsバブル! ここからリアルバトルロイヤルが始まる

毎日esports関連のニュースやプレスリリースが絶えない。あっちを見ればリーグや大会が発表され、こっちを見れば芸能事務所がチームを乱立。かと思えばesports実業団なるものが立ち上げられ、誰もが知る大企業がesportsに参入を表明している。

ウェブメディアは当然のこと、テレビ局やラジオ局だけでなく新聞社までもがesportsを連呼する。ああ、世はまさに空前のesportsバブルである!

そんな中で、いったい誰がうまい汁を吸えるのか。今回はesportsバブルによって発生したリアルバトルロイヤルを生き残るにはどうしたらいいのか考えていく。

※esportsバブルで一山当てたい人のためのオカルト記事。よく考えたら「これからesportsシーンに参入したい企業に知ってほしいこと」とほぼ同じ内容なので合わせて読んでもらいたい。

この儲からない世界の片隅で

いま日本列島を覆っている猛暑と比例するかのように加熱するesports業界。しかしご存知のように、2017年の日本のesports市場規模は5億円未満。悲しいかな、儲けようにも儲からない、何の旨味もない市場であった。ただそこにはパッションがあったのみである。

にもかかわらず、JeSUの設立とオリンピック種目化の話題をきっかけに多くの企業がesportsなるものに注目。この数か月間、何らかの形でesportsへの参入を表明する企業があとを絶たない。

とはいえ、まだまだ儲かるような段階ではない。たしかに昨年までと比べればいろんなところでお金が動いていると言える。ただ、それらは投資のお金だ。直近で参入表明した企業はもちろん、これまでesports業界で奮闘してきた企業においても、現状で不動産を転がすほど儲かっているわけではない。

2017年以前も投資フェーズであり、例えばサイバーエージェント系列のCyberZは7600万円の赤字、ビットキャッシュ資本のeスポーツコネクトは1億3400万円の赤字を計上している。両社ともかなり手広くesports事業に乗り出しており、業界内での存在感は大きいにもかかわらず。

であれば、ほかの関連企業がいかほど儲かっているかは察してしかるべきである。もちろんesports展開しているゲーム会社やそこから発注を受けるプロダクション/エージェンシーはそれなりに売上を作れている……と思われるが。

いずれにせよ、ゲーム会社を中心とした生態系を除くesports市場においては「儲からない」というのが定説であった。実際、お金不足による人材不足や長時間労働によって疲弊しきっている人もいる。

アテンション、プリーズ!

では、いま囁かれているesportsバブルとはいったい何なのか? たしかにお金は流れ込んできている。しかし、そのお金をもってバブルと呼ぶにはバブルに失礼だ。いまはお金ではなく、むしろアテンションのバブルなのである。

つまり、海外(あるいは日本)での盛り上がりを耳にした人たちによって、将来性や可能性を有望視されているということ。そして、噂が噂を呼んで実態以上に盛り上がっているように聞こえてしまっている。

そのため、ちょっと噛んでおけばいずれ恩恵を受けられるかもしれない、と考えた企業が参入してくる。それ自体はいいことだ、うん。誰にとっても悪くない。

しかしながら、アテンションをマネーに変える戦略を構築しなければ、新規参入企業の思惑は無残にも散り果て、あとには何も残らない。どういう形での参入であれ、いまの狂気じみたアテンションをうまく活用してもらいたい。

バブル弾けてプレイヤーあり

esportsが注目されているという理由で番組を放送するだけ、チームを作るだけ、スポンサードするだけ、大会やイベントを開催するだけ、だとしたら成果は得られない。esportsバブルに影響を受けてとりあえず参入した企業の大半は、まあ来年にはフェードアウトしているだろう。

なぜなのか? 市場の基盤となってお金をもたらしてくれるプレイヤーは、「esports」に興味がないからだ。彼らは個別のタイトルにしか興味がない(「esports」で盛り上がっているのはプレイヤー以外の外野で、プレイヤーは外野が叫ぶ「esports」に異常に冷ややかだ)。もちろん、自分がプレイしているタイトルで大会が開催され、プロゲーマーになるチャンスが広がるのは嬉しいし、esportsを通してゲームに新たな価値を作り、広めたいと高い志を持っているプレイヤーもいる。

しかし、esportsシーンがなくなっても、彼らはゲームをプレイし続けるだろう。だって、単にそのゲームが好きなだけだから。

彼らがもっと楽しくプレイし、もっと充実したゲームライフを送るためのサポートをすることには意義がある。そして、その延長線上にこそファンやコミュニティといった売上に影響を与えてくれるものが立ち現れてくる。なので、どんな形で参入するとしても、プレイヤーファーストの視点が欠かせない。

そしてesportsなるものを通して自社のファンやコミュニティを作っていく。そうなればいろんな可能性が広がっていくだろう。プレイヤーがいなくなったらesportsビジネスなど成り立たないのだから、そうしたやり方以外に「esports」で儲ける方法などない。esportsは打ち出の小槌ではないし、esportsと謳えばお金が降ってくるわけでもない(自然消滅したモブキャストのプロチームとは何だったのか?)。

ゴールドマンサックスの報告書によると、esports市場は今後順調に成長していき、大会放映権のようなメディアビジネスも伸びていくそうだが、その中心でお金を使うのはプレイヤーであり、ファンであり、コミュニティだ。さて、彼らを味方にしないでどうするのか?

「esportsで何かやろう」は失敗の源

少し前のAIブーム、あるいはいまのVTuberブームにおいても、盛り上がっている物事を利用して何かやろうとするとだいたい失敗する。esportsでも同じだ。これまで幾度となく無数の企業が「とりあえず何かやろう」で失敗してきた。

会社で上のほうから「esportsで何かやれ」と言われて困っている担当者が多いと聞く。僕としては、世間で盛り上がっている物事に目がくらんで目的も考えずそれを利用したがる経営層のいる会社なんてすぐに転職したほうがいいと思うが、まあそうもいかないだろう。

辛くもesports担当に任命された人は、ぜひesportsを通して自社にどんな価値をもたらせるのかをきちんと調査してほしい。事業上の目的もなくとりあえずプロチームを作ったり、とりあえず大会に協賛したりするのは無駄だ。esportsは手段でしかない。

リアルバトルロイヤルを勝ち残るには

先ほど書いたように、今年参入した企業の大半は来年にはフェードアウトする。このリアルバトルロイヤルを勝ち残るには、esportsなるものが非常に空虚な意味しか持たず、そこに実態など何もないことを知っておく必要がある。

『PUBG』なのか、『LoL』なのか、『Shadowverse』なのか、それとも『スマブラ』なのか。何でもいいが、esportsタイトルと呼ばれる個別のゲームを知ること。そこにどんなプレイヤーがいて、どんなコミュニティがあるのかを知ること。そしてどうやって彼らを自社のファンにしていくかを考えること。ただそれだけがesportsバブルを勝ち残る道筋である。

いや、ほかにもあった。ゲーム会社の生態系に入っていくことだ。大会や番組の制作、代理店的な立ち回りをすれば、そこでも勝ち残ることができるだろう。

もしいまのようなゲーム会社を中心とした生態系ではない、フランチャイズの生態系が立ち上がってくるならまた別の勝ち筋が見えてくるが、日本ではまだ遠い話のように思われる。

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