俺はポルランタムを庭の隅で育てている。庭の隅には、マポという名前の猫にめちゃくちゃに壊されてしまった王国(の模型なのだろうか?)があり、ポルランタムの居場所にはもってこいの「思い出」であった。


ポルランタムは12番目の午後、ハクリスの扉を開いた。中には列車に乗ったマボル・スターツが療養していた。どの窓を見ても、みなうつむいて走行中であった。ここには机はあるが、椅子がない。みな立って仕事をするのだろうか? 23人目のマボル・スターツが顔を上げて私を見た。私は扉を閉めた。


ここでは、ひとつひとつの国が工場製である。明日の位置する“ねぐら”に収まった鴨、羊、それともクジラだろうか? そんなものが夜中によく家の屋根に落ちてきて、私の眠りを醒ますのだが、その度に私は窓をあけ、そのポルランタムの落ちてきた方向を見上げるのだった。どの星の輝きも、間違った地図しか持たない私(*地上では間違った地図しか描かれない)には無意味であった。


列車は扉の向こうでゴトゴトと音を立て、私をどことなく不安にさせる。列車は岩や樹木にぶつかりながら、数えきれないほどの風景や物語を通過しているのだろう。私がもしあれに乗っていたらどうだったろう? 私もまた、間違った地図に描かれる小さな物語なのだろう。私には「旅」という概念がなかったのだ。でもいまは違う。これは発見だろう? いまの私は「旅」について考えることができる。それが、これまでの私とは違うところだ。私はいま、それをどこで手に入れるか考えている。なにしろ、それは目に見えるものでも手で掴めるものでもない。しかし「旅」には色があって、それは白である。恐らく、白い洋服か、白い国家であろう。


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