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つねに最安値を求めていると損する理由

スーパーの惣菜や日用品、衣類、電化製品、趣味用品...何にしても、できることなら「最安値」で買いたいものだ。それに、最安値という値段よりも、「最安値で買えたという購買体験自体が、気持ちよかったりするのではないだろうか?

しかし今回、何を隠そう、「つねに最安値を求めている私」が、「最安値を求めなかったことで」、良いことが巡ってきたので、シェアしたい。

車がなければ生活ができない

私は今、パートナーのマイコーさんとともに、北海道のニセコ でお試し移住をしている。
そして、田舎生活において、欠かすことのできないライフラインとなるのが「車」である。

私たちは東京で生活をしていたので、車を持っていなかった。

東京にいるうちから車の手配を進めておかないと、現地入りした時に大変になるのは目に見えているので、直ちに車を手配しなければならなかった。

ニセコ には中古車を取り扱っているところがあまりなく、「札幌で中古車を買うか、ニセコ で個人売買をする」などの選択肢が一般的だということを、不動産会社の担当Tさんから聞いた。

▼不動産会社Tさんについてはこちら

ニセコ 入りから3日間分は、レンタカーを手配したが、レンタカーは高いのでずっと借りているわけにはいかない。

Eさんとの出会い

本当に運の良いことに、とあるFacebookページにて、「車を売りたい」という投稿を見つけた。

売り手は、アメリカ出身・ニセコ 在住のEさん。
彼が売りたいという車は、走行距離14万km超えの6人乗りの黒色のワゴン車だ。値段は29万円。走ってきた距離の貫禄は感じさせない、きれいな外見をしている。おまけに、スキーやスノボを挟むことのできるルーフラックがついている。
車の紹介ページには、車のシートを倒して、その上にマットレスを引き、シーツをかけてキャンピングカーのように使っている写真も載せており、「この車、楽しそう!」というのが第一印象であった。

さっそく問い合わせてみると、すでに、かなりの数の問い合わせがあったようだった。

わたしたちは「ニセコ に移り住むのが決まっていて車が今すぐに必要なこと、車を気に入れば、Eさんの言い値で買う意思がある」旨を伝えると、「数ある問い合わせのの中で、私たちが一番コミットしてくれている」ということで、私たちが東京からニセコ にやってくるまで車をキープしておいてくれた。

後日、ニセコ 3日目のレンタカー最終日に、Eさんのアパートに向かい、Eさんと一緒に試し乗りをして、結果、そのまま購入にいたった。

車の相場がわからない

私たちは車を買ったことがないので、基準にするものさしがない。それに、購入の際に必要な手続きなどもわからない。
移住を2週間以内に決めた当初、入念に調べている時間もなかったので、圧倒的に情報不足の中での取り引きであった。

今回、Eさんの車の言い値は29万円だ。
この金額を、どう思われるだろうか?

実際に、試し乗りをしてみると、車は雪道でもパワフルに走り、快適そのもの。「これで29万円は安いなあ」といったのが、なんの知識もない私たちの印象だった。

...では、そのまま買ってしまえば良いではないか?

うごめく、黒い感情

私は、根っからの貧乏性で、昔、がっつり営業の仕事をやっていたこともあり、「値切る」「値切られる」ということを当たり前にやってきた人間だ。

それに、冒頭でも記したように「最安値で買えたという購買体験自体が気持ち良かったりするものだ。なんだかすごく根性悪そうに思われるかもしれないし、嫌われるかもしれない。自分でもこんな自分に嫌気が差すのだが、これが私の本当の姿なのだからしょうがない。

値切れなくてもいいから、まずは交渉してみることに損はない。

でも、こちらの希望をプッシュしたりしすぎると、バランスを崩して結局取り引きすら行えないこともある。そうなったら、お互いに機会損失だ。お互い後味の悪い思いをしてしまうし、切ない。そして、お互いの時間を無駄にしてしまう。

そうは、したくない。

値切らないという選択をしてみた

Eさんは、「もしこの車を私たちに譲ることができれば、そのお金を元手に、友人から中古車を譲ってもらい、アップグレードしたい」とのことだった。

それに「もし誰からも買ってもらえなくても、この車を気に入っているから、乗り続ける」といった様子であった。なんだか、そんな思い入れのある車を譲ってもらうことに、逆にありがたい気持ちになった。

上記で記した、「黒い感情」は和らいでしまった。
Eさんが「良い人」そうに見えたからというのもあるだろう。

こちとら、車がないと生活できないし、他の車探しにかける時間が惜しかったので、値切りは一切しないことにした。なにより、この車がすでに良いと思っている。Eさんとは気持ちの良い取引がしたい。

即決だ。「時は金なり」の精神である。

嬉しそうなEさんをみて、わざわざ、ややこしくしないで良かった、と思えた瞬間であった。

もしかして、もしかすればだが、Eさんにはすこし値引きをする余地があったかも知れない。でも、それをせずに、お互いに時間も労力もセーブできて、ハッピーだったのではないかという気づきだ。

Eさんもハッピー、私たちも必要なときに・必要以上の素敵な車が手に入ってハッピー、でWIN・WINである。

購入後すぐに、私たちはレンタカーを返却し、Eさんから譲り受けた車で帰宅した。

人生はじめて買う車は、なんだか感慨深い。

WIN・WINがつむぎだす、ハッピーサイクル

2週間ほど経った頃、私の不手際により、車のバッテリーが上がってしまったことがあった。

すると、Eさんが夜22時と遅くにもかかわらず、しかも大雪で視界が悪い中、我が家まで駆けつけてくれた。——友人から購入した新しい車に乗って。——そして、そのEさんの新しい車から、以前Eさんが愛用していた、私たちの車にバッテリーをつないでくれた

私はこの光景を見て、なにか、あたたかいものを感じずにはいられなかった。

私たちが購入したお金で、Eさんは新しい車を譲ってもらった。Eさんの友人もまた、Eさんに車を譲ったことでハッピーなはずだ。そして、私たちが困ったときに、Eさんはバッテリーをつなぎにきてくれた。

時間を買うか、時間を使って値切るか

価格交渉には、価格が下げられるかもしれないというメリットがある一方で、しばしば時間や労力などが消費されるというデメリットがある。
今回は、時間を買った(=値引きをせず、時間をセーブした)結果、お金・時間・労力、そしてそれ以上のものが我々に返ってきた。

今回の事例から学べる要点はざっくりいって3つだろうか。

問い合わせ時点で、Eさんの言い値で買いたい意思があると言ったことで、Eさんが車をキープしておいてくれた。
試乗後、不毛な価格交渉をしない選択をし、スムーズな取引ができたことで、Eさんと良い関係が気づけた。
良い関係を築けたからこそ、私たちが困っている時に、大雪の中でも駆けつけてくれた。

ふだん「最安値を求めている私」が、今回は「時間がなかったこと」や「Eさんの人柄」から、「最安値を求めない」ということを、"意思をもって選択"することで、たったひとつの購買体験ではあるが、実にいろいろなことを学ぶことができた。

この車に出会えて、私たちの生活はすごく豊かになった。人生ではじめて購入する車が、こんなにも心温まるストーリーを乗せてくるとは思わなかった。

そのあとの、書類手続きはめんどくささの極みであったのだが、それはまた次回にして。

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本日のイラスト「つながる」Connected

P.S. 売り手のEさんに興味がある方はこちらからどうぞ。幸せオーラの漂う、すごく素敵な方だ。

Nashy(なっしー)

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