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【ハリー・ポッターと死の秘宝】遂に完結!見ごたえ抜群のホグワーツの戦い

引き続きハリー・ポッターシリーズについて語らせてほしい!の記事です。とうとう完結巻「ハリー・ポッターと死の秘宝」まで来ました。シリーズ物の最終巻を読む時って、早く続きを読みたい気持ちと、もう終わってしまうのか…という気持ちが戦いがちな梨の木です。特にファンタジーは読み終わった後のロスが大きいんですよね…。

「ハリー・ポッターと謎のプリンス」の感想文は⇩

ここからは「賢者の石」から「死の秘宝」までの小説と映画、「呪いの子」の脚本、「ファンタスティックビースト」シリーズの映画に関するネタバレがあります。未読、未視聴の人はご注意ください!


ヴォルデモートが支配する世界、迫る

気に入らないやつにはアバダケダブラを乱用し恐怖で世界を支配しそうなヴォルデモートですが、「ハリー・ポッターと死の秘宝」では想像以上に狡猾に綿密に魔法界を手中に収めていきます。

魔法省を少しずつ陥落し、日刊予言者新聞に圧力をかけ、ホグワーツやグリンゴッツを配下に収めていくヴォルデモート。しかも、自分は一切姿を現さずにすべて死喰い人デス・イーターにやらせているところが不気味です。ヴォルデモートがアズカバンを手中に収めてからは、どんなに死喰い人デス・イーターを捕まえてもあっさり脱獄されてしまうという状態に。もはや監獄がザルです。

純血の魔法使いだけの世界を作ろうとしているヴォルデモートですが、自分の父親がマグルなことは都合よく忘れているんでしょうか。母親がスリザリンの末裔であれば、自分の中に流れるもう半分の血は気にならないのでしょうか。

分霊箱を探す旅

ハリーは17歳の誕生日を迎えると、分霊箱を探す旅に出かけます。ここで初めてホグワーツでは傷を治す魔法を習っていないことに気づくハリー。たしかに医療魔法は教えて欲しいですよね。高度すぎて学生には無理な領域なんでしょうか。簡単なものだけでも知っているのと知らないのとでは違うだろうにと思いました。

そして、大人の視点で見ると、ハリーとロンとハーマイオニーが貴重な学生の最後の1年間を学校で過ごすことができないというのはとてももったいないと感じてしまいました。特に魔法界ではホグワーツで何を学んだかが就職に直結してくるので、途中退学は痛いだろうなと思います。

とはいえ、ヴォルデモートの支配下に置かれ、死喰い人デス・イーターが入り込んでいるホグワーツでまともな教育が受けられるかと言われると微妙なので(ハリーとハーマイオニーは命を狙われていたし)、繰り越しで卒業とかさせてもらえたらいいのにと思いました。留年とかあるんですかね、ホグワーツ。

「ハリー・ポッターと謎のプリンス」でスネイプがクラッブとゴイルに「今度こそO・W・Lふくろう試験に合格するためには~」みたいなことを言っていたので、試験自体の受け直しはできるっぽい?どっちにしろ試験でいい点を取るよりヴォルデモートを倒したという功績の方が実績として評価されるのは間違いないでしょうけど。

どんな目に遭っても友達のハリーを助けるというハーマイオニーの覚悟にも泣けました。両親から自分の記憶を消し、オーストラリアへ移住させたハーマイオニー。それが自分と両親の安全のためとはいえ背水の陣すぎます。それをすべて自分で決断して実行してしまう意思の強さと勇気はさすがグリフィンドール生だと思いました。

そしてロンも魔法省と死喰い人デス・イーターを騙すために屋根裏お化けを自分に変身させます。この屋根裏お化け、想像以上に大きくてあまりにも人の姿をしているので、初めて見た時はこれが屋根裏に住んでいるなんて本気?と思いました。気になる人は「幻の動物とその生息地」で見ることができるのでよかったら見てみてください。この本にはラブグッド家にあったエルンペントの角についても記載があります。⇩

そしてここで登場する分霊箱のいくつかは、すでにハリーが見たことがあるものばかりだったというのがまた憎いというか、なんという伏線回収!という感じです。今すぐ「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」に戻ってスリザリンのロケットを回収したいし、「ハリー・ポッターと謎のプリンス」に戻って必要の部屋でレイブンクローの髪飾りをポケットにねじ込みたくなります。

ダンブルドアの遺した遺産

物語の冒頭で、ダンブルドアがハリーたちに遺産を残していたことが明らかになります。

ハリーには初めて出たクィディッチの試合でハリーが取ったスニッチ。この中には「死の秘宝」のひとつである蘇りの石が入っていました。

ロンには灯消しライター。この灯消しライターというアイテムは「ハリー・ポッターと賢者の石」の冒頭で初登場し、要所要所で何度も出てきたアイテムです。まさか灯をつけたり消したりする以外にも役割があったとは。しかもこれダンブルドアの発明品らしいです。

ハーマイオニーには「吟遊詩人ビートルの物語」。分霊箱探しに必要なアイテムでありながら、「死の秘宝」にまつわる情報源でもありました。この「吟遊詩人ビートルの物語」はリアルでも出版されています⇩

「死の秘宝」について

ハリーが「ハリー・ポッターと賢者の石」からずっと使っている透明マントが実は「死の秘宝」の一部だったという衝撃は忘れられません。作中で透明マントというアイテムはハリーが持っている物以外にもちょこちょこ登場します。透明になれるマントというものは魔法でも作ることができるらしいんですが、その効果が一生続くのは「死の秘宝」の透明マントだけということみたいですね。

しかも本物の透明マントは魔法によって効果を無効化することもできません。強いです。

実際、「ファンタスティックビーストと魔法使いの旅」に出てきたデミガイズという透明になれる生き物の毛は透明マントを作る時に使われると「幻の動物とその生息地」に書いていました。

グリンゴッツの守りは本当に鉄壁?

鉄壁の守りを誇るグリンゴッツにどう侵入するかということでゴブリンの手をかりることにしたハリーたち。

そもそもこのグリンゴッツが本当に鉄壁の守りなのかという点についてはちょっと疑問があります。盗人に対するセキュリティはとても厳しいグリンゴッツですが、ゴブリンのOKが出れば他人の金庫にも入れちゃうんですよ。

実際、ウィーズリー家の人たちはハリーの金庫に出入りして代わりにお金を出し入れしていましたし、シリウスもファイアボルトの代金をグリンゴッツから勝手に取っていてくれという形で支払いをしていました。

合法的に入られると盗まれ放題なのでは…?と思わなくもありません。

次々に死んでいく登場人物たち

ヴォルデモートとの戦いも佳境に入り、主要キャラもどんどん犠牲になっていきます。マッド‐アイ・ムーディ、トンクスの父、ヘドウィグ、ドビー、ワームテール、コリン・クリービー…。

冒頭のハリー救出作戦のシーンでは「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」で、家族の半分が騎士団メンバーであることに心配と恐怖を募らせていたモリーのことを思い出してしまいました。今やジニー以外の全員が騎士団のメンバーです。しかも、最も危険な任務に家族のほとんどが駆り出されていきました。それでもハリーを守るために歯を食いしばって待つことを決意したモリーはすごいです。ハリーのことを実の息子だと思っているというのは口だけではなかったんだなと思わされました。

なんとかウィーズリー家の子ども達は無事でいてくれと思っていたのに、フレッドだけはホグワーツの戦いで戦死してしまいます。それを知った上で読むビルの結婚式のシーンは沁みました。「おれの結婚するときは~」と語っているフレッドが忘れられません。

コリン・クリービーの死もつらいです。「ハリー・ポッターと秘密の部屋」でハリーの後輩として登場し、ずっとハリーに憧れてハリーの背中を追い続けてきた少年。こんなに早く亡くなることなんてなかったのに…。

セブルス・スネイプの偉業

ダンブルドアが死んだことでスネイプが背負う責任とプレッシャーはこれまでにないものになってしまいました。不死鳥の騎士団には完全に裏切り者だと思われている状況で、ヴォルデモートに怪しまれないようにハリーを守らなくてはいけないなんて無謀にもほどがあります。

実際、ハリー救出作戦で死喰い人デス・イーターと共にハリーを追う側にいたスネイプは、ルーピンを守ろうとして放ったセクタムセンプラの呪いでジョージの耳を吹き飛ばしてしまいます。ジョージには悪いけどこれくらいは許してあげて欲しい…。わざとじゃないんだ…。精一杯やった結果なんだ…。

そして、ヴォルデモートの手はホグワーツにも伸びてきます。死喰い人デス・イーターを教師として送り込まれ、彼らからもヴォルデモートからも生徒たちを守らなくてはいけなくなったスネイプ。難易度高すぎるでしょう。そりゃもう校長になるしかないですよね。同僚には目の敵にされ、それを甘んじて受け入れなくてはいけないスネイプのストレスを考えたら苦しくなります。でも本当のことは誰にも言えない!言っちゃうとすべてが終わるから!

さらにグリフィンドールの剣をこっそり偽物と交換してベラトリックスに預けつつ、本物はハリーの手に渡るように渡さないといけません。でも自分の姿は見られないように。やることが…やることが多すぎます…!過労死しちゃう…!

校長室に入るための合言葉を「ダンブルドア」にしているところも粋ですよね。ダンブルドアはいつもお菓子の名前にしていたので合言葉自体は校長が自由に決められるはず。この合言葉にスネイプの決意が込められているようで泣けます。

そして最後にヴォルデモートに殺されるところでは、ずっと一人称が我輩だったスネイプが「僕を…見て…くれ…」って言うんですよ。ここでやっとスネイプは本当の自分を知ってもらえるんですよ。ヴォルデモートがアバダケダブラを使わなくて本当によかった。スネイプが息を引き取る前にハリーが間に合って本当によかった。もしヴォルデモートがアバダケダブラでスネイプを即死させていたら、もしスネイプが息を引き取るまでにハリーが間に合わなければ、スネイプは誤解されたまま死んでいった可能性も全然あるんだと思うとゾッとします。そして最後に「我輩」ではなく「僕」という言葉を使った翻訳家の松岡佑子さんのワードセンスは最高です。

スネイプがたった一度だけリリーに言った「穢れた血」という言葉を一生後悔していたことも印象深いです。それからスネイプは二度と「穢れた血」という言葉を使いませんでした。そう言われてみると、ハーマイオニーをいじめていた時もマグル生まれだからといういじめ方はしていなかったかも…?改めてスネイプのセリフに注目して読み返したくなりますね。

シリウスの死後、シリウスの生家に忍び込んだスネイプはリリーがシリウスにあてた手紙を見つけ、その末尾の「愛を込めて リリー」という署名の部分だけを切り取って持ち去ります。初恋をこじらせすぎているスネイプは、リリーが大嫌いなシリウスにあてた愛の言葉にまですがっちゃうのです。

でもスネイプの気持ちもわからなくはないですよね。先に好きになったのは僕なのに!何でよりにもよって最も嫌いな男に横から取られなければいけないんだ!って感じですよね。ちょっと愛が暗くて重すぎるけど。

ホグワーツの戦い

そしてとうとう最終決戦です。ダンブルドア軍団の仲間たちが続々と集まってくるところにはテンションが上がりました。そしてパーシーもついに家族と和解です!よかった!

先生たちが長年積み上げてきた魔法を駆使して戦うところもかっこよくて好きです。それぞれが各教科においては専門家なので、いざというときはその辺の魔法使いとは比べ物にならないくらい強いんですよ。映画ではマクゴナガル先生が城中の鎧を一気に動かすという特大スケールの魔法を使った後で「これ1回使ってみたかったんですよね」とお茶目に笑うところがかわいかったです。

そして、ハグリッドが大切に育ててきた生き物たちが戦いに加わってくれるのも心強いです。ハグリッドの弟のグロウプもがんばります。屋敷しもべ妖精たちもキッチン道具を使って戦います。肉切り包丁で足をザクザク切られるのは魔法でやられるより痛そうでした。

モリー対ベラトリックスの戦いも見ごたえがありました。家事魔法が得意なモリーの戦闘シーンは作中にはほとんどないのですが、戦うとめちゃくちゃ強かったです。しかも散々ベラトリックスの強さが強調されてきた後だったので、その迫力はさらに増します。やはり母は強い。子を守る母は強いのです。

勇者ネビル・ロングボトム

ホグワーツの戦いでの功労賞といったらやはりネビルでしょう!そしてハリーにはよくあそこでネビルに「蛇を殺せ」と伝えたよね!と言いたい。

ネビルに関しては「1番成長したキャラ」なんて言われることもありますが、私は最初から英雄になれるポテンシャルが十分にあった子だと思っています。ただ、おばあちゃんの育て方がちょっと悪かった。おばあちゃんがネビルの自尊心を根こそぎ奪い取っていってるんですよ。常に親と比べられ、ハリーと比べられ、お前はダメだと言われ続けたら委縮して何もできなくなるにきまってます。

実際、ネビルの薬草学の成績はずば抜けて優秀でしたし、笑われたりいじめられたりすることのないダンブルドア軍団での授業ではめきめきと実力を発揮していました。自信さえつけばなんでもできる子なんです、ネビルは。将来はホグワーツで薬草学の先生をしているのもネビルらしいです。

ちょっと考え方が偏っていて身内にも他人にもめちゃくちゃ怖いと有名なネビルのおばあちゃんですが、ホグワーツの戦いでは孫に加勢するために最前線まで駆け付けました。熟練の魔法使いもあっさり返り討ちにしていましたし、老いてもなおめちゃくちゃ強いところはかっこよくて好きです。たぶんマクゴナガル先生と同世代だったはず。そう考えるとマクゴナガル先生もバリバリ第一線で戦えるかっこいいおばあちゃんですよね。

そして、物語の後半で大活躍するネビルがもう1人の予言の子の候補だったというのもまた熱いです。予言を回避しようとすればするほどヴォルデモートは予言通りの行動を取ることになってしまうという皮肉…。恐ろしいですね、予言って。

母の愛に救われたハリーは再び母の愛に救われる

最初にヴォルデモートに殺されそうになった時、リリーの愛の力で生き延びたハリーですが、2回目はナルシッサの息子への愛に救われます。

一刻も早くドラコを探しに行きたいナルシッサは、ヴォルデモートに対してハリーの生死を偽ります。ナルシッサはハリーを救おうなんて全く思っていなくて、自分の息子の事しか考えていなかったのですが、ここがハリーの運命の分かれ目でした。そしてそんな母の愛が理解できなかったヴォルデモートはナルシッサの言葉を疑うことなく勝利を確信してしまいました。そう、これは母の愛に始まり母の愛で終わる物語なんです。

ホグワーツの戦いが終わった後、しれっと大宴会に混じっているマルフォイ一家には笑いました。映画では逃げる様子が描かれていましたが、実際はホグワーツの中でドラコを探し回ったナルシッサとルシウスはそのままホグワーツにとどまるんです。そして帰るタイミングを失ったまま宴会の隅っこで肩身が狭そうにしてるんです。最後まで小物なマルフォイたち。一周回って愛おしいです。

ヴォルデモートがなぜハリーを殺せなかったのか、ハリーがどうやってヴォルデモートを殺したのかについては、語り出すと長くなるので(ここまでも十分長くなっているので)、ぜひ実際に小説を読んでみてください。

映画はかなりギュギュっとストーリーを縮めている上に謎のオリジナルシーンを追加したりしているので、小説とはちょっとニュアンスが違うんですよ。特に「ハリー・ポッターと謎のプリンス」以降はその傾向が強くなっているので、ぜひオリジナルを!本物を!見てくれ!という気持ちです。

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「ハリー・ポッター」シリーズの小説はサイズ違い、デザイン違いで複数出版されています⇩

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