向かってくる人
いつも、不思議に思っていたけれど、今日もやっぱり、不思議に思う。
外を歩いていたら、こんな人を見た。
どこを見ているかはわからないけれど、とりあえずしっかりと前を向きながら、表情の固い、ずんずんとした足取りで歩く、人。
その人は、向こう側から人が来ているのにまったく意に介さず、気づいてでもいないように、我関せずといった様子でまったく避けようもしない。
ほんの、少したりとも。
それには正直、びっくりとした。
むしろ、向こう側からくる人に向かっているのではないか、というくらいにも思えた。しっかり前を見ているのに。
そんな人を見るたびに、いつも思う。
なんでだろう。
私には、不思議でならなかった。
ぶつかることをよしとしているのか、避けない、ということに美学があるのか。力を誇示しているのか、なんなのか。私にはわからないし、それをよいものとも思えない。
その心内を探るのも嫌になるほど。
わからない。
けれど、私が見たのは、それだけではなかった。
ちょうど、その向こう側から来ていた人。
その人は、まっすぐしっかり前を向きながら、かのぶつかりそうになった人も紙一重で避けていたし、他のどんな人、小さな子どもでも、年配の方でも、若者でも、同じように自らが避け、ときには待ち、流れよくスムーズに歩いていた。
それはそれは、流れよく、見えた。
私はしばらく後ろからその様子を見ながら、こんなことを感じた。
きっとこの人は、どんな人相手にも態度を変えないであろう、と。どんな人相手にも、自らが行動する中で、流れを作っているであろう、と。
翻って、かのぶつかりにいく人は、どうだろう。
どんな人相手にも、同じようにいくのだろうか。
私はそんなことを考えながら、その人を見送り、私も臆せず前を向いて、しっかりと歩いてみた。
いつも、ありがとうございます。 何か少しでも、感じるものがありましたら幸いです。