【童話】『ぼくはおうじさま』
ぼくは、おうじさまだ。
このくにで、おうさまのつぎにえらいんだ!
でも、おうさまは、いつもぼくにこういう。
『おうじよ、くにのみんなに、やさしくするんだぞ』って
でも、どうすればいいか、わからないんだ。
だって、くにのひとたちは、みんな、ぼくをみたら、
『おうじさま、おうじさま』って、ぺこぺこあたまをさげるから..
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きょう、ぼくははじめて、じぶんのくにをでて、 おうさまといっしょに、となりのくにの、おうさまのおしろにでかけたんだ。
おしろにつくと、いつもどおり、まわりのひとたちが、 ぼくに、ぺこぺこあたまをさげて『おうじさま、おうじさま』といってきた。
しらないひとがいっぱいで、ぼくは、なんだかいやになってしまって、
ひとりで、かってに、おしろをぬけだした。
そして、ちかくのまちをたんけんしたんだ。
じぶんのすんでるまちとちがい、しらないまちをあるくのは、とてもたのしい!
はじめてあうひとたちを、かんさつしながら
ぼくは、むちゅうで、あるきまわった。
あるきすぎて、おなかがすいたぼくは、とおりにある、くだものやのおとこにいった。
『おい、おまえ、りんごとばななをくれ』
すると、おとこはとつぜん、おこりだした!
『ふざけるな!このがき!とっととうせろ!』
ぼくは、うまれてはじめて、どなられたので、びっくりして、こわくて、かなしくなって、こえをあげて、なきだしてしまった。
ぼくは、なみだがとまらなくなって、おおごえで、なきつづけた。
すると、そこに、ぼくとおなじくらいのとしの、おんなのこが、とおりかかった。
おんなのこは、ぼくにいった。
『きみ、どうしたの?』
ぼくがおとこをゆびさすと、おんなのこは、おとこにむかってこういったんだ。
『おじさん!こどもをなかせたらだめじゃないの!
おとなは、こどもをまもるものなのよ!』
すると、おとこは、すこし、こまったようすでこたえた。
『い、いや、このがきが...わかったよ、わるかったな。』
そして、『ほら、もってけ。』
と、ぼくとおんなのこに、りんごとばななをくれた。
おんなのこは、おとこに、『ありがとう』といって、
ぼくにも、『ひとにやさしくしてもらったら、ありがとうっていうんだよ。』
といった。
ぼくは、ちょっとこわかったけど、おとこにいったんだ。
『ありがとう』
すると、おとこは、『ああ』といって、みせのなかにはいっていった。
おんなのこは、えがおで、ぼくにきいた。
『きみ、だいじょうぶ?』
ぼくは、『だいじょうぶ、ありがとう!』とこたえた。
そのとき、うしろから、おうさまのこえがきこえた。
『おい、おうじ、ここにいたのか!しんぱいしたんだぞ。』
ぼくは、おんなのこにいわれたとおり、おうさまにいったんだ。
『さがしてくれてありがとう!』
そしたら、おおさまは、うれしそうなかおをして、ぼくのあたまをさわりながら、こういった。
『よし、おうじよ、しろへもどろう』
ぼくは、おんなのこに『さようなら』と、てをふってあいさつした。
すると、おんなのこも、てをふって『さようなら』といってくれた。
おとこにどなられて、こわかったけど、おんなのこと、なかよしになれて、ぼくは、とてもうれしかった!
ぼくは、おうさまといっしょに、おしろにもどった。
【おわり】
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