【あくま童話】『アクマの小学校』
「こんな学校あったらいいな」コンテスト投稿作品
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ここはアクマの小学校だ。
今日もチビッ子たちが、りっぱなアクマになるために勉強しているよ!
1年生のクラスをのぞいてみよう!
朝、担任のコグレ先生がクラスのみんなに、ごあいさつしました。
「みんな、おはようございます!」
みんなも元気に、ごあいさつします。
「コグレ先生、おはようございます!」
それを聞いたコグレ先生は、うれしそうに言いました。
「みんな、早くりっぱなアクマになれるように、いっしょうけんめいお勉強しましょう!」
みんなは答えます。
「はーい!」「はーい!」
コグレ先生は笑顔で言います。
「じゃあ、今日はアクマの『おどし文句』をお勉強しますから、先生の言ったことを、みんなもくりかえしてください!」
「はーい!!」「はーい!」
「よーし!じゃあいくよ!
《おまえも、ろう人形にしてやる!》はい」
【【《おまえも、ろう人形にしてやる!》】】
生徒たちの元気な声が教室にひびきました!
でも、ここでコグレ先生は何かに気づいたようです。
生徒のタカス君がうつむいたまま、だまっています。
コグレ先生はタカス君に聞きました。
「タカス君?どうしたの?おなかいたいの?」
タカス君は顔をあげて答えました。
「ノー、ノー。ちがいます!
コグレ先生、ボク、ホントはアクマなんかに、なりたくないんです」
タカス君の言葉に、教室中がざわめきます。
コグレ先生は、ビックリした様子でたずねました。
「え?!...タカス君、それはいったい、どういう事だい?」
タカス君は答えました。
「ボクはアクマなんかより、人を助けるスーパーヒーローになりたいんです!」
「え?....ス、スーパーヒーロー?.....」
コグレ先生は、こまってしまいました。
どうしよう...
こんなに、はんこう的な生徒は初めてだよ..
おそろしい....
なんと、おそろしいことだ...
コグレ先生は、おそるおそる、タカス君に聞きました。
「あ、あの...タカス君?どうして、アクマよりスーパーヒーローがいいのかなぁ?」
タカス君はイスから立ち上がって元気に言いました!
「それは、ヒーローの方がカッコいいからです!」
その答えに、また教室中がざわめきます。
コグレ先生は、一度、しんこきゅうをしてタカス君にゆっくりと話しかけました。
「タ、タカス君...ヒーローってさ...キミが思ってるほどカッコいいもんじゃないんだよ..」
タカス君は口をとがらせて言い返しました。
「え?ノー、ノー!そんな事ないよぉ!アクマなんかより、全然カッコいいじゃないかよぉ!」
コグレ先生は、タカス君のいきおいに、たじろぎながら答えました。
「....タ、タカス君...そ、そうだね...
た、確かにヒーローやってる人たちは表面上はカッコよく見えるかも知れないよね...」
タカス君は満足そうにうなずきます。
だまって見ていた他の生徒たちも、『ボクもヒーローの方がいい』と言いだしました。
コグレ先生は考えました..
い、いかん...
大人が小学生に言いまかされたら人生、いや、アクマ生、終わりだ..
ここはなんとか、ふんばらないと...
考えろ..考えろ...
そして、コグレ先生は知恵をしぼって、こう言いました。
「で、でも、タカス君?スーパーヒーローたちもアクマがいなくなったら、どうなるだろうか?」
「えっ?...」
コグレ先生の起死回生の言葉にタカス君は考え込みました。
「オー、ノー...えっとぉ....それはぁ....そのぉ....」
困っている様子のタカス君を見たコグレ先生は、ここぞとばかりにマニー・パッキャオばりのラッシュでタカス君にせめこみました!
「タカス君!結局のところさ、ヤツラは我々がいないと輝けないんだよ!アイツらは我々がいないと単なるイケメンの嫌なヤツラなんだよ!したがってヒーローやってる連中は、我々をもっとリスペクトするべきなんだ!違うかな?!そうだろう?!どう思う?!」
教室が、静まりかえりました..
コグレ先生の魂の言葉を聞いたタカス君は、机につっぷして泣き出しました。
コグレ先生は、しばらくタカス君を見ていました。
そして優しく声を掛けました。
「タカス君...どうだろう?
やっぱり、ヒーローがいいかな?」
タカス君は涙をふきながら答えました。
「ノー!ノー!」
コグレ先生は優しくうなずき、確かめる様にたずねました。
「じゃあ、タカス君!キミはりっぱなアクマになるよね?」
タカス君は元気に答えました!
「イエス!!」
タカス君の答えにクラスのみんなが立ち上がってスタンディングオベーションを始めました!
めでたしめでたし!
【おしまい】
サポートされたいなぁ..