見出し画像

中三長男の決断。

「もう、野球は、やらない。」

彼は、言った。

***

十月。

通っていた塾をやめ、受験勉強をやめた中三の長男。「野球部に特待で行くためにセレクションや体験会に行ってアピールしよう」親子で、そう話して、軌道修正してのぞむことになった。受験勉強はやめても、勉強自体を嫌いにならないようにと、私は彼と、小学生用の簡単なドリルを日課とする約束をし、彼はそれを毎日するようになった。


十一月。

参加を予定していた高校野球部のセレクションや体験会は、ことごとく中止となり。機会は失われた。「時期的にも野球特待での入学は、もう見込めない」と中学校の担任は言った。

家に帰ってくると、ソファーに横になり、スマホかゲーム。ドリルは、すっかりやらなくなった。

三者面談があり、先生から「野球にも力を入れていて、家から近い高校」を薦められた。さらに、単願で、今のランクだと「入学金免除で、毎月の授業料が半額」ということになるらしい。入学試験も面接と作文程度。それを選ぶと、「進学コース」となり、普通科や体育科よりも必須となる講習や模試が増えるようだ。先生は「こういう、しっかりカリキュラムを決められていて、支援してくれる仕組みの方が、彼には合っていて、学力は上がるのではないか」と言った。

たしかにそうかもしれない。


十二月。

また、三者面談があった。「入学金免除で毎月の授業料が半額?いえ、該当しないですね」と先生が言った。言い間違えなのか、聞き間違えなのかわからないが、「うーん、該当しないですね。確認しますが」と言った。

「また考え直しだな」

妻と、そう話した。

息子は、「進学コース」に進む気でいた。勉強したいという理由ではなく、仲の良い同級生がその高校の「進学コース」を志望しているのだという。「進学コース」は1クラスなので同じクラスになれる、ということのようだ。ただ、その学校で野球に打ち込む子は、だいたい「体育コース」に進むようだから、「野球に打ち込むなら、やっぱり体育コースにする?」と、息子に伝えたところ

「もう、野球は、やらない。」

そう答えた。

衝撃だった。一緒に進学コースに行く友達は運動部に入る予定は無いようだ。「もう部活には入らなくていい」そう言って部屋に入っていった。

先生から回答があった。「すみません。"入学金免除で毎月の授業料が半額"は、適用されます。進学コースに行くと、入学金免除で授業料半額になります」

私たち親は、息子に「勉強するなら進学コースでもいい。免除もあるしね。でも、野球に打ち込む姿が見たい。」と伝え、決断するように促した。

野球部を引退したあとの数ヶ月、野球の仲間以外との交流で、そちら側に慣れてしまったのかもしれない。でも、今でも野球は大好きで、休日には私と次男とキャッチボールを楽しむ。聞くと、高校野球での厳しい練習に「覚悟が決まらない」というのが大きいようだ。中学の強豪校や強豪クラブからもその高校には集まってくる。




***

そして、一昨日。

答えが出たという。



「体育コースで、野球がんばる!」


息子とハイタッチをした。妻も喜んでいる。

何が嬉しいか。「自分で考えて決断したこと」、「野球に打ち込む姿が、また見られること」、そして「彼が晴れ晴れとした顔をしていたこと」

腹をくくれたのだと思う。

それが嬉しかった。

昨日から、さっそく自主トレを開始した。私が帰宅したら、彼はおらず。「走りに行っている」とのこと。なかなかスイッチが入らないが、入ると速く、強い。

よし、私もがんばろう。


その続き↓



この記事が参加している募集

#子どもに教えられたこと

32,983件

いつも読んでいただきありがとうございます。