見えないゴールへ向かう道のり。
「なさじさんの次に嬉しいと思いますよ」
昨日、リハビリをしながら、理学療法士さんが私に言った。
昨年11月、頚椎の手術をしたときの後遺症で、私の左腕は力が入らなくなり、自力で曲げることが出来なくなった。主治医は、原因究明と回復を目指して、すぐに再手術を決断した。それでも治らず、また手術。また手術。2週間で全身麻酔の手術を4回。だらんと上がらなくなった左腕は、リハビリによって回復させていく方針になった。
はじめの手術から9ヶ月が経った。
仕事復帰当初は、右手で左手を連れてきて、机上のパソコン前に持ってきていた。歩いていても左腕はダラリと垂れ下がっていた。
今、左手は自分でパソコン前にやってくる。ペットボトルのお茶は左手で飲めるようになり、自力で頭上に上がるようにもなった。まだまだ力は弱いし、可動域はまだ完全ではないが、ぱっと見は違和感が無い状態になった。
昨日、主治医は言った。涙を流しそうな表情で言った。
「ここまで回復して本当に良かった。実は、再手術には周りからの反対も多かったんですよ。完全復活まではもう少しありますが、頑張りましょう。」
9ヶ月前、主治医はこう言っていた。
「今のまま再手術をしないと中途半端な状態になる可能性がある。手術はつらいと思うけど、このままだと後悔することになるから、手術をさせてほしい」
私は70%の回復ではなく100%の回復を目指してくれているんだ、と解釈し、その言葉に勇気をもらい、信じてここまでやってきた。
主治医の安堵の表情に、私も嬉しくなった。
主治医の診察を終え、リハビリの部屋へ。
リハビリの先生に、「周りは反対してたんですってね」と言うと、「そんなこと話したんですね」と驚いた。そして、こう言った。「なさじさんの次に嬉しいと思いますよ。あの先生が」
本当に良かった。
ただ、リハビリをしながら、ふと我にかえった。
なさじの次に嬉しい?私は、この回復を、本当に"一番に"嬉しいと思っているだろうか…
そう思いながら、天井を眺めていた。
つづく。
いつも読んでいただきありがとうございます。