時には解釈をぼやかすことも必要なのかもしれない。
息子の少年野球チームの監督は、高齢で、自ら動いて指導することは無い。ミスしたら罵声を浴びせ、基本褒めない。褒めるのは、ひいきの子だけ。長年権力を持ち続けるとこうなってしまうのなのだろうか。
ただ、そんな監督を崇め奉る父母は少なくない。
それは、そうした方が無難で、そうしないと面倒だということをみんながわかっているからだろう。
私は、崇め奉らない側の人間なので、監督はほとんど寄ってこない。監督が寄っていくのは崇め奉り、ひざまずく父母か、野球経験者のお父さんだけ。
私は「野球のことがわかっていない」っていうレッテルが貼られているようで、親子共々嫌悪感をぶつけられることは多い。(当然、私たちは野球が大好きだし、上達しようと必死だが、彼はそれを認めると自分を否定することになるので一度貼ったレッテルは剥がさないのだろう)
息子は、監督に好かれていない。乱暴で、傲慢な子が好きなようで、生意気な子の方を見ては「あのぐらいじゃなきゃいかん」とかなんとか。
日曜日の朝、私が監督に挨拶に行って、そこから立ち去ろうとすると、呼び止められた。珍しい。年に一度あるかないかだ。
昨日の試合の感想を話し始めた。話しかけられたこと自体には少しワクワクした。
これまで公式戦では顔が歪むほどに緊張して力を発揮できなかった息子が、"昨日の試合"は、ピッチャーを務め、粘り強く、落ち着いて投げることができた。チームが相手ピッチャーを打てず、内外野のエラーが重なって試合には負けたが、格上のチームによく頑張ったと思う。
応援していた親たちは「ピッチャーは頑張ったんだけどねぇ」と言う。コーチも、みんなに、「せっかくピッチャーが頑張ってるんだから、守備で助けてやらないと」と叫んでいた。
振り返った私に監督は言った。
「昨日の試合なぁ…あんなピッチングされたら勝てるもんも勝てないよ。ランナー背負って、あんなワンバンで投げられたら。相手ピッチャーは、あんなの投げたか?投げてないだろ?あんなピッチングされたら勝てないよ」
耳を疑った。
敵対心をあらわにして私に言っている。
攻撃をしているのか?
はじめ、何を言っているのか、わからなかった。
そりゃぁ、おっしゃる通りだ。そりゃキャッチャーが捕れない球を投げるより、キャッチャーが捕れる球を投げた方がいいに決まっている。そんなことはわかっている。息子だって投げたくてワンバンを投げるわけがない。何より、個人攻撃をするのか?家庭の問題なのか?少年野球で、五年生で、ピッチャーになって一年もたっていないのだから、「ミスしてもいい!思い切って投げてこい!」 それ以外の言葉があるだろうか。
まるで「契約違反じゃないか!」ぐらいの感じで迫ってきた監督。
指導者であるあなたには一ミリも責任は無いのだろうか。
話の途中で、完全に気づいた。
完全に相手にしちゃいけない人間だ。
どんな言葉もポジティブに変換してきた私だが、さすがにこれは変換に時間がかかる。
まだ監督はしゃべり続けている。
どうにか、ぼやかさなければ。
なんとかピントを調節すれば、別の言葉が浮かび上がってくるはずだ。
期待が高い証拠
とりあえず、これに変換しとくことにした。
いつも読んでいただきありがとうございます。