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精神保健福祉士を目指すあなたへ⑤~介護業務と相談業務~

昨今、介護の現場の厳しさや、処遇改善が言われております。
私の勤める法人には、介護(この場合は直接処遇=利用者の身体に触れる仕事を指しましょう)の現場が数か所あります。複数ある事業の過半数が介護業務を伴うものなので、私の所属する相談事業(相談員)は少数派。

今回は、同じ法人(会社)であるけれど、自分の担当する業務が違うために収入が変わってくる点から、介護業務と相談業務の違い、相談業務の中でもさらに施策の違いや予算の違いからくる収入面で違いについてまとめてみたいと思います。

私自身は法人の経営や、給与計算や収支計算をする担当者ではないので、具体的な話ではなく、イメージの話になります。
相談員になりたい、とか、福祉の仕事をしたいと思っている方が就職先を探す上で、何かしらのヒントになればと思います。

介護業務と相談業務の仕事の流れ

自分の勤める法人の介護業務の多くは、入所施設での介護になります。利用者の1日の流れ、起床から就寝までに必要な介助をおこないます。食事、排せつ、移動、服薬、日中活動(作業やレク)、通院、入浴などなど。その人の身体の動きがどれだけ制限されているか、その度合いで必要な支援をおこないます。対象者は障害者や高齢者であって、たとえば同じ「歩けない」状態だとしても、それが障害によるものか、加齢によるものか、進行性なのか、症状固定なのかなどなど、その状態に応じて支援が検討されています。
1日の利用者の動きは大抵の場合時間ごとに決まっていて、ルーティンになっているので、必然職員の動きもルーティン化されます。担当が固定されている場合もあれば、諸般の理由で担当が変わることもあります。また、早番、日勤、遅番、宿直など、勤務時間も変則的です。事前に休みたい日(希望休とか言ってます)を伝えておいて、後はシフト作成の担当が他の職員との兼ね合いから無理のないシフトを組んでいるようです(これがとても大変らしい)。
利用者への介護だけでなく、レクリエーションの準備や作業の準備・片付け、納品のノルマが不足していれば職員が補填することもあるようです。他には施設の管理、整備などもおこなっています。利用者の日々の記録ももちろんつけます。保護者と面談することもあるようです。

対して相談業務について。相談業務は毎日同じ利用者に会うということはほとんどありません。大抵の場合は定期的に会う(モニタリングや定期訪問)ことが多いのです。そして新規の相談が月に数件あるでしょうか。基本的に業務の予定は相談員ごとに立てていきます。
担当している利用者のうち、来月に何人会う必要があるかを今月の半ばから月末にかけて整理し、来月分の予定を調整していきます。訪問する先も様々なので、移動の時間も計算しながら、大抵1日に2~3件ほど訪問しますかね。モニタリングでは一度の訪問で数人の利用者に会うこともあるかもしれません。
基本的に相談員は介護のように直接相手に触れる支援をおこないません。利用者やその保護者、通っている先の担当者や関係機関の担当者と話をして、本人の状況把握をおこない、必要な支援を組み立てます。
なので、職員の動きはルーティンではなく、その月・日ごとに変わります。基本的には月~金の日中に勤務されている方が多いです。相談内容によっては土曜祝日に勤務することも。うちの法人の場合、「月に〇日公休を入れる」と「日曜は公休」、「7日連勤はだめ」の3つのルールを提示されているので、たとえばその月に日曜が4日あれば、残りの5日はどこに公休を入れてもいい、ということになります。ただし、土祝は訪問先が休みのことも多いので、平日休みまくると仕事は進まないし、周りとの協調も乱れるので、基本的には月~金勤務で土曜1日出て、どこか平日振替、みたいかことが多いです。
公休の日数は私の法人の場合、どこの所属でも同じです。
相談員も利用者ごとの記録をつけます。他には制度に則って利用者ごとに書類(計画書など)作ったり、報告書を作ったりしています。訪問も面談も何もない日もあるので、その時はこの事務業務をやる、連絡調整をする、制度について調べるなどの研鑽に充てるなどなど、相談員ごとの裁量に任されている部分が多いのです。


介護業務に対する処遇改善手当

数年前から介護業務に対して処遇改善手当が出されることになりました。これは、一定の条件を満たす事業者に対して、行政が通常の報酬に加えて、処遇改善に充てるためのお金を出しているということです(ざっくり)。
職員に対して行政が出しているわけではなく、事業者に渡しているのがミソ。事業者がそのお金を使って、職員の処遇を改善できるというわけ。私の法人の場合は、積極的にこの加算を取りにいっています。そのためにいろいろと書類や内規、就業規則なんかを見直したようです。ここも聞く話によると法人ごとに温度差があるとか。整備が進まず、加算を得られない法人もあるそうな。割を食うのは職員なのですが。
それで、この加算で得たお金をどうするかという話。私の法人の場合は、職員をいくつかの区分に分け、そのルールに沿って分配しているというところ。本来は介護業務担当だけに支給されるものですが、私たち相談員にもわずかにお金をいただいております。これは行政から得たお金ではなく、法人からかき集めた持ち出しです。それをボーナスと一緒に、半期ごとにいただいています(ありがたい)。

法人内の様々な事業で得た収入を法人の財布に集める。その中には行政からの介護職への処遇改善加算も含まれます。そのように特定の対象にしか支給できないお金もあるわけです。本来、私たち相談員はその手当はいただけないわけで。しかし法人の考え方として、「介護職と同じ金額は無理だけど、少しでも職員全体の処遇改善を」と考えていただいているために相談員にもお金が入ってくる。これはありがたい。
さらに言えば、相談業務は委託事業であることが多いので、収入は0の場合も少なくない。委託事業は、例えば「年に100万円あげるからこの仕事をしてね」と依頼されるもの。この中から業務で使う必要経費や職員の人件費などの全てを賄うわけです。不足分は法人の持ち出し(つまり他の事業で得た収入から支出する)。余った分は行政に返還(つまり法人の収入にはならない)。
そんな事業の職員に、他の事業からの収入を処遇改善として出してくれる。これはありがたい(何度目だ)。


介護業務と相談業務の格差


格差、と言っていいのかわかりませんが。やってる仕事が違うのだから、報酬が違うのは当たり前。その通りでございます。本来ないものがもらえているのだからこれはありがたい。こんな法人、ほんとにそうはないのです。
しかし、同じ経験年数でも介護業務をする職員と相談業務をする職員の年収を比較した時、条件によっては100万円近くは違っているのがうちの法人の現実。ほかはどうか知らないが、実際こういう法人は少なくないのではなかろうか。
最近岸田総理がよく「介護・保育の処遇改善を」と言っているけれど、その中に相談員は含まれておりません。どこかで線引きは必要だからね。仕方ないのはわかっている。
なのだけど、法人内で同期とどんどん年収が離れていく現実もございます。じゃあ異動すればいいと言われるでしょうが、希望したら通るものでもないわけで。あまつさえ、入所から相談に放出される人もいるわけで。この現実を受け止められない人もいるのではないかな。
まあ結局は「じゃあもらえるところに行けばいいじゃん」ってなわけですが。時々はっとするものです。10年経てば1000万円違うわけだからね。驚愕愕然。

では岸田さんが「相談員も改善するよ」と言えば万歳かと言うとまた別問題。
「相談員」と言っても、所属する事業の根拠法によって該当・非該当が出るのではなかろうか。例えばうちで言えば総合支援法に基づく相談支援事業所と、雇用促進法に基づく就業・生活支援センターがあります。他にも法務省管轄だったり、児童福祉だったり、市独自のものだったりと、複数の法制度に跨る事業を受託している法人もあるでしょう。
自分の所属が該当するか、はその根拠法によるのだろうなぁ。だいたいナカポツは「福祉施策と違います」で非該当になるから難しそう。
やはり線引きは難しい。すべて公平にはないでしょう。


まとめ

福祉の世界に飛び込もうとしている方へ。介護と相談は結構違うところがあります。
私の場合、人に触れて介護するというのは抵抗があるのが正直なところ。向いていないと感じてしまいます。異動になったらやりますが。上司や経験者からはやれば慣れると言われますが。

いわゆる「やりがい搾取」と言われるようなことがちらほらある業界です(どの業界でも多かれ少なかれだろうけれど)。自分が目指すところは、やりがいだけでなく、こういった給与の体系や、異動の可能性なんかも見ておくといいと思います。
お金はすべてではないけれど、必要なもので、確実にモチベーションに影響してきます。

目の前にいる職員が自分より100万円近く稼いでいる、なのにこの程度か、と正直思うことがあります。その時にどう自分と折り合いをつけるかです。まあこれは処遇改善どうこうだけではないけれど、目に見えてわかっていることだからなおさらね。

自分は今の仕事を好いています。向いていると思うし、スキルを高めていきたい。とてもいい仕事だと感じているのです。
だけど、こういった収入の面で自分と折り合いをつけられなくなった時、どうすればいいのだろうか。それはその時の自分に任せて、まずは先送り。

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