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精神保健福祉士を目指すあなたに④~新卒で相談員になるには~

相談員になりたい!と思っている方はどれだけいらっしゃるでしょうか。

今回は特に「新卒で相談員になるには」というテーマで考えてみようと思います。

こちらで話す「相談員」とは障害者福祉の中の「相談支援専門員」が最も近いものと思っていただけると幸いです。

 

「相談員」というものを私がどう捉えているかは過去の記事を参照してみてください。


また私が相談員として働くに至った経緯も過去に掲載しているのでご参照をば。


 

相談事業をおこなっている事業所への就職

 

あったり前の話ですが、相談事業をおこなっている事業所への就職が必要です。

みなさんはどのように就職活動をされていますか?近年では大抵の場合、ネットから情報を得ているのだと思います。大手の就活サイトで「福祉」、「相談員」、「社会福祉士」などのキーワードで調べると、いくつかヒットするのではないでしょうか。

社会福祉法人、医療法人、NPO法人・・・などなど。さらに高齢者福祉、児童福祉、障害者福祉など、福祉の中でもさらに領域が分かれていきます。今回は相談支援専門員をイメージしているので、障害者福祉を扱っている法人に注目します。

障害者の支援をしている法人で、自分が通える範囲にある法人に目をつけましょう。そして応募内容をよくみてください。その中に、「相談業務」と記載されていれば相談員を雇おうと考えていることがわかると思います。

 

個人的に「相談業務」と書かれている中でさらに詳しく見てもいいかなと思っている点があります。それは、相談事業の内容です。

就活サイトで目星をつけた法人のホームページへ行き、実施事業を確認してみてください。「指定特定相談支援」、いわゆる「計画相談」というものと、「指定一般相談支援」という2つ、もしくはいずれかが記載されているのではないでしょうか。

このうちの「指定一般相談支援」が実施されている法人の方が、個人的にはおすすめです。こちらの事業はより幅広く障害者からの相談に乗る、最初の窓口を言えます。また、個人的な印象ですが、市町村行政との一定の関係性ができている法人(=安定して事業実施している地盤のある法人)が受託していることが多いと感じているからです。

一方の「指定特定相談支援」だけをおこなっているからダメ、というわけではないですが、こちらはいわゆる「計画相談」のみを受けていることが多いのです。ある程度サービス利用の道筋が決まってから繋がってくる場合が多いと思われます。なのでかなり乱暴に言えば、相談員のやることは本人の話を聞いて書式に落とし込み、経過観察をするだけになります。

相談員を志す方の場合、相談に来た方に寄り添って、一緒にいろいろな事業所に見学に行って、振り返って、道筋を決めていくという過程に魅力を見出している場合が多いのではないでしょうか。もちろん計画相談でもそういった業務はおこないますが、「指定一般相談」と比べると、ある程度整った形で渡されてくるので、物足りなく感じることもあるかもしれません。

そして何より、「指定特定相談」のみを受けている事業所で、さらに開所間もない事業所の場合、経験者が少ない可能性もあり、事業所内の業務相談の体制が不足することも想定されます。「指定一般相談」を受けている法人は、手堅いイメージ(私的には)があるので、経験者やそもそも相談員の数も多く、業務相談できる環境である可能性が高いとみています。

 

しかし、新卒後いきなり相談員に、というのはなかなかに狭き門かもしれません。後述しますが、相談支援事業所には有資格者が配置される可能性が高いからです。これは、国家資格の話ばかりではありません。

だけども、そもそも就職先の法人に相談支援事業所がなければ相談員にはなれません。なので、いきなり相談員は無理でも、就職後に異動ができるのか、その可能性があるのかを就活の時に確認しておくとキャリアプランがイメージできるのではないでしょうか。

 

 

新卒相談員を目指すハードル

 

 

新卒から相談支援を、のハードルのひとつが「資格」です。

相談支援事業所(指定特定・指定一般両方または片方を指します)を含む福祉サービス事業所には、「特定の役割を持った人が何人以上必要」のような配置基準が定められています。この基準を満たさない場合、事業継続ができなかったり、支払われる報酬(=法人の収入)が減算(=減ること)されたりすることになります。なので、この基準を満たさないと法人は相談事業をしても損をしてしまうわけです。

この「特定の役割」が相談支援事業所の場合「相談支援専門員」となるわけです。さらにこの「相談支援専門員」を取得するためには一定の実務経験(=実際に障害者を支援した経験年数)と研修の受講が必要になります。

つまり新卒すぐに相談員になるには、本人のスキル不足などの理由だけでなく、配置基準(=法人の収入)に影響するためハードルが高いわけです。すでに配置基準を満たすだけの人員を配置した上で、さらに相談員を増やすのは支出が増えるリスクもあり、法人としては選択しにくいと思われます。

一方で配置基準を満たしているけど、今いる相談員の中から異動させたい人がいる、管理者にしたい人がいる、事業を大きくしたいので相談支援専門員の数を増やしたいと考えている法人で、新卒から相談員を育てたいと考えている法人が0ではないでしょう。しかし、今法人内の別事業で実務経験を積んでいる人に相談支援専門員の研修を受けさせる選択を取る法人が多いと思います。そして別事業でできた穴を新卒で埋めるという。

新卒後すぐに相談員になるのはとてもとても難しい・・・。

 

正直上記の理由だけでなく、スキル的にも難しいと思います。偉そうに、という話ではなく、マジで苦労するのです。最初は担当のケースを持たずに先輩についていき、先輩が事務をしている間はパソコンとにらめっこ。先輩の方針や相談方法、もっと言えば相手への口調とか仕草に疑問を持ってもそれは社会人として飲み込むことになる・・・(専門職として組織の人になるなという過激派もいますが、それはまた別の話だと思います)。

それをまだ右も左もわからない新卒が体験することはとても辛いと思うのです。私がそうでしたもん(といっても人には恵まれ、直属の先輩たちの言動は素晴らしいもので勉強になることばかりでした)。

 

余談ですが、相談員になる上で国家資格(社会福祉士・精神保健福祉士)は必須ではないです。持っていると報酬に加算(=収入増)が付くこともあるけれど。そして実際いずれかを持っている人が多いけれど。なので結局、国家資格は持っておいた方がよいでしょう。

 

 

相談員に向いていると思う人

 

ずばり「ドライだけど親切な人」、「疑問を持てる人」です。ここからは余談です。

相談員に限らず、「福祉=やさしい」みたいな風潮がありますが、別にやさしくなくてもいいと思っています。でも親切ができるといいと思います。そしてある程度ドライに考えられる方が長く続くのではないかなと思います。

相談員はいろいろな相談に乗ります。ですがすべてに応える必要はないと思うのです。自分(=所属事業所)のできる範囲の支援をおこなって、それ以外は「できない」と伝える。そして「できない」で終わらせず、「できる」機関に繋ぐ、「できる」機関がない場合はどうするかを事業所でさらに考え、それでも難しい場合は課題として事業所や地域で考える機会を持つ。安易になんでも屋さんになると、相談員自身の心が死んでしまいます。それは社会資源が減ってしまうことに繋がります。何よりあなたが大変です。やめてください。

親切であることは重要です。相手に合わせて伝え方を変える、選択肢を示す、しっかり話を聞く、時間を取る、資料を作るなどなど。過度である必要はなく、必要最低限でいいと思います。自分の業務量と相談して。ある人にやったことは、同じ状況になったみんなにやる。それができるかを自問自答してください。そしてできれば事業所で共通認識を持ってください。「前の相談員はやってくれた」と言われるのはきついっす。そこから信頼関係が崩れることもあるので、後輩や後進のためにやりすぎないこと。

何より「疑問を持てる」というのは強みです。よく「人に興味のある人」とか言うのと同じでしょうか。

なぜこの人はそう感じるのか、考えるのかをよくよく聞いていくと、希望していることの本質がわかって、本人に提示する選択肢が増えるように思います。そして一方的なインタビューにならず、問題が深掘りされていきます。聞いたらいいってもんでもないですが。なぜ聞くのか、今必要な質問か、など、自分にも疑問を持てるといいですね。

自分の言動に疑問を持つと、振り返ることができます。なぜ、相手に腹が立ったのか、悲しい気持ちになったのか、うれしいのか。日々の業務でその時々の感情は流れていきますが、隙を見て立ち止まって、自問自答すると、自己覚知(自分の認識や思考の癖が支援にどう影響しているのかを自覚すること)が深まります。それは相談員である以上、辞めてはいけないことだと思います。いや福祉に関わる以上?

私の場合、自分が自分である以上、自分のことを知り続けたいと思っています。これはほんとに、カッコをつけているわけではなく、自分に関することは解明しなければと、ある種脅迫のようなものなのです。

 

 

まとめ

 

相談員になりたいのであれば、「相談支援事業」をやっている法人、特におすすめは「指定一般相談支援」をおこなっている法人を探すことです。

ただし、配置基準の関係から新卒で相談員になるのは難しい可能性が高いです。そして正直おすすめもできません。

漠然とした相談業務(相手と話して、内容を整理して、サービスに繋げる)という点では、病院のワーカーや行政機関の方が新卒への間口は広いとも考えられます。さらに狭き門で障害者就業・生活支援センター(私の場合は偶然こちら)とか障害者職業センターとかもありますが・・・。正直望み薄。

めぼしい法人で就活する際、相談業務への熱い思いを担当にぶつけて、異動の可能性を探るのがいいでしょうか。私の部署にはそれで就職後3年後に配属されてきた子がいます(なお異動直後は大変苦労されておりました。今は頼れる同僚です)。しかし可能性はあくまで可能性。異動が少ない法人もありますので、それはそれ。その時は転職しましょう!とにかく相談支援専門員です。資格取得を法人に希望し続けるのです。希望が叶うかは別ですが。個人ではなかなか取れないかもか。県によるか。

 

向いているのは「ドライだけど親切な人」。適切に相手と距離を取りましょう。「心は熱く、頭は冷静に」と学生時代よく言われました。

そして「疑問を持てる人」。相手に対してだけでなく、自分自身にも疑問を。あなたの「なぜ」が相手の本質を暴きます。相談業務だけでなく、日常的にできるとすごいですよ。相手の一挙手一投足に意味を求め始めます。最悪嫌われます。私は好かれる方です。

 

もし新卒で相談員になった方がこのページにたどり着いたのなら、ようこそ相談事業へ。ここからが本当の地獄だ。一緒に自己覚知しようぜ。

ちょっと待ってどうか辞めないで。慣れたら楽しいし、何より楽だよ。自分で予定を組んで、訪問先で寄り道できるよ。ほどほどにしないと締め付けがきつくなるよ。まずは上司に信頼されよう。そしてぎりぎりを見極めて上手くサボろう。

でもしんどかったらすぐに辞めよう。向き不向き、得意不得意、スキル不足、努力不足、そんなことはないかもしれない。そこで自分に対して「なぜ」を冷静に繰り返そう。そして再出発の準備をしよう。

 

相談業務に就いたあなた。一緒にいい相談員になりましょう。

相談業務に就きたいあなた。いつかなれるといいね。お前が止まんねえ限り、俺はその先にいるぞ!だからよ、止まるんじゃねえぞ。


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