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パセリがあってこそ ゴジラじゃない方展

「ゴジラ」シリーズは、なにもゴジラだけではない。

「ゴジラじゃない方展」
ゴジラじゃない方展実行委員会、西武渋谷店 モヴィーダ館 7階、2019年4月27日~2019年5月6日

「じゃない方」たち

サイトURLが「no-godzilla.world」って良すぎませんか。ねえ?さておき、今回画像多め。

開催間もなくの頃、地元の友人2人とで行った「ゴジラじゃない方展」。特別熱があったのは自分だけだったので、むりくり巻き込んで行ったようなものだった。2人とも自分に気を使ってくれて、特典付き入場券(一般入場券より少しだけ高い)を購入。その特典である描き下ろしポストカード2枚を2人ともくれた。ありがとうすぎる。

会場内には、公開されることの少ないスーツがいくつも並ぶ。他にも貴重な資料やマケット、雛型など。バラゴン(GMK)、カマキラス(FW)、クモンガ(FW)、エビラ(FW)、マンダ(FW)、ヘドラ(FW)、メカゴジラ(VS)、Mobile Operation Godzilla Expert Robot Aero-type、3式機龍、キングギドラ(昭和)、モスラ(幼虫)…。

そして壁には、会期中順次書き足せれていくという西川伸司さんの絵。バラン、メガロ、アンギラス…。

スーツを間近で見られることはファンからしたらたまらないこと。TSUTAYA 渋谷店(東京都渋谷区宇田川町21-6)の1階CDコーナーで飾られるアイドルの衣装のそれと同じ。Mobile Operation Godzilla Expert Robot Aero-typeの脇下にスーツ着脱用に仕込まれたクーラーボックスのフックみたいなものがあることをその時知った。とにかく記録用に写真をしこたまに。

モスラ(幼虫)あたりは単体作品もあるわけだし、「じゃない方」に収まらないような気もするが、「ゴジラ」シリーズ65年を彩ってきた名脇役たち。これだけいてマグロの子がいないのは、流石にゴジラじゃない方とするのに気が引けたからなのか。

ポテトとパセリ

ゴジラ自体は言わずもがな、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームにその名を刻むほどの世界的なキャラクター。それでも「ゴジラ」シリーズが半世紀以上も続いているのは、「じゃない方」の功績が間違いなく大きい。核の忌み子という強烈なキャラクターを確立しているゴジラも、それ単体の存在だけでは、こうも人気シリーズとして残ることはなかったかもしれない。

なぜ、ファミレスのポテトにパセリが添えられるのか。それは主役たるポテトの存在をより際立たせるためだ。もし、ポテトだけであれば、焦点を持たせることができず、ぼんやりとしてしまう。パセリ1つ加わるだけで、皿全体の彩りは格段によくなる。明らかに美味しそう。+1以上の飛躍。ポテトを人気メニューに仕立てあげたのは、パセリと言っても過言ではない。過言ではない。

言うも恥ずかしいほどこすられたたとえだが、それ以上に的確な比喩を知らない。「じゃない方」たちはパセリだ。ゴジラを際立たせるためのパセリだ。

ゴジラが立ち振る舞う対象として、「じゃない方」にバリエーションがあったからこそ、シリアスかつハードな路線から派生して、怪獣プロレス路線、優しいお父さん路線、みんなのヒーロー路線、世界の災厄路線と、自由な振り幅を持たせることができた。

自分だって、家族、恋人、友人、上司、後輩、対象ごとそれぞれでキャラクターが分かれているはず。そのそれぞれが本当で、そのそれぞれがその人のかけがえのない魅力で、その魅力を自分が持ち得ているのは、偏に相手がいたからに違いない。

そして、それはきっと互いにそうなのだと思う。互いが互いの魅力を生む。自分はきっと誰かにとってのパセリだし、誰かのおかげでポテトだ。マジで何言ってんだ。

時として主役を喰っちまう

ゴジラと「じゃない方」たちはそんな関係だと思う。彼らはもちろん「ゴジラ」シリーズの脇役でありながらも、ある意味で主役だ。

『ゴジラ対ヘドラ』(坂野義光、東宝、1971)では、ヘドラを中心に物語が進む。公害の忌み子であるヘドラは、ヒーロー路線で忘れかけられていたゴジラの原点=核を改めて拾い上げた。(写真はFW版、悪しからず。)

続いて、『ゴジラvsデストロイア』(大河原孝夫・川北紘一、東宝、1995)。初代ゴジラを葬った最悪の兵器オキシジェン・デストロイヤーをきっかけに誕生した完全生命体デストロイア。終わることない進化を続けるその姿は、膨れ上がる新兵器開発競争を思わせる。超兵器R1号。デストロイアとゴジラ。その過程に生まれた2匹は、存在の悲壮を互いに照らしつつも、どちらかの死が訪れるまで闘う。(写真は雛形。)

最後に、『ゴジラ×メカゴジラ』(手塚昌明、東宝、2002)、『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(手塚昌明、東宝、2003)。ゴジラの骨をメインフレームに建造された3式機龍は人類の希望として、人類の災厄=ゴジラと対比をなす。一方で、生命への冒涜とも言える経緯で生まれた機龍は、許されざる存在という点でゴジラと重なる。原子力発電所と原子力爆弾のパラフレーズ。全く対照的とも思える姿形をしながらも、ある一点で重なることで「ゴジラ」という存在をより強く浮かび上がらせた。

わかりやすく、ゴジラの要素を対比して際立たせた作品・キャラクターを引き合いに出したが、それ以外のキャラクターたちもすこぶる魅力的だ。ジェットジャガーを筆頭に、ただならぬ人気を博すキャラクターが「ゴジラ」シリーズには多い。

光が強いほど、影も濃くなる、だかなんとかではないが、ゴジラという鮮烈があることで、その脇を固める彼らもさらに強いインパクトを持つ。むしろ、ゴジラを上回りかねないほどのキャラクター性を発揮することだってある。だから「ゴジラ」は面白い。

こうなると「じゃない方」というのも、なんだか不名誉に思えてくるので「である方」だ、なんて言おうとも思ったけれども、「ゴジラ」という存在のあまりの大きさをより誇らしく思えてきたので、敬意を込めて「じゃない方」と彼らのことは覚えておきたい。

We are 蕎麦屋のカツ丼
牛丼屋のカレー
またはバナナワニ園のレッサーパンダ
ダークナイトで言えばジョーカー
ブラックレイン松田優作
ロックフェスでのCreepy Nuts

『助演男優賞』(Creepy Nuts、詞・曲 Creepy Nuts)

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ところでゴジラ、見てよ

ある程度オチがついたけれども、あと少しだけ。

いま、ゴジラ映画31作品がAmazon Prime Videoで配信されてますよ。見るチャンスですよ。

どこから見ても悪くはない、とは思いますが、少なくとも『ゴジラ』(本田猪四郎、東宝、1954)は見ておいて損はないと思っています。「怪獣モノ」と忌避されている方も、ひとまず見てから単なる「怪獣モノ」なのかどうかを見極めていただきたい。特撮は思ってるほど薄くはない。

ちなみに自分は、

『ゴジラ』
『ゴジラvsデストロイア』
『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(金子修介・神谷誠、東宝、2001)
『シン・ゴジラ』(庵野秀明・樋口真嗣、東宝、2016)

が特に好き。またいつか、がっつり話させてください。

あと、

『ゴジラの逆襲』(小田基義、東宝、1955)
『ゴジラ対ヘドラ』
『ゴジラ対メガロ』(福田純、東宝、1973)
『ゴジラ(1984)』(橋本幸治・中野昭慶、東宝、1984)
『ゴジラvsビオランテ』(大森一樹・川北紘一、東宝、1989)
『ゴジラvsメカゴジラ』(大河原孝夫・川北紘一、東宝、1993)
『ゴジラ×メカゴジラ』
『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』
『ゴジラ FINAL WARS』(北村龍平、東宝、2004)
『GODZILLA(2014)』(ギャレス・エドワーズ、レジェンダリー・ピクチャーズ 、2014)

あたりは、個人的におすすめ。

月末公開の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(マイケル・ドハティ、レジェンダリー・ピクチャーズ、2019)もあるわけなので、いずれかの「ゴジラ」に触れてみてはいかがでしょうか。本当に面白いですから。

「ゴジラ」シリーズ、その名脇役たちについてはyoutubeなどで解説動画がいくつかあるのでそちらも。作品を楽しめるようになるのでおすすめです。

らいす~LICE~さんの「ゴジラ怪獣をゆっくりと解説してみようと思い立ってみる」シリーズの動画を見ていただければ万事OKだったのだが、ある時、ニコニコ動画やyoutube、Twitterなどネット上の全てのアカウントを消されてしまったため、いまでは1つも残っていない。特撮の面白さを改めて気付かせてくれた動画シリーズで、できればいろんな人にオススメしておきたかったのですが、ご本人のご都合もあるかと思うので仕方がない。らいす~LICE~さんには感謝してもし足りない。

いまは、絵師のまふゆとらさん嵐さんが毎週更新されている「ラジオ怪獣電波局」をよく聞いている。毎週1本、怪獣、作品、回など1つのテーマに絞ってお2人が30分程度語るラジオ。ゴジラ怪獣よりもウルトラ怪獣の方が比率高め。小ネタが細かく、とにかく楽しそうにキャッキャッ怪獣について語っているのを聴いていると自分も楽しくなる。下記は歴代メカゴジラを取り上げた回。

「ゴジラ」の楽しみ方は人それぞれ。真剣に意味を考えながら見るも、粗をツッコミながら見るも、なんでもあり。自分は「ゴジラ」を見て人生半分得していると思っているので、是非おヒマな時にでも、「ゴジラ」を「じゃない方」たちを楽しんでみてほしいです。

以前、ゴジラ検定について書いたこともあるので、そちらも是非。↓

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