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新解釈 竹簡孫子の兵法

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世界最古の兵法書「孫子の兵法」。その孫子の兵法の中でも最も古い「竹簡孫子」を研究しているマガジンです。孫子の兵法理論である「正奇」や「虚実」「形勢」などの追概念は「陰陽理論」が適…
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#虚実篇

(29)「無形」の性質-竹簡孫子 虚実篇第六

(29)「無形」の性質-竹簡孫子 虚実篇第六

それでは「無形」の性質、「無形」による勝利の特徴について説明していきたいと思います。

「無形」というものがどういう性質のもであるか、虚実篇では四つを挙げています。それでは本文を見てみましょう。

【書き下し文】
兵を形(あらわ)す極みは、無形(むけい)に至る。無形ならば、即ち深間(しんかん)も窺(うかが)うこと能ず、智者も謀ること能わず。形に因りて勝を衆に錯(お)くも、衆は知ること能わず。人は皆

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(30)「兵」は「水」の性質-竹簡孫子 虚実篇第六

(30)「兵」は「水」の性質-竹簡孫子 虚実篇第六

虚実篇は、4段論法で理論が展開します。
一つ目が、人を致して致されず、つまり「佚」と「労」の関係 
二つ目が、「無形」の説明
三つ目が、「無形」を使った戦い方

四つ目は、勢篇の理論に戻り、「正奇」の戦法の組み合わせによって「虚実」を作り出すこと、つまりそれは、無限の組み合わせがあり、掴みどころがなく、また再現性がないということを述べます。

【書き下し文】
夫(そ)れ兵の形は水に象(かたど)る。

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(28)多勢の敵を無力化する-竹簡孫子 虚実篇第六

(28)多勢の敵を無力化する-竹簡孫子 虚実篇第六

虚実篇の真骨頂は、多勢の敵を相手に、奇正の兵法を使い分け、敵軍に自軍を秘匿する「無形」によって、局所的に優位性を作り出す方法について述べました。そのポイントはいつどこで戦うのかという情報でした。

次からは、実際の強敵を想定して、どうするかについて詳細に説明していきます。孫武が仕えた「呉」の強力なライバルである「越」とどうやって戦うかであります。

【書き下し文】
以て吾れ之を度(はか)るに、越人

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(27)「無形」-竹簡孫子 虚実篇第六

(27)「無形」-竹簡孫子 虚実篇第六

ここからは孫子の兵法の奥義中の奥義「無形」について解説します。

「無形」を理解するためには「形」が何なのかを知らなければなりません。「形」を単なる軍の態勢、形としての形と解釈していると「無形」の本質を理解することはできません。

「形」は戦力充実、戦力集中の状態であり、攻撃力も防御力もあるが、敵からは状況を把握されてしまう体勢です。
「無形」はその反対で、戦力が拡散し、秘匿されるが、その時は攻撃

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(26)人を致して致されず一瞬-竹簡孫子 虚実篇第六

(26)人を致して致されず一瞬-竹簡孫子 虚実篇第六

虚実篇は、いわゆる形篇と勢篇の発展系であり、応用であり、彼我の間で戦力差を作り、戦わないで決着をつける方法にまで理論が展開していきます。

形篇と勢篇は、勢いを作るための一般的な理論でした。
虚実篇は敵軍との駆け引き方法であり、変幻自在に変化する「」奇の兵法理論の神髄であり、多くの研究者が絶賛している箇所です。

虚実篇は、彼我の間に勢いを作り出すために、戦力の差(虚実)を作り出す方法を述べていま

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虚実篇 第六(新解釈/竹簡孫子)

虚実篇 第六(新解釈/竹簡孫子)

【現代訳】
孫子は言う。「敵よりも早く戦場に到着して敵を待ち構える者は元気であるが、後から戦場に到着して戦闘に向かう者は疲弊する」と。そういう訳では上手に戦う者は、相手を自分の思うように動かすことができるが、反対に相手に動かされることがありません。

例えば、敵軍に来て欲しい所に自ら進んで来させることができるのは、その地に来ることによって利益が得られるように仕向けるからです。逆に敵軍が我が方に来な

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