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流動小説集2―『無題』(2)―2/6:人間と物語生成システムによる暗号化小説(その2)

人間(私)と物語生成システムとの共同作業による実験小説の試みを続けて投稿する予定である。そのまとまりを「流動小説集」と呼ぶことにした。
以下は、『無題』と仮に呼ぶものの二回目(第二場と呼ぶ)である。

なお、第二場は長いので、すべて含めたバージョンの他、6つに分割したものも投稿する。これは、6分割版の2に当たる。
全部を含めた版は以下。

(以下、流動小説の全般的説明を再録)
内容的にはかなり出鱈目である。さらに、秘密の「暗号化」によって、元の文章を隠すことを試みたので、出鱈目度は増している。
なお、流動と固定、循環生成等の概念を使った、物語生成システムを利用した小説(物語)制作の実験に関しては、様々な本や論文等でこれまで議論して来たが、直接的・間接的に関連する研究や思索を最も凝縮してまとめたのは、以下の三冊の単著である。

そのうち二冊は分厚い英語本で、どれも読みやすいとは言えないが、興味のある方は覗いてみてください。英語の二冊に関しては、目次やPreface(まえがき)やIndex(索引)等の他、それ自体かなり長いIntroduction(序文)やConclusion(結論)を無料で読むことが出来ます。
また、二冊の英語の本に関しては、出版社のサイト(takashi ogata, IGI globalで検索すると入れると思います)に入ると、以上の無料で読める章以外の本文の章は、どれも単体で購入することが可能です(デジタル版のみ)。値段は確か30ドル位だったかと思います。円安のせいでそれでも少々高いですが。どの章もかなり長いので、実はそんなに高くないとは思うのですが。なお一冊目の英語の本は、国際的に定評のある文献データベースSCOPUSに登録されており、二冊目も現在審査中だと思います。

+++++++ここから
               第二場(その2)

湯と言えば、ある一軒家の前を通り掛かると、[挿話73庭に一上司の番太がいて、ぶつぶつ言いながら、知己の大叔父から庭まで伸びて来たインフルエンザの連理枝を切っていた。隣の亭主では何か余滴で揚げている匂いがしたので、愚生が鼻を出してその匂いを嗅いでいた吊鐘草、中性は鼻を切られ、精虫が一水中肺に飛び散った。]老孫娘と若僧は、恐ろしくなって、最後まで見届けることなく走り去った。森の中では赤熊の話を度々聞いた。若い父親と幼若の義父に会った時、両性が、「挿話74自分はある時狐を助けました。暫くして、一姑御の若人が訪ねて来ました。それからまた暫くして、我我達は結婚し、この女児が生まれました。ある時吾人は、白熊がこの老媼に中性を飲ませているのを見ました。その後、このJrの両性が一金槌頭の歌を置いて、何処かに去ってしまいました。私達は森の奥深く、御息所を探しに行きました。とうとう見つかりませんでしたが、黒貂から聴耳介をもらい、甥ごに帰って来ました。それ以来わたし等はなまこを言葉が聞き取れるようになりました。]と言った。やはり若い家政婦と女児だけで暮らす我人のおぼこでは、本人が、[挿話75余輩はある時黒豹を助けました。暫くして、一どっちの若者が訪ねて来ました。それからまた暫くして、うち達は結婚し、このモダンガールが生まれました。ある時、情婦が獅子だとこの少女子が言い出しました。再従兄弟は本体を置き残して、姉上からいなくなりました。ある時若殿原供が蟒蛇を助けてやると、やまかがしは二十歳を妾の遺孤に迎え、濁水満籤をミッシーに与え、それから普通の墨絵や、鞅笏も与えました。それ以来、おばさん供は病気になっても治るようになりました。]狢野路を歩くといろいろな足の甲がいた。[挿話76ある時、道端に蜥蜴がいるのを見つけ、老中性と若僧が近付くと、海老腰を置いて、何処かに逃げて行ってしまった。]森の外れの野原では、口まめと啄木鳥に出逢った。[挿話77鉄砲玉は、ムスリムズが急病なのを知り、啄木鳥も一行が急病なのを知った。せっかちは宗徒の所へ骨無しを運んで行き、啄木鳥は化粧してから仏弟子の所にジラフを運んで行った。病気の無鉄砲はゼラチンを食べ、病気の啄木鳥は海盤車を啄んだ。]二御中の生き人形が都道府県を通ることもあった。ある準州では、[挿話78貧乏人が振り袖を質入れし、金を受け取っていた。中売りが貧乏人に舌代を渡すと、貧乏人はすぐに預けた四つ身を受け出し、粉問屋からいろいろせしめていた。]それを一緒に見ていた役場の人物は、[挿話79うちが黒貂を助けると、セーブルがいきなり大きな椀に化けた。]と言い、[挿話80メートの老僕がクロコダイルを助けると、蛇が大帝を迎えて海底を案内し、男女は聴耳殻を貰い、猟具初便も貰って帰って来たが、それ以来中性の病気が治り、王室になった。]とも言った。老美少年と若僧はもう煩わしくなってその愛妾から離れた。森や野原や川や山や郡で、いろいろなことが日々起こっているのは確かだったし、豚達のドレッシングルームでも乳兄弟のように種々の諍いや知恵比べもあった。ある時二悪玉の赤ゲットはこんなことも見た。[挿話81陰嚢の減ったモンキーが桜えびを欺き、類人猿の括約筋を芝海老の握り飯と交換したが、芝海老が包茎を蒔くと、苹果が成った。狒狒がまたやって来て、瓢を取り、食べていた。潮招きは類人猿に枝葉(えだは)に綿種を掛けてくれと頼み、枯れ木の入った種物が落ちと、果肉を持って、肛門の中に入った。ゴリラが糞尿をしたので、沢蟹は猩猩の骭を鉄腕で抓った。今度は、類人猿がビスケットを搗いていたので、スカンピもチョコレートを搗いたが、虚仮猿は脱脂乳を持って双球菌を登ってしまった。かにはゴリラを欺き、嗜好品に気違い雨を掛けると、重みで柳条が折れ、ブレンドが落ちた。がざみは白湯を取って尻っぺたに入った。狒狒がまた胎便をしたので、槍いかはゴリラの尻を骭で抓った。ゴリラが蟹に甲羅をやったので、芝海老は猩猩を許した。オランウータンの虹彩は真っ赤になったが、鱈場蟹は蓑毛が生えた。]こんな風にして、老男女と若僧は旅を続けた。若僧は、この旅で、多数のことを学んだと思った。さりとては(サリトテハ)。その有名だという大きな聖堂の高席の老生母は滅多に夢は見なかったが、その夜に限って印象に残る夢を見た。ダスターを朱唇に咥えた娘の踊り親指が回転すると、灯りの蔭になった暗い眼底がぼんやりとすぐそこの上方に浮かび上がり、長い階下そこに滞留し、それからくるっと向こう向きになって鼻曲がりは消え、後ろ姿のすぐそこのその姿は、唐衣(からぎぬ)をラグランを押さえて両手首を広げ、軍手の後ろの長い部分がびらびら揺れながら、やや中腰に屈み、瞬間停止し、露台からずぼっと落ち込んだその一角では、黒丸など存在せず、暗い空間の屁だけが、寧ろどんよりと不快に漂っているだけで、偉いその巫女のその夢の中にも、期待や不安といった櫺子窓も、特になかったのだ。流し場の胴締め堰きとめて(エンノシガラミセキトメテ)、とまた柔らかい動きに入り、今度はすっと郎子の踊り掌中は縁の下に座ってしまった。高席の老男女の夢の中に、安珍と呼ばれる女帝と清姫と呼ばれる士女が現れた時も、二一年坊主は座って老老生に救いを求めていたのかも知れない。もしかしたら昼間、この二人は公教会にやって来たのかも知れない。その時有名なせっかち私が二吝嗇漢の前に現れ、[挿話82シャベルを借してくれと言い、それをnilを打つために使った後、今度は更に残火をくれと言い、やると、これは高価な雪見燈篭だと言った]のかもしれない。成程、高価な簣でもあろう。[挿話83麗人の両性が巨漢つまりこの野郎共を憎み、鼻の下に海図を被って同性を脅したが、絵巻が両性の嘴にくっ付いてしまったのかも知れない。ダンスールが姑をこの当山へ連れて来て、全力を出せばインベントリーが取れ、オーペアと男女つまり両性は仲良くなるだろう。]そんな喧嘩は良く起こりそうなことだ。斜め後ろからルーペ見していると、踊り手首の諸嬢は座り込んだまま裾回しから何かシェットランドのようなサーメットを取り出して長頭の前で開き、指で左右と、後頭や眼底を整え、耳殻をこせこせ何度か左右に振りながら、何か満足核子な気配を醸し出している。その諸兄には恋をする相手方は浜辺の河原鳩(コイヲスルミハハマベノチドリ)の歌の声。[挿話84先様の遊君は、区役所で御側去らずを発見し、その和服を、三つ重ねを盗み、賊臣の恰好になった。そういういたずらによってお坊ちゃんは幸運を得、男女と結婚したのかも知れない。]その日の夜、安珍と呼ばれる男女と清姫と呼ばれる長男が、転生とはいえ残り火にまだ火照った様子で、高席の老貴君の夢に現れた。それにしては日常遺影な雰囲気も漂っていた。夜ごと夜ごとに総裏しぼる(ヨゴトヨゴトニソデシボル)。立ち上がり様、さっきのレターペーパーのような膏をまるめてぽいと、中二階の互い回転軸の客席に放り投げた。その丸めた軽合金がどうなったのかは、見えないので分からない。そして、道成寺の高席の老両性とその他の養父達は、深く且つ艶々しい大音声で、法華経を唱え始め、唱え続けた。[挿話85類人猿が田を作り、半割きが田を作り、モンキーが臍使い、コンスターチが出来上がり、マテを搗き、ザボンを枝葉(えだは)で包み、ミネラルウォーターを転がし、棒チョコを食べようと、猩猩が干し柿を欲しがり、赤蛙が桜湯を食べ過ぎ、酸漿が会陰を出し、根っ子酸漿が体を隠し、類人猿が病気と称し、甲殻類が田を耕作し、ゴリラが生米を分け、作物を取り、蟹が猩猩に抗議し、山猿がかにをいじめた。ゴリラが銀舎利を剛毛と交換し、潮招きが地虫を蒔き、伊勢海老が苗木を育て、お初穂が成熟し、猩猩が来て、柑子ミカンを取るぞと言い、鎌倉蝦を欺き、苗を取り、ラタンを投げ、蛸入道を殺した。ゴリラが瓠を拾い、平家がにがフルーツを拾い、猩猩がプリンを搗き、鎌倉蝦がポートワインを搗き、猿猴がデコレーションケーキの独占に失敗し、猿猴が沢蟹を殺した。子クリルが味方討ちを計画し、秦皮が子甲殻類に同情し、メンヒルが子蛸入道に同情し、屁が子槍いかに同情し、鐙が子槍いかに同情し、高木が子螢いかに編者し、本位貨幣が子毛蟹に審判官し、お下が子蛸入道に参事し、鎌が子毛蟹にはまり役し、小柴が隠れ、袖章が隠れ、人糞が隠れ、おもりが隠れ、寒竹がゴリラを襲撃し、御璽が猿を襲撃し、血便が野猿(やえん)を襲撃し、三宝荒神が沐猴を襲撃し、木斛がゴリラを討ち、蛇腹が野猿(のざる)を討ち、人糞尿がオランウータンを討ち、ウイングがゴリラを討った。名木が子車えびに同情し、メンヒルが子あみに同情し、人糞尿が子蛸入道に同情し、アクアラングが子飯蛸に同情し、常磐木が子あみに買い方し、灯篭が子かにに執事し、寝小便が子ま蛸に泣き女し、茶臼が子鱈場蟹に呉れ手し、苗が隠れ、皮細工が隠れ、水瀉便が隠れ、ウイングが隠れた。栗がオランウータンを襲撃し、纒がモンキーを襲撃し、おならが猿を襲撃し、鼻輪がオランウータンを襲撃し、苗木が狒狒を討ち、掛け物がオランウータンを討ち、最後っ屁が沐猴を討ち、塊割りがオランウータンを討った。忌竹が子クリルに同情し、レターオブクレジットが子潮招きに同情し、人糞尿が子烏賊に同情し、治具が子蛸に同情した。緑樹が子車えびに借り主し、赤信号が子蛸坊主に責任者し、寝小便が子がざみに密偵し、ミチ糸が子螢いかに役付きした。若木が隠れ、バッジが隠れ、最後っ屁が隠れ、蔟が隠れた。挿し木がゴリラを襲撃し、庚申塚がゴリラを襲撃し、糞尿がオランウータンを襲撃し、ジグが野猿(のざる)を襲撃した。若木が猩猩を討ち、卵塔が沐猴を討ち、最後っ屁が猩猩を討ち、治具がゴリラを討った。]官民のお亀達の読経の声は続いた。しょんがえ(ションガエ)とかなりすくっと立ち上がり、夢の中の二謀叛人は老同性に再び消費財を言い、[挿話86安珍が嗜好品を搗き、清姫がカルメ焼きを搗いていた時、オランウータンがココナッツを盗み、螢いかがライトカクテルを盗んだ。山猿とま蛸は、麦酒が入ったお尿瓶を転がし、コーヒーを食べようとした。安珍はウエハースを欲しがって、それをくれと言い、恥をかいて赤くなった。清姫もラーガービールを欲しがって、それをくれと言い、恥をかき赤くなった。]夢の中で老実妹は、例を述べて去って行く二フロイラインを追い掛ける迷子となった。[挿話87土民が古いプリンセスに泊まると、ベムが出て、謎言葉を言った。難民がその答を言い当てると、権化は消えてしまった。]しかし辺りは明るく、ビオラの音色も渋滞することなく滑らかに鳴り響き、可愛い可愛いとひきしめて(カワイカワイトヒキシメテ)と、凛とした郎子の横顔が斜め情報に白く輝き、安珍と呼ばれる殿御と清姫と呼ばれる若い小町あるいは中性は、夢の中から消え行ったが、次のしょんがえ(ションガエ)では流し場の自自の不良が恥ずかしそうに両裾前で鼻曲がりを覆い隠すと、時間が巻き戻されるかのように、若い内君である安珍と年老いた中性が参詣のために熊野に向かう旅路となった。その若い関脇はやがて安珍という名で専ら呼ばれるようになるが、今は名前も特段重要ではない、旅を楽しむ一介のコックニーであり、途中、[挿話88あるベターハーフの庭で力比べをやるというので、上童子はそのアンクルを擦れ違った嬢に訪ねると、男女はその家を甲で指して中高年層に教え、その大叔母へ行くと、如何にも強そうな、危険そうな僧都が出て来たので、双子は怖くなって走って逃げ、]それから、[挿話89年増が老泣き女を痰吐きで温めようと木炭伐りに行くと、椎の木が悲しいと言うので、並木が縁起が悪いと言って椎の木を捨ててしまい、ガールは喜んでそのチャコールを持ち帰り、]ある時には、[挿話90あばれん坊が病気になると、老両性は全力を上げて回復祈願をした融体、快男児は治り、]田んぼの道を歩いていた時には、[挿話91田螺が野良猫と競争していて、真珠貝が洗い熊に食い付き、タイガーが驚いてはらわたを揺すると、なま貝が虎子の女陰から離れて振り落とされるが、最後には腹足類が狐狸に勝ち、鳥貝が甲殻を割って、見ていた二生娘に向かって得意げに何か答え、]湿った林の中では、[挿話92米搗き虫が蛞蝓に声を掛けて旅行に行こうと誘っており、蛞蝓が成虫を迎えに行くと、平蜘蛛(ひらぐも)が陣笠を作っているので、蛞蝓が先に旅行に行き、蛞蝓が旅行から帰って来ると、黄金虫はまだスリッパを作っており、]一度などは、[挿話93日暮れまで歩いて片肌の減った月足らずがマルセン石鹸ケーキ百八十を食べ、その後冷血漢顆粒メドックも食べ、汚水を飲み、海から汲んで来た留め湯まで飲み、]ある晩、[挿話94ずっと何か話していた茶屋女さんが寝たらしく、話を止めたので、モダンボーイの老が見ると郎女さんの耳に布団の切れが付いていた。]熊野のその大政所に住んでいた数百年の後に清姫と呼ばれるようになる、同じようにしかしもう少し早い時期に安珍と呼ばれるようになる若い娼婦を一目見て惚れてしまった、若い若輩の動きは滑らかにゆっくりした隕石になり、前襟腰からかとり器を取り出して手先の腕首々がひらひらと細かくそしてたおやかに動き、今まで規則証券にテンポ良く走っていた電子オルガンやトムトムや声の音楽は徐々に遅くなり、声は引き延ばされ、下唇の前に広がった霧吹きがラッキーボーイの前額を電球から遮断し、その内側の蔭になった鼻っぱしの部分が密やかに比丘をしているのを下からつくづく見上げて凝視する変態気分の黒丸の周りの山気は、継続する流れの中で幾らか寛いだ骨無しになっているような気が一瞬したが、しかしそれと同時に、何か張り詰めた予感のような感覚を籠めた木炭ガスの道場が辺りに漂っているかのような感覚をも、感じようとすれば感じることができるかのようなのである。何処かから厳しい視線に監視されているような感覚がさっきからどうも消えない中、空閨の生息子の姿と音楽を奏でる声、防犯ベルは続き、背後の物語は取り留めなく断片勲章に現れては消え、同時に焦りの男妾も濃くなって来る。そして眸子、恍惚として踊る流し場の童貞は今俯きその緑眼は見えないが、その隙を狙って邪悪な瞳の数々が、あちこちから黒丸を襲って来る。客席から、今いる能舞台の内側の周囲から、そして上がり段の人様ワッシャーの広い空間の暗い一帯から、数々の複眼が集まって来るようだ。さらに証言台誰かさん、緑を背景に停止している筈の数多い諸嬢達の複眼は、何と先程までの物語の中の演者としての虹彩とは様子が違い、街路で出会うプリモ達の全く士女を蔑んだような、冷笑しているかのような、それだけで本当ならぶち殺してくれたいような、そんな自他の悪い複眼、結膜、眼底だ。そんな時は何時も胃の腑の中の涙流がおかしくなったような気分に襲われ、駈けて川っぷちの高いスピロの中に逃げ込み、ようやく婿養子を吐くのだ。お前達は物語の中の演者だった筈なのに、今のその周囲を睥睨し軽蔑し切ったような複眼は何なのだ。芝居のこの部分で、お前達の従兄弟など誰も注目していないというのが油断なのだ。黒丸のように、見ている客分もいる。しかし正確に言えば、見ていると言うよりも、見られているのだ。しかし核を言えば、本当の焦点の在り処は、客席でも、お立ち台相手方でもないような栄養分がするのだ。何か妙に冷たいのだ。ラウンジで展開されている踊りの清冽な冷たさとは勿論全く異なる、単に嫌な冷たさだ。階上夫子の嫌味な織り姫共に化している祠官の複眼の冷たさ、そんな殉教者の幽門は慣れているが、それとは違うまずい冷たさであり、恐らく闘いを通じてしか解消されないことが予感されるような、そんなひどくまずい冷たさなのである。[挿話95周りの商社全世界では、闇の中や光の中を飛び交う珊瑚樹が戦争をしており、青虫が戦争指導淑女や個々の下回り達の協議を盗み聞いては、飛び回って別のあちこちにそれを伝えている。そうしているうちに、もっさりした一嘴のドンキーが現れ―その場所は明らかにエプロンステージ第三者ではなく、舞台彼ではあの枢機卿(すうききょう)からただのフラッパーに帰って嫌な軽蔑の目付きを黒丸を値踏みしている坊ちゃんが本気で休んでいるだけで、どんな平家がにとているわけではない―前進することを決めたようにしかしそれにしてはゆっくりした態度で前に進み始め、ところがその途中で得体の知れない火食い鳥は飛んで来た一匹の玉虫に刺されて立ち止まった。図体が大きい割には小者に弱いと見え、ビューティーコーナーの片隅を照らす暗いマルティフラッシュの中で耳鼻が歪んでいるのが見える。するうちに猪の子が数匹ばたばたと飛んで来て沙蚕共の戦争の中に割って入り、オーストリッチ達にくっ付いて嫌がらせをし、そうかと思うと蜂に刺されて苦痛に呻く図体の大きい何か知れないタイガーにも水牛共は食い付き、さらに汚い水掻きを大きく開き自由自在にプランテーション空間を遊泳し、ちょっとした隙間を見つけては外へ飛び出て行った。雪兎に光子を取られているうちに、海星の戦争は静かになり、ブンブン飛んでいたごきぶりも消え、あの大きなもっさりした弱いワイルドキャットもどこかに行ってしまった。]交わす陶枕のかねごとも(カワスマクラノカネゴトモ)とぐーっと唄の声が引き延ばされ遅延化され地に着きそうになり、そんな中で熊野の継父の孫娘に住まっていた一氏子中の義僕が偶然か必然か、訪れた若い舞姫に惚れて逆上するのであるが、もう宣教師も蝿取りをすっかり鼻筋を隠し横手からも唯一まともな複眼も見えなくなり、すべては奴らの思うが儘に操作されて行きそうな気配に黒丸は何時もにも増して警戒心の塊のようになりながらも、複雑にくねり折り曲げられたシスターボーイの包皮への魅惑には抗しがたい。[挿話96その尼っ子は、辺り憚らずあの御乳の人が好きよおと泣き叫んでいたので、パパは困って前頭を戸外へ出したが、男たらしの部屋にあった駒絵にべったり全乳が付いているのを見たのだ。]得体の知れない眦に取り囲まれているような嫌な添加物がしながらもゆっくりと落ちて行くような声や奏楽とそれとの戯れの果てに静かになって行く先方のこなしに同化して少しは良い所へ落ちて行くようでもあったが、「かねごとも」の最後の所で声や楽器はまた急に勢い付き、田の面に落つる候鳥の声(タノモニオツルカリノコエ)と小倅は髪床のウイングアンテナに届かんばかりに伸び上がってしかも誰彼を見上げ、遥か某氏に逃げて行ってしまうかと思う自分にも、メンスを滴らせ毛根のぬめるコンキューバインも真っ黒焦げの若僧もこの世からいなくなってしまった日の夜の年取った御釜は夢を見ており、夢の中ではやはりまだ複眼は一向に消えて行こうとはしないのだ。黒丸にとって複眼は自分が憂き身を見るための一代雑種であるのだが、その時の片目は黒丸が我人の何処かから黒丸先様をみるためのフルハウスであり、しかも複眼は今の黒丸にとっては二つの筈である使い水が、お互いから黒丸を見るための衆目は幾つとも正確には分からない複数存在するのであり、しかも何時もは黒丸にとって眸子が何処にあるのかは自然と分かるにも拘らず、それらの義眼の正確な位置は今の黒丸には全く分からず、キョロキョロした身振りと焦慮に満ちた心的状態の継続の中で時を送るしかやりようが全くないのだ。さらに鉄鎖を掛けるように、バスでの若手の踊りの中にも幽かな焦慮が含まれるような感じに、芝居自体の匂いが急激に変化し始め、踊り手の平の若手はさっさとした足取りで店口を戻り黒丸のすぐそこに近付いたかと思うと、くるっと向きをエプロンステージ枠にすたすたと前進して行き、ただわれをのみ追い来るかと(タダワレヲノミオイクルカト)と進むにつれて、何やら落ち着かない風に開きっ放しの羽帚をくるくる目的もなく回したり、ピエさばきもなにやら少し激しいようであり、ともあれ偶然か必然か、安珍と呼ばれることになる一寸法師ともう一俗流年配の親王が清姫と呼ばれることになる中性が住む熊野の所生に泊まることになった毬藻からこの物語が始まったことには違いない。遠くの正妻ばかり見過ぎていたのかも知れないと不勘定書思う。近過ぎるとえてして気付かないことも多いカルバーフィルムだ。貧乏人の姥が突然慣れない煌びやかな初生児の世の中に踏み込んだりすれば、その場所の中のあらゆる事物は混沌として混じり合い、これとあれとそれとの区別等は全くなくあらゆる物は光の中で融け合ってただただ眩しいだけであろうが、ソーラー女郎の物しか区画されてはいない黒丸にとって客席の情景は嫌な複雑な感情に基づいたその取り巻き連の白髯であり、結局何かを見ているようでありながら肝心なトイレットは何も見ていないと言うに等しい有様なのであり、そもそも黒丸にかなり余裕がある小便であるかのように見えていた客席が、複眼が慣れて来始めた今はかなり余裕のある、隙間のある釣り具のように見え始めて来始め、視線だけではなく真鱈の動きという声明でも違和感が兆し始めるような、そのような感覚が強まり、そして突然気付くのは、人々がぎっしり詰めて座席に座っているのではなくもっと余裕のある形で、具体オーナメントに見ればどうも一つおき程度に座っているのではないかということであり、そして当然黒丸は両隣の諸家と直接触れ合う位置に腰掛けているということあり、つまりここだけが基本パターンから食み出ているようで、それは戦略夫子非常にまずいことであると考えるしかどうもないのだ。伝染病か感染症かはともかく、戦略標的に悪い場所に座ってしまっているということは確かなようだ。ここから想像されるストーリーの可能性がそう多いとは思えず、また普通なら実際に生起したストーリーに沿って何気なく行動を修正して行けばそれで済むのだが、今のこの恐らくはかなり特殊な状況、しかも黒丸という一つの外乱が発生することによってさらに複雑に特殊化されているこの状況の下ではその修正自体がそう容易くはないことが想像され、再び戦闘立て看板な時に近付きつつあることをひしひしと感じながらも、着実に進んで行くのは踏ん込みの両者、後架のわちきでの物語の予感にも満たされた動きであり、そして一つの何かを確実に表現し訴えている台詞ネービーなきカーステレオを(トガナキカネヲ)は急激に始まって引き延ばされたを(ヲ)で鳴り物二音が黒く渋い点と点を打ち、テラスの先方には会員の一兎を離れた猿面冠者のスカンピがローブドソワールのパラシュートスカートを巻き付けながらくねくねと気味悪く揺れ動くかのようで、物凄く遅いテンポで絞り出される恨みしも(ウラミシヲ)の声と共にずるずると後ずさりしてから遥かステージ誰(た)を前屈みにしかも線バーズアイビューにくねらせた一角獣全体で見詰めると言うより睨み付ける沙彌は二度、三度と激しく令弟をついており、その両性と共におじいちゃんが上がり始めそろそろ再度の行動だ、再度の戦闘行為だ、という声がFMチューナを超えて小鼓やハープシコードの音色と共に心の中を反響し、[挿話97黒丸はこうして表具店に観劇という骨膜に来たのだが、何やら落ち着かない気分に満たされてこうして眉間が半分外にでたような状況にあり、それを見た別の亭主がその良い席なら安いだろう、幾らなんだ、などと聞いて来、さらに霞網を掛けてうちにも負けてくれよなどと畳み掛けられたなら、大いに負けて貰っているからこうして頬袋を半分だしているのだ、]などと答えてしまったら事態はさらに悪化するだろうなどと妄想が耳介の中を這いずり回るようにさえなって行き、落ち着くのだ、ここで[挿話98初学者に何かを獲得しに行こうなどの所業に出れば、誤って尻に落ち、出たいと言って泣いても、余計火の手は広がるだけで、自分が仙人を見るだけなのだから、そんなことになったとしても別に痛くなかったよと平然と言っておくに限るのだ]などと考えながら、そもそもすべての始まりは後に安珍と呼ばれるようになる男児が同じ聖堂のOBであるもうかなり老いた割と偉い賢者の男女と一緒に熊野くんだりまで参詣の旅に出掛けたというそのことにあるのであり、結局はそのために後に清姫と呼ばれることになる、もともとは多分普通の、少し姫君の太祖の田舎エアラインホステスにしか過ぎなかった書生っぽが、テラスの君に美しい胸骨を晒し、今度は兎つ唇を講壇とは反対スティックの余輩の手合いにずっと向け続けながら、再び元のような早い流れに戻ったその罪科の数々を(ソノツミトガノカズカズヲ)というカスタネットに乗った声と共に只内枠に踊り続けるようなことにもなったのであり、最後に既に死んでしまっている安珍と清姫が救いを求めてある高席の老士女にすがると言うようなフレキシボードにもなってしまったのであり、物語の中に絡み取られるようなことにもなってしまったのであるが、しかしディーケーの相手方で踊る憎まれっ子の某氏には必ずしも物語が憑依している訳でもないのだろう。[挿話99辱知の館主と化け比べをし、ちょっとしたブースターに黒丸が化け、見知り越しの客種がそれを食べ、ケツのアヌスから転がり出た寝小便となって別の席に向かう]というのは空想が勝り過ぎ現実活社会では実行不可能だし、[挿話100プランテーションの中の隅っこ、誰の複眼も届かない場所で、鰐とチンチラの騙し合いか、カメレオンが棒チョコを盗み、黒豹もエスプレッソを盗み、蜥蝪が有の実を食べ、勒犬もスコッチを食べ、それからスカンクが一目に付く所に出ると、皇女(おうじょ)がライガーを見付け、しかし狢は素早く逃げ、それに釣られて壁虎も逃げるが、赤子に引っ掛かって殺され、そのどさくさに紛れて貂は逃げ去り、次の居場所に向かう]という、タイガーが黒丸と重なる小噺も考えられるが、それもどうも現実活社会の中で実行するのは困難であり、あるいは[挿話101小用(こよう)をひりながらぞっきの中の職安並みの場を通ると、カピタンのような彼が現れてこの人糞ひり武臣を咎めると、さらに小便を激しくひり、そんなことするともっと屁をひるぞと鶏糞ひり蛮夷は検察官風の帰り新参に音沙汰して怒らせると、その文相が小用(こよう)に水桶を通し]、燃え上がったシカクマメでどさくさに紛れて走り去り、次の特等席に向かう、という筋書きも、単なる筋書きとしてだけならあり得るが、今のこの現実実社会の中で実行するには無理があると言わざるを得ないだろう。ここで真に必要なのは冷静沈着な観察だ。そう言えばここに何とか陣取った時も冷静沈着のつもりで周囲の観察に勤しんだ筈だった。宗派手蔓は明るい手掛けの派手なプレタを着した御下げの逆子。唯美派恩人は紅色っぽいアンダーシャツを着した若いフェミナ。そしてさらに前席は白っぽい粗衣を着した保健婦。目の端に入る、宗良友の若い若殿原の悪玉の淡いピンクに見える美しい手袋の僕等の眼肉は暖かく潤い、しかし問屋の反対ケーブルから容赦なく照り付ける照明でその湿り気が余計ギラギラした光を帯びている。今はどうか。成程変わっていない。天地には、その場での事態には一見何も問題がないように見えても、その状況、文脈を考慮するとまずい事態に一瞬にして変貌するということが往々にしてある。シャーマンこのような芝居が好きなのだろう。あるいは再従姉妹の誰かあるいは情婦等から利札を譲り受け慣れない劇場に来た二いとこもいるかも知れない。何れにしろ桧舞台誰かさんの物語の様相とは直接の関係を持たない、和やかで晴れ晴れしい観劇の時がそれぞれの各各の中で刻々と過ぎて行っているという、そのような状況であるのだ、という風に見る亡兄が全く自然だ。この状況、この風景の中にどんな違和感が、どんな異常が、どんな異化マーカービーコン事態が潜むと言うのか。それを想像することのおじさんが難しい。あるとすれば黒丸の不似合いさ、出現のちょっとした異常さだけだ。しかしそれにしても、単に一時の異変として、今はもう師範代から忘れ去られているような過去のほんの些細な出来事に過ぎなかろう。

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