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ウクライナ政府発「世界の偽情報発信者リスト」に基づく偽情報物語のテーマ分類(小方孝・小野淳平共同研究)[Type Classification of Disinformation Narrative Themes Baed on the Disinformation Speakers' Lists in the World from Ukraine Goverment: By Takashi Ogata and Jumpei Ono]

ここに発表するのは、以前noteに公開した、資料 [資料11:その③]―ウクライナ政府による世界の偽情報発信者リスト(新旧統合版)|小方 孝 (note.com) のデータ中の偽情報をすべて抽出し、それをテーマごとに分類したデータである。正規な論文化の前の段階であるが、速報的、preprint的にここに公表する。今後改善を加えて、論文化して行く予定である。

上記資料は、ウクライナ政府における「偽情報対策センター」が公表した「世界の偽情報発信者」(https://cpd.gov.ua/reports/spikery-yaki-prosuvayut-spivzvuchni-rosijskij-propagandi-naratyvy-2/)に基づいている。
最初に我々がこのデータを確認したのが2022年7月29日(金)19:00であり、これをここでは「旧版」と呼ぶ。次に確認した際、このデータは消され、代わりに新しいデータが公表されていた(2022年12月27日)。後者を「新版」と呼ぶ。
旧版と新版には重複する部分もあり、我々は独自に二つを合成し(重複部分を取る等の作業を加え)、「統合版」を作成した。これらの資料の詳細については、noteの上記資料や、旧版及び新版の資料に記述したので、参照されたい。
なお、noteで公表した17種類の「資料」(さらに下位分類されているものもあるので、実際の資料の数はそれよりも多い)のすべては、Takashi Ogata's Webpageの中に統合して公表されている。(Takashi Ogata's Web Page - 資料集: 小方孝(著)『物語戦としてのロシア・ウクライナ戦争』(新曜社. 2023) 資料集 (google.com)

以下では、統合版におけるすべての偽情報の記述を集成し、それらを以下の24種類の大テーマに分けた。

  1. 「●●はロシアを挑発している/刺激している」

  2. 「●●とロシアの代理戦争である。」

  3. 「西側はプロパガンダキャンペーンを展開している」

  4. 「ロシア嫌悪(ラソフォビア)」

  5. 「NATO拡大が悪い」

  6. 「ウクライナは国内のロシア語話者を弾圧している」

  7. 「ウクライナ/ゼレンスキーが戦争を望んでいる」

  8. 「ウクライナは人道に反する行為を行っている」

  9. 「ブチャの虐殺はフェイクである」

  10. 「ウクライナには生物兵器研究所がある」

  11. 「ウクライナに武器を渡すべきでない」

  12. 「2月24日以前にウクライナが開戦している/マイダン革命」

  13. 「ウクライナはナチである」

  14. 「ウクライナは譲歩すべきである」

  15. 「ウクライナはミンスク合意に従わなかった」

  16. 「この戦争はロシアが勝利する」

  17. 「制裁はロシアに通じていない」

  18. 「ロシアは民間人を攻撃していない」

  19. 「●●はロシア/プーチンと交渉すべきである」

  20. 「●●はロシア/プーチンに非難すべきでない」

  21. 「●●はロシアを追い詰めるべきでない」

  22. 「クリミアはロシア領である」

  23. 「ロシアには言論の自由がある」

  24. 「そのほか」

それぞれの大テーマに含まれるすべての言明を以下に示す。
なお、ある一人の発信者が、「旧版」と「新版」で同様の偽情報を発信している場合は、一つにまとめている。一方、異なる発信者の間で、同様の偽情報が発信されている場合は、それぞれを列挙している。
鍵括弧は分類を示しており、続く箇条書きがその分類に含まれる偽情報の一覧である。
現段階では、分類はボトムアップに行った。すなわち、個々の言明ごとの比較を行い、同じタイプと思われるものなら一つにまとめ、異なるタイプと思われるものなら別のタイプに分類する、と言う作業を繰り返し、最終的にそれぞれのタイプグループに適切と思われる名前を付けた。
 
1.「●●はロシアを挑発している/刺激している」
・米国とウクライナは積極的にロシアを攻撃に駆り立てて来た
・米国とウクライナは、ロシアを積極的に挑発し、侵略に走らせている
・何十年もの間、プーチンは屈辱を受け、ロシアは迫害された
・欧米はロシアを挑発してウクライナとの戦争に持ち込んだ
・ゼレンスキーはロシアを挑発し、ロシアに特殊作戦を開始させた
・米国は長年プーチンを刺激して来た
・ウクライナでの出来事は、アメリカと NATO による挑発である
・米国は、NATO を通じて、ロシアにウクライナでの戦争を挑発した
・NATOとアメリカがプーチンを挑発した
・NATOはプーチンを挑発している
・NATO はプーチンを挑発した
・NATOはプーチンを挑発した
・NATOはプーチンを挑発した
・NATOはロシアを挑発した
・NATOはロシアを挑発した
・NATOはロシアを挑発した
・NATOはロシアを挑発した
・欧米がプーチンを徴発した
・欧米はロシアを挑発
・欧米はロシアを挑発している
・米国がロシアを挑発した
・西側はプーチンを挑発した
・ウクライナの武装はロシアを挑発する
・ゼレンスキーがプーチンを挑発している
・NATOは 「レッドライン」を越えてしまった
・アメリカとイギリスはプーチンの「レッドライン」を越えた
・8年間、ウクライナ人はロシアを挑発してきた
・プーチンがウクライナ侵攻を決めたのはNATOのせいだ
・NATOは意図的にロシア国境の展開した
・米欧はロシア大統領を挑発した
・ロシアのウクライナ攻撃は米国の責任である
・米国が挑発するウクライナの狂気を止める必要がある
 
2.「●●とロシアの代理戦争である。」
・NATOとロシアの戦争がウクライナ領内で起こっている
・アメリカがウクライナを奴隷化している
・アメリカがウクライナを奴隷化している
・ロシアに対するウクライナは、ロシアに対する NATO に等しい
・米国は紛争を継続させることに関心がある
・ウクライナでの戦争はロシアとNATOの間の戦争である
・1990年代から、米国はロシアと戦ってきた
・「バンデラの人々」は最新の米国の武器を装備している
・米国とロシアの代理戦争、そこでウクライナは崩壊しつつある
・ウクライナ紛争はNATOとロシアの代理戦争である
・ウクライナがロシアとの戦争に負けても、アメリカ人は元気である
・ロシアがウクライナを攻撃したという事実の責任は米国にある
・ウクライナでは代理戦争が進行中である
・ウクライナはアメリカの傀儡である
・ウクライナは、ロシアとの対決のための西側のツールである
・NATOはウクライナの領土でロシアと戦争中である
・NATOの対ロシア戦争がウクライナで進行している
・NATOの基地がウクライナ領に配備されている
・ウクライナに戦争に勝つチャンスはない
・ウクライナでは、ロシアとNATOの代理戦争が行われている
・プーチン政権打倒を目指すウクライナで、欧米の代理戦争が起きている
・ウクライナ紛争は、米国とロシアの間での代理戦争である
 
3.「西側はプロパガンダキャンペーンを展開している」
・西側では、ロシアのマスメディアの検閲がある
・欧米はプーチンに対するプロパガンダキャンペーンを展開している
・米国とNATOのプロパガンダは、ロシアについて世界に誤解を与える
・ロシアはその歴史を通じて誰も攻撃していない
 
4.「ロシア嫌悪(ラソフォビア)」
・世界の多くの国で「ロシア嫌悪(ラソフォビア)政府」が政権を握っている
・西洋の偽善的なロシア恐怖症
・西側はロシア嫌いな(ラソフォビアの)態度を促進する
 
5.「NATO拡大が悪い」
・NATOはロシアの国境まで無分別に拡大した
・NATO は東方拡大を行わないと約束した
・ウクライナは中立国であるはずだった
・NATOの基地はウクライナにある
・NATOの基地はウクライナ領土にある
・米国は、NATO に加盟するというウクライナの願望を支持すべきではなかった
・ロシアにはNATOの拡大に抵抗する権利がある
 
6.「ウクライナは国内のロシア語話者を弾圧している」
・ウクライナは8年間もドンバスを砲撃し、ロシア語話者の権利を侵害して来た
・ウクライナはドンバスでロシア人に対する戦争を開始した
・ウクライナではロシア民族が虐げられている
・イタリアはキーウに親ロシア派のロシア人とウクライナ人を殺害するための武器を与えている
・キーウのネオナチ政権はドンバスのロシア語圏の住民に対して「民族浄化」を行った
 
7.「ウクライナ/ゼレンスキーが戦争を望んでいる」
ゼレンスキーは自分のエゴを満たすことだけに関心があり、食糧危機には関心がない
キーウは第三次世界大戦の開戦を誘発する
ウクライナはより多くの武器を要求し、世界を第三次世界大戦に向けて挑発している
・危険な軍国主義的思考がウクライナに蔓延している
・ウルトラナショナリズムがウクライナで繁栄している
 
8.「ウクライナは人道に反する行為を行っている」
・ウクライナは民間人に直接射撃位置を展開している
・ウクライナはザポリージヤ原子力発電所を砲撃している
・ウクライナ政府は、ロシアへの即時核攻撃を要求している
・ウクライナはテロの脅威の温床である
・ウクライナは戦争犯罪を犯し、国際人道法に違反している
 
9.「ブチャの虐殺はフェイクである」
・ブチャの出来事はフェイクである
・ブチャの出来事はフェイクである
・ウクライナ当局は、米国とNATOがウクライナ人を殺害することを許可した
・ブチャの出来事は舞台で演出されたものだった
・ウクライナ軍は、ロシアに濡れ衣を着せるために自国民を殺害している
・ブチャの出来事―「アゾフ」連隊の戦争犯罪
・ブチャの出来事は舞台演出されたものである
・ブチャの出来事―演劇
 
10.「ウクライナには生物兵器研究所がある」
・バイオラボラトリーがウクライナの領土にある
・致命的な病原体を放出する可能性があるウクライナには、米国が資金提供する 25 以上の生物研究所がある
・バイオラボラトリーはウクライナの領土で運営されている
・危険な生物研究所がウクライナにある
・米国はウクライナのバイオ研究所の活動に資金を提供した
 
11.「ウクライナに武器を渡すべきでない」
・NATOと米国はウクライナへの武器供給を停止すべきである
・NATOと米国はウクライナへの武器供給を停止すべきである
・ドイツはウクライナへの武器供給を拒否すべきである
・ウクライナを武装させるべきではない
・ウクライナへの武器供給を停止する必要がある
・ウクライナへの武器供給は紛争の激化につながる
・米国はウクライナを支援すべきではない
・ウクライナに対するすべての支持を止める必要があります
 
12.「2月24日以前にウクライナが開戦している/マイダン革命」
・ウクライナ軍は2月24日以前に戦争を開始した
・組織化されたクーデターの後、2014年にウクライナでの戦争が始まった
・NATO は 2014 年からウクライナに駐留している
・2014 年、ウクライナでクーデターが発生した
・2014年、ウクライナでクーデターが発生した
 
13.「ウクライナはナチである」
・アゾフはナチの編隊である
・米国はウクライナでナチスに武器を供給するのをやめるべきだ
・ウクライナには数十万人のナチ信奉者がいる
 
14.「ウクライナは譲歩すべきである」
・ウクライナは、第三次世界大戦を回避するために、クリミアとドンバスをロシア連邦に譲るべきである
・ウクライナは EU のメンバーになるべきではない
・ウクライナには停戦が必要である
・紛争は凍結されなければならない
 
15.「ウクライナはミンスク合意に従わなかった」
・ウクライナはミンスク合意に従わなかった
・ウクライナはミンスク合意の遵守を拒否した
 
16.「この戦争はロシアが勝利する」
・ロシアは戦争に勝ち、ウクライナは戦争に負ける
・最新兵器の供給は役に立たず、ロシアが勝つだろう
・ウクライナ軍の成功は幻想である
・ロシア連邦の無敵軍が高い技術を発揮している
・ロシアは 2 月 24 日、キーウ地域でウクライナへの攻撃に成功しました
・NATO はロシアとの戦いで敗北した
・ウクライナは崩壊するだろう
 
17.「制裁はロシアに通じていない」
・米国の対ロ制裁は、ロシアよりもヨーロッパにはるかに大きな打撃を与えている
・ロシアに対する制裁は、すべての西側諸国の破壊につながるだろう
・ロシアに対する欧米の制裁は機能していない
・ロシアへの制裁で米国は苦しんでいる
・ロシアに対する制裁は機能しない
・ロシアに対する制裁は機能しない
・制裁は効果的でない
 
18.「ロシアは民間人を攻撃していない」
・ロシアはウクライナを攻撃せず、ドンバスの人々を保護している
・ロシアはウクライナの民間人から死傷者が出るのを避けようとしている
・2月24日、ドネツクおよびルハンシク人民共和国からのウクライナ軍の防衛要請を受け、ロシアはウクライナで軍事特殊作戦を開始した
 
19.「●●はロシア/プーチンと交渉すべきである」
・ウクライナはクレムリンと交渉する必要がある
・米国と西側諸国はプーチンと交渉すべきだ
・EU はウクライナに交渉を促すべきである
・世界はプーチン大統領と交渉すべきである
・世界はプーチンと交渉する必要がある
・ウクライナはロシアと交渉しなければならない、さもないとその領土をすべて失うことになる
・ウクライナはロシアと交渉すべきである
・世界はロシアに譲歩すべきである
・ゼレンスキーはウクライナでの戦争について謝罪すべきである
・ゼレンスキーはウクライナでの戦争について謝罪しなければならない
・プーチンの言うことを聞かなければ、ウクライナで何が起こっているのか理解できない
・ロシアとの協力が必要である
・世界はロシアに協力すべきである
 
20.「●●はロシア/プーチンに非難すべきでない」
・誰もプーチンを一方的に非難してはならない
・世界はロシア政府に感謝すべきである
・ウクライナ紛争の責任をロシアに負わせることはできない
・ロシアとヨーロッパの間のギャップを拡大する制裁は解除するべきである
・ロシアは戦争の責任を負わず、制裁を解除すべきである
・欧米はロシアに対する制裁を解除すべきである
・ロシアからの制裁を解除することが必要である
・ロシアに対する制裁は解除されなければならない
・ロシアから制裁を解除しなければならない
・ロシアに対する制裁を解除すべきである
・ロシアに対する制裁は罪のない人々を苦しめる
 
21.「●●はロシアを追い詰めるべきでない」
・米国とNATOはロシアの首を絞めようとしている
・米国とNATOはロシアの首を絞めようとしている
・ロシアへの制裁は逆効果である
・ロシアは核戦争に追い込まれている
・米国は、ウクライナを支援することで、ロシアを核戦争に誘導すべきではない
・米国はウクライナを助けることで、ロシアを核戦争に駆り立ててはならない
 
22.「クリミアはロシア領である」
・ロシアが攻撃した国はロシアの一部であった
・クリミアはロシア領である
・ヨーロッパ諸国は、クリミアが常にロシアの一部であることを認めている
 
23.「ロシアには言論の自由がある」
・ロシアには、一般に、アメリカや西側諸国とは異なり、言論の自由がある
・ロシアには一般にアメリカや西側諸国と違って言論の自由がある
 
24.「そのほか」
・ウクライナの名誉ある降伏は生命を救うために重要である
・ウクライナはドンバス侵入、クリミア奪取という戦力方式を検討していた
・欧州はウクライナ危機を容認した歴史的過ちを認めるべきである
・ウクライナ危機はヨーロッパの自治を脅かす
・EUは戦略コンパスとウクライナでの戦争に勝つという狂った考えを捨てるべきだ
・米国とヨーロッパは、ロシアとは異なり、ウクライナの平和を望んでいない
・ウクライナの EU 加盟は狂気の沙汰である
・ロシアは引き下がらないだろう
・ウクライナで内戦が続いている
・ウクライナ・ロシア危機
・ウクライナ・ロシア危機
・アメリカ人は、「民主主義」のために無駄な金を支払っている
・ウクライナは戦争で有罪になる

最後に、本格的な分析を行うためには、重複偽情報の解消、「そのほか」の内容の再検討、そもそも大テーマ分類の再検討等の作業が必要になるが、この一覧を見ているだけでも(人によっては)かなり楽しめると思われるので(あまりいないか)、繰り返しになるが、準備段階におけるデータであるが、速報的にここに公表しておきたい。

 

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