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意味と無意識

17時、やっと家に帰れる。駅に向かう途中にはきらびやかなネオンや看板がうるさいほどに輝いている。

電車の中は人という人で埋まり返り、僅かな隙間はデカデカとした文字で装飾された中吊りに占領され、目のやり場に困る。そんな時はきまって液晶か暗闇の中に広がる紫とも緑ともつかないもやの中に自己を溶かし込む。

やっとエントランスが見えた。横には正方形の文字盤が配置され、透明な2枚のガラスの向こうを抜けて鈍い色の大きな箱に乗ると、もう後はこっちのものだ。

いつものように靴を脱ぎ、フローリングを滑るように移動して、テレビのスイッチを入れる。

ゲーミングチェアに体を沈み込ませテレビと対峙する。頭がぼーっとして、いつのまにか周りの景色は消えゆき、じぶんの世界がたちのぼってくる。

その世界に住人はいない。自分すらもいない。そんなからっぽの世界が妙に心地よく、魂がデジタルに分解されテレビの画面に吸い寄せられる。

テーブルの上に置いてある小さな液晶が小刻みに震え、けたたましい音を奏でる。

ふっと周りの風景が立ち戻る。

僕はまた液晶に自己を溶かし込む。

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