奈良の薬草と薬膳(さとたけ)

奈良の薬草好き、サトタケです。「奈良の薬草と薬膳」というコミュニティ運営、「コトリの薬…

奈良の薬草と薬膳(さとたけ)

奈良の薬草好き、サトタケです。「奈良の薬草と薬膳」というコミュニティ運営、「コトリの薬草珈琲店」という小説の執筆、その他薬草関係のイベントなどをプライベートで行っています (^^)/

マガジン

  • 小説:コトリの薬草珈琲店

    植物の言葉が分かる主人公・琴音が、時間の荒波の中で見出した“幸せ”とは?奈良の小さな薬草珈琲店で描かれる現代ファンタジー。奈良・歴史・薬草・コーヒーがお好きな方々に届けたい物語。

  • 奈良の薬草と薬膳 あれこれ

    「奈良の薬草と薬膳」に関する最新トレンドをお届けします。奈良が好きな人、薬草で美しく健康になりたい人、薬膳料理を食べるのがお好きな人は、ぜひご覧ください (^^)/

最近の記事

小説:コトリの薬草珈琲店 4-3

 17時、フェスが終了する頃には周囲も薄暗くなりはじめ、肌寒さが増してくる。さて、さっさと片づけて帰ろうと思っていたところ、数人の男性が集まって話をしているのが琴音の目に入った。クラフトビールのオーナー、ジビエ料理のオーナー、そして、県職員の岡本さんだ。同じ奈良県内で活動している人としてSNSではよく見かける顔だったが、リアルでも挨拶しておこう。そう、琴音は考えた。 「真奈美さん、ごめん、ちょっとあちらに挨拶してきます」 「ん?あの人たちね。了解〜。片づけ、進めとくね」 「

    • 小説:コトリの薬草珈琲店 4-2

       開場早々、会場内の一番目立つ場所に設置されている有名シェフのブースには列ができ始めていた。しかしその他の大半の客は、何か美味しそうなものはないだろうかと物色しながらブラブラと彷徨っている。その中で、琴音のブースに向かって、迷わずまっすぐ進む人影があった。 「琴音さん〜、ご無沙汰していま~す!あ、真奈美さんも!お久しぶりです~」 「え?・・・あれ、咲ちゃん!久しぶり~」 「まぁ、咲ちゃん、奈良に遊びに来たの?」  小野寺咲(おのでらさき)。ときじく薬草珈琲店が開店してから半

      • 小説:コトリの薬草珈琲店 4-1

        4章 奈良のうまいもの 朝の8時。一部の照明だけをつけた店内で琴音とバイトの佳奈の母、真奈美がせわしなく作業を行っている。真奈美はいつもは昼間だけ店の手伝いをしているのだが、今日はフードフェスの手伝いで終日、琴音に付き合う予定だ。娘の佳奈はかねてからの予定があったようで、本日は非番となっている。  カセットコンロ、ケトル、コーヒードリッパーが3つ、フィルター多数、紙コップも多数。そして、主役となるコーヒー粉+薬草(粉砕済)。今回は定番のクロモジ珈琲に熊笹サンザシ珈琲と棗ショ

        • 不老長寿をもたらす「大和橘」が、美食と美白の果実だった件

          大和橘(やまとたちばな)という薬木をご存じでしょうか?古事記や日本書紀にも記載のある日本古来の柑橘類で、「左近の桜、右近の橘」で知られるようにひな祭りのモチーフとなっていたり、500円玉に大和橘の葉が描かれていたりと、日本文化とも密接な関わりのある植物です。金柑と同じくらいの大きさで、ちょっと皺くちゃで、キュートな果実。 しかし近年、大和橘は絶滅危惧種となっていました。それを2011年に発足した「なら橘プロジェクト推進協議会(代表:城 健治さん)」が精力的に盛り上げた結果、

        小説:コトリの薬草珈琲店 4-3

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        • 小説:コトリの薬草珈琲店
          12本
        • 奈良の薬草と薬膳 あれこれ
          8本

        記事

          小説:コトリの薬草珈琲店 3-3

           大和西大寺駅の商業施設は「ならファミリー」と呼ばれていて、近鉄百貨店・イオン・専門店街の3エリアで構成されている。開業は1972年と古いが、改装を重ねながら、今現在も奈良県民の買い物先として賑わっている。同施設の地下には奈良県の特産品コーナーがあって、そこが琴音の目的地だ。  大和西大寺駅の改札を出た辺りで、琴音は凛の様子が少しおかしいことに気づいた。 「ねぇ、凛ちゃん、大丈夫?疲れちゃった?」 「あ、バレちゃったな。ちょっとお腹が冷えてしまって」 「そう・・・ごめん、公

          小説:コトリの薬草珈琲店 3-3

          小説:コトリの薬草珈琲店 3-2

           四人は垂仁天皇陵から少し離れた場所にある小さな公園へと移動することにした。陵の近くには落ち着いてコーヒーを淹れることができる場所がなかったためだ。  移動の途中で、川原君が黄色い果実のなる木を見つけた。「これって・・・」 「そうです。それが橘っすよ」佳奈がキリッとした笑顔で補足する。 「橘って準絶滅危惧種なんですけど、奈良の有志の方々が頑張って育てていて、神社とか、色々な場所にも奉納されたりしていて。そういった努力の結果、私たちも橘の薬草珈琲を楽しめるようになってきたんで

          小説:コトリの薬草珈琲店 3-2

          小説:コトリの薬草珈琲店 3-1

          3章 田道間守の橘 11月の晴れた日曜日、昼過ぎ。いよいよ冬服が欲しくなるような肌寒い空気の中、琴音は近畿日本鉄道・西ノ京駅の駅前でスマホを触りながら時間をつぶしている。駅前と言っても都会の駅とは違い、目の前にはすぐに大きな寺が見えている。創建が680年、奈良時代の初期に平城京に移転された薬師寺だ。その東塔は奈良時代から残るもので、国宝に指定されている。  この薬師寺のあるエリアは、ならまちからおよそ4kmほど西に位置している。奈良朝の中枢区域である平城宮から見ると、ならま

          小説:コトリの薬草珈琲店 3-1

          温泉街の胃腸薬 @洞川温泉街

          奈良県天川村の洞川温泉街(どろがわおんせんがい)をご存じでしょうか。 以下、サトタケの小説「コトリの薬草珈琲店」、第2章-2の冒頭でその温泉街について描写していたので、まずはこちらをご紹介します。  洞川温泉街(どろがわおんせんがい)は、大峰山をはじめとした山岳で修験者が修業を行うための入り口の宿場町として、1300年前から栄えていた。もっとも温泉が見つかったのは昭和の時代ではあるけれど、綺麗な水が湧き出る場所としても有名でその水は日本名水百選にも選ばれている。愛称は「ご

          温泉街の胃腸薬 @洞川温泉街

          小説:コトリの薬草珈琲店 2-3

           バイトの佳奈と佳奈ママが準備を進めておいてくれたお陰で、なんとか11時の開店に間に合った。それから4時間、15時まで全力疾走。ランチ客とカフェ客をあわせて30名+α。まぁ、平日としては上々だろう。  15時になると、佳奈は「貸し切り」の看板を店先に掲げた。本日は17時から店内で取材なのだ。取材のスタッフが来店するまで、琴音と佳奈は店の整理整頓を行った。軽く掃除をするつもりが、カウンターの細かいところ、薬草棚の後ろの部分など、いつもは掃除できていないところまで気になってしま

          小説:コトリの薬草珈琲店 2-3

          小説:コトリの薬草珈琲店 2-2

           洞川温泉街(どろがわおんせんがい)は、大峰山をはじめとした山岳で修験者が修業を行うための入り口の宿場町として、1300年前から栄えていた。もっとも温泉が見つかったのは昭和の時代ではあるけれど、綺麗な水が湧き出る場所としても有名でその水は日本名水百選にも選ばれている。愛称は「ごろごろ水」だ。  木造二階建てのお宿が多く、夜には一階と二階に灯された明かりが狭い道の両側から漏れ出てきて、情緒豊かな温泉街の様相を醸し出す。随所に備わっている提灯も、その空気感によく馴染んでいる。夜

          小説:コトリの薬草珈琲店 2-2

          小説:コトリの薬草珈琲店 2-1

          2章 奥大和のクロモジ  琴音の薬草珈琲店で使う薬草のほとんどは、農家から直接、もしくは間接的に仕入れている。自宅の庭で採れた薬草は一部の商品にしか使わない。そして、自然の中で採れる”野草”においては、使わないと決めている。それは、自分の店が不特定多数の客が来る飲食店であり、できるだけ品質の安定した食べ物・飲み物を提供したいからだ。  また、琴音には野草を使わない「個人的な」理由もある。人間の手で育てられていない野草は「何を言っているかが分かりづらい」のだ。例えば、道端にあ

          小説:コトリの薬草珈琲店 2-1

          小説:コトリの薬草珈琲店 1-3

           実は、琴音にはちょっとした秘密がある。いや、特に隠していないから秘密ではないのだけど、誰も信じないので勝手に秘密のようなものとなっている。それは、=植物の言葉を感じ取れる=というものだ。  そう聞くと、いやいや、植物を育てている人の中には植物の気持ちが分かる人も結構いるのでは?と反論したくなるかもしれない。でも、琴音の能力はそれとは少し違っている。琴音は、植物の気持ちを“言葉として感じ取れる”のだ。  琴音が植物に意識を向けると、植物が放つ淡い輝きを目で見れるようになる

          小説:コトリの薬草珈琲店 1-3

          小説:コトリの薬草珈琲店 1-2

           乾燥したクロモジの葉1.0gと中煎りのコーヒー豆15gをミルに入れ、重ねたカバーの上から力を加える。賑やかな音を立てながらコーヒー豆とクロモジ葉は細かくなり、回転しながら一体化していく。透明なカバーを持ち上げると、コーヒーの茶色に薬草の緑が程よく混じりあった柔らかな堆積物が見る目を癒してくれる。挽きたてのコーヒー豆と薬草の香りのマリアージュは、薬草珈琲を淹れる者でしか楽しめない秘密のアロマとなっている。  ならまちに店を構える薬草珈琲店の店主、今里琴音は、フィルターをセッ

          小説:コトリの薬草珈琲店 1-2

          小説:コトリの薬草珈琲店 1-1

           夜、幾千の灯が輝く光景を目の当たりにしたとき、人は何を感じるのだろうか。美しいとため息をつく人。好きな人とのロマンスを思い出す人。ノスタルジーに浸る人。太古の昔から流れる血が沸き立つような人がいるかもしれない。  しかし、それが、人外の者と心の通じ合うような人間であったら、どんな風に見えるのだろう。 1章 ならまちの薬草珈琲店  近鉄奈良駅。東大寺や鹿で有名な奈良公園へのアクセスのために数多くの観光客が利用する、奈良の主要駅の一つ。その駅から南へ10分から15分ほど歩い

          小説:コトリの薬草珈琲店 1-1

          ヘルス&ビューティーブランドTHERAの旗艦店が奈良にオープン

          2024年5月末、ヘルスアンドビューティーブランドTHERAさんが、フラッグシップ店を奈良きたまちにオープンされました。 近鉄奈良駅の南側、東向き商店街の界隈はいつも観光客で混みあっているのですが、その北側に位置する奈良きたまちは少し静かで上品なエリア。そんな場所にふさわしい新店舗のオープンです。サトタケもオープニングイベントに参加してきました。 店内は物販コーナーとサロンコーナーに分かれていて、物販コーナーではTHERAの商品を手に取って購入することができます。サロンコ

          ヘルス&ビューティーブランドTHERAの旗艦店が奈良にオープン

          奄美大島のハーバリスト、石丸沙織先生の出版記念講座 @ハーブ工房ほうざん

          書籍「ハーブレッスンブック」を出版された石丸沙織先生をハーブ工房ほうざん(生駒)にお招きして、1Dayセミナーを実施。サトタケはスタッフ(記録係)として参加しました。沙織先生は奄美大島で活躍されているハーバリストです。 うん。薬草もりだくさんの一日、楽しかった~。 講座は先生の書籍を使いながら進行。 ウェルカムドリンクは、リンデン・オレンジピール・ジンジャーのビネガードリンク。 講座のスタートは、佐藤久見子(サトタケの母です(^^)/)によるハーブ園のツアー。ここで、

          奄美大島のハーバリスト、石丸沙織先生の出版記念講座 @ハーブ工房ほうざん