見出し画像

温泉街の胃腸薬 @洞川温泉街

奈良県天川村の洞川温泉街(どろがわおんせんがい)をご存じでしょうか。

以下、サトタケの小説「コトリの薬草珈琲店」、第2章-2の冒頭でその温泉街について描写していたので、まずはこちらをご紹介します。


 洞川温泉街(どろがわおんせんがい)は、大峰山をはじめとした山岳で修験者が修業を行うための入り口の宿場町として、1300年前から栄えていた。もっとも温泉が見つかったのは昭和の時代ではあるけれど、綺麗な水が湧き出る場所としても有名でその水は日本名水百選にも選ばれている。愛称は「ごろごろ水」だ。

 木造二階建てのお宿が多く、夜には一階と二階に灯された明かりが狭い道の両側から漏れ出てきて、情緒豊かな温泉街の様相を醸し出す。随所に備わっている提灯も、その空気感によく馴染んでいる。夜には浴衣でブラブラと歩きたくなる街並みだ。

 この温泉街にはもう一つの特徴がある。胃腸薬で有名な陀羅尼助(だらにすけ)を購入できる店がいくつもあることだ。陀羅尼助は役行者である役小角(えんのおずぬ)が1300年以上前に生み出した胃腸薬で、薬木であるキハダが主原料として使われている。関西ではなじみ深い胃腸薬だ。昔ながらの陀羅尼助のお店に入ると、おばあちゃんと楽しくお話をしていたと思えば陀羅尼助を購入して店を出ていた、なんてこともあったりする。


実際の街並みはこんな感じです。夕涼みに気持ちよく散歩したくなる街並み。歴史的な景観を形作る素敵な建物の群。この街並みは、文化庁の日本遺産ポータルサイトにも掲載されています。

そんな洞川温泉街に陀羅尼助のお店が何件もあります。紆余曲折があって、これらのお店の陀羅尼助を受託製造しているメーカーは1社だけらしいですが(すなわち、中身は同じ)。

陀羅尼助の主原料である黄檗(おうばく)はミカン科のキハダという薬木の内皮にあたります。主成分であるベルベリンが胃腸の調子を整えてくれるんですが、その黄檗、めっちゃ苦い(笑)。※キハダについて詳しく知りたい方は、ポニーの里さんのサイトをご覧ください。

陀羅尼助のキューピーちゃんや、陀羅尼助Tシャツ(右の写真の上側)も売られていたり。ちょっと可愛い。

以上、とても簡単ではありますが、洞川温泉街と陀羅尼助のお話をさせていただきました。

・・・あ、そうそう。そのエリアから車で30分ほど行った場所に、「天然薬湯センター みずはの湯」という温泉があって、薬湯を楽しめるんですよね。川沿いの気持ちの良い露天風呂なのですが、別の記事で紹介した大和当帰などを使った薬湯で心身を整えられますよ。

写真は「みずはの湯」様のサイトより

洞川温泉街の近くには鍾乳洞があったりとか、小説でも紹介している「ごろごろ水」という名水があってそれをお土産に持ち帰ることができたりとか、色々と楽しめます。

みなさんも、洞川温泉街に行ってみてはいかがでしょうか。

洞川温泉ビジターセンターへのアクセス情報
住所:奈良県吉野郡天川村洞川13-1

公共交通の場合、近鉄吉野線「下市口駅」から奈良交通バスで約1時間「洞川温泉」下車。車の場合、名阪国道「針IC」より約2時間。

★英文サイトはこちら(Medium)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?