大病体験記 第1章「心地よい生」05
ども、ならなすおです。
やっと大病体験記の続きが書けたんで公開します。
連載全体は、私のマガジン「大病体験記」(無料)に置いているんで、前の話を先に見たい、という人は、そっちから見てください。
連載をやっている人でマガジンを使ってない人、「使ったら読みやすいのになー」とか思います。
読み飛ばしたりして、分かんなくなったりするじゃないですか?
マガジンにしといてもらえると、スキマークで、どこまで読んだかすぐわかります。
さて、私の小説ですが、新聞の連載小説を意識して、各話1,000字程度にしています。
気軽に読んで頂けると嬉しいです。
と、いう事で、前置きが本編より長くなりそうなので、そろそろスタートです。
ここから本編
そのゆったりと流れる時間に身を任せながらも、彼はやはり、次の仕事について考えざるを得なかった。
中小企業の応援という、これまでの職業人生活の大部分を費やしてきた業務は、続けていきたい。中小企業診断士という国家資格も取得していた。
これまで組織の一員としてやってきたことを、独立してやっていけばいい。
中小企業の経営サポート、事業計画作成支援、キャリア後半で従事したIoT、ロボットなどのDX導入支援など、ニーズのありそうな「商売のタネ」はいくつか持っていた。
しかしながら、過去の職種ほど安定的に稼いでいく自信もなかった。
中小企業診断士は、税理士、社会保険労務士、司法書士、行政書士などの他の士業と違い、独占業務がない。企業からすると「使わなくてもいい士業」だ。故に、自分が提供できる価値を、自ら分かりやすくアピールしていかなければ、クライアントは開拓できない。
家族が生活する足る収入、娘を将来大学に送り出す収入を稼ぎ出すのは、簡単ではなさそうだ。
確たる自信もないのに、安定収入を捨て、無職へと転じた彼。
第三者がみれば、「変な生き方」なのだろう。
だが、妻とは、互いに生き方について、暗黙の合意があった。
「どちらかに専ら我慢を強いるような真似は、お互いにしない。」
双方がそれぞれの人生の主役だ。
互いの人生の犠牲になるべきではない。
お互いが自己実現を図り、相手のそれを尊重し、可能な限り妥協の小さい合意を積み重ねながら共に生きていく。
彼は妻に、「深夜まで働く夫のために、夕食を作って待っている事」を求めなかったし、妻も彼に「一家を支える存在として、安定した職で定年を全うする事」を求めなかった。
子育ては、夫婦が共同した「自己満足」だ。
彼らは、決して子育てをするために生まれてきたわけではない。
ただ、好きだから、好きなように子育てをしている。
その行為に子が恩を感じる必要はないし、彼らも見返りなどもちろん求めない。
息子と娘には、それぞれの人生があり、自己実現がある。
家族が、等しく自己実現を目指していく。
彼らは、そんな家族像を共有していた。
既に大学生となり家を出た息子への学費、仕送り資金は既に貯めてある。
娘の大学進学までは、あと6年ほどあるから、まぁ何とかなるだろう。
退職という彼の暴挙は、ぎりぎり家族に我慢を強いない選択として、受け入れられていた。
「さて、とはいえ中小企業診断士だけでは心許ないな、、、」
そんな風に思っていた矢先、スマホからfacebookを除くと、役所時代のY先輩から、メッセージが入っていた。
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