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ナポリタカオの小ネタ劇場

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ナポリタカオの小ネタオリジナル作品をまとめたマガジンです。登場人物のN氏とは著者・ナポリタカオ本人のことです。
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2021年6月の記事一覧

深夜の百貨店・笑いの吸血鬼とネズミランプ

※前回の記事から続いています。 前編に引き続き、虹倉きりさんに「noteを朗読する企画」で朗読していただきました。音声もお楽しみくださいね。 虹倉きり@note朗読 深夜の百貨店・笑いの吸血鬼とネズミランプ 作:ナポリタカオ 時間5分21秒 【note版】 【Youtube版】 深夜の百貨店・ネズミランプとは現在の百貨店は最新のハイテク装備が施されていると思うが、ナポリ氏がガードマンをやっていた頃のシステムは頼りないものだった。 夜間のフロアに不審者がいれば、店内

深夜の百貨店・笑いの吸血鬼と新人ガードマン

この記事が虹倉きりさんの「noteを朗読する企画」で取り上げられました。読むより聴いたほうが迫力満点です。物書きナレーター、虹倉きりさんの見事な朗読をお楽しみくださいね。 虹倉きり@note朗読 深夜の百貨店・笑いの吸血鬼と新人ガードマン 作:ナポリタカオ 時間6分47秒 こちらがYouTube版です。 深夜の百貨店、懐中電灯を片手に歩くガードマンナポリ氏が22歳で放送作家の弟子になったばかりの頃、当然ながら仕事はまったくなく、アルバイトに頼る日々を過ごしていた。 そ

カラオケボックスで暴走するオヤジ

持ち歌に起こった、露骨な嫌悪感先日、地元の小さなカラオケボックスがいつのまにか消えて駐車場になっていた。今やカラオケボックスに行く人も少なくなってしまったのだろうか。 これはカラオケボックス全盛時代のお話。ある意味ではいろんな人に思い当たる、カラオケあるあるかもしれない。 その夏、赤坂において、N氏も出席して十数人によるカラオケ大会が開催されていた。 全員が持ち歌を歌い狂ったわけだが、宴もたけなわというその時、事件は起きた。N氏が『朝日を見に行こうよ』を歌い終わったとき

大人買い、涙の後悔

夏服の大人買いをするために丸井のショップへ N氏が今より10キロ以上太っていた頃。バーゲンで気が大きくなり、よせばいいのに夏服の「大人買い」を決行した日の話である。 N氏はその日、バーゲン中の丸井のショップで半袖シャツを買おうと決めて出かけた。 当時、N氏はポールスミスの色合いが好きで、この日はボタンのないシャツが気に入り、店員に試着を申し出たのだ。 そこまでは良かったのだが、首を通した瞬間、そのMサイズがパツンパツンだと気づいた。 慌てて試着室の外に飛び出し、叫ぶN

妙な日本語を覚えさせられる白人女性

白人女性にへんな日本語を教える女子大生達 数年前、N氏は東海地方から東京駅へ向かう、高速バスの車内にいた。前のほうの座席なので、大きな窓から景色が見渡せて快適だ。 バスは東名高速道路から首都高へ入るあたりである。 女子大生風の3人組が同乗していて、日本人2人(A子・B子)がさっきから同じくらいの年齢の白人女性に怪しげな日本文化を教えている。 A子「A Happy New Yearはねえ~日本語で言うと」 B子「あけおめ!」 白人「アケオメ?」 A子「そう、アケオメ!キャ

ラーメン屋の噂話・魑魅魍魎の館

店主と妻の事情※前回の記事から続いています。 このオヤジ、オレが帰ったあとも噂話するんだろ?きっとそうだ。イヤなヤツだな。 ささやかに生きてる親子。彼らがどんな悪いことしたって言うんだ。お前がツベコベ批判する立場にないはずだ。 たぶん、この店のラーメンはうまくない。いや、絶対まずい!うまくたって「まずい」と言ってやる。 そうだ、今からさっきの親子を追いかけて、「あそこのオヤジ、あんたらの噂話してるよ!」って、告げ口しちゃおうか。 興奮してしまった。話を戻そう。店主は

ラーメン屋の噂話・実況中継

閑散としたラーメン屋でなにかが起こる気配が何年も前のある日曜日、午後6時前後の出来事。 N氏は小田急線のある駅から調布市に向かって、自転車でラーメン屋を探索していた。 探していた近辺に店はなかったが、まもなく古い造りの店を見つけたので入ってみた。 「いらっしゃい!」 店主は60代前半くらいだろうか、妻らしい女性とふたりで店を切り盛りしているようだ。 カウンターに60歳前後のひと目で酔っているとわかるオヤジ。オヤジと大きく離れた反対側のカウンターの椅子にすわる。 混

包丁を持った男と遭遇!一対一の顛末

平日の真昼、包丁を持った男が訪ねてきたN氏は人生で一度だけ、包丁を持った男と遭遇したことがある。しかも、正真正銘、一対一で対峙したのだ。 とはいえ、今こうして記事を書いているのだから、命を取られたわけではない。そして、身体に何一つ傷がついたわけでもない。 それは、とある平日の昼間だった。コピーライターN氏は賃貸住宅の小部屋で、困り果てていた。 原稿の締め切り時間が迫っていた。なのに、最後のキャッチコピーがなかなか出ない。似たようなテーマの原稿が続くと、 キャッチコピーも

ナルシスト集団の恐ろしい話題

御胎内温泉健康センターに現れた角刈り・屈強な男達 今や、銭湯も沐浴ならぬ黙浴を強いられるようになったと聞く。すっかりサウナも行きにくくなってしまった。 これはコロナ登場はるか前、N氏の体重が70キロ以上あった頃のお話である。 冬のある日、N氏は静岡県御殿場市にある御胎内温泉健康センターにいた。悲劇はここで起きたのだった。 N氏が身体を流し、男湯のサウナに入ったときだ。 室内には誰もいなかったので「一人でゆったり入れる~!」とほくそ笑んでいたところ、数分後、角刈りの屈強

テーブルに乗った悪魔が起こした惨劇

洋風居酒屋で起こった悪魔の惨劇 N氏があの事件を聞いたのは、もう十以上年も前になる。 この話をしてくれた女性はいまだ独身だが、若くして部長職に出世したらしい。 その彼女から聞いた、新宿のある洋風居酒屋で起こった惨劇の一部始終である。彼女の言葉を借りて解説しよう。 「若い男が三人、テーブルで飲んでたのよ。年はまだ若かったの。20歳ちょっとかな。一人がだいぶ酔ってたんだけど、どうもその子が仕事のことかなんかで、ほかの二人にいろいろきびしく言われてたみたいなの。 そのうちに

突然、目の前を大名行列が横切るとき

社長の自虐ネタとはもう10年以上も前の冬の出来事である。だれに聞いてもあれ以来、こんな話を耳にすることはない。 コピーライターのN氏は広告関係の打ち合わせで、数人とプロダクションの社長である一升瓶太(仮名)に会った。当時、40歳前後に見えただろうか。 打ち合わせも終わり、一升が「まあ、一杯やりましょう」と言い出したので、メンバーはそのまま飲み屋に流れた。 最初はほがらかに仕事の話などをしていたのだが、 酒を飲むと一升はますます上手になり饒舌になり、自分のことを話し始めた

密室の高速バス・世代の断絶を実感した男

密室の高速バスに新展開。色めく叔父さん ※前回の記事から続いています。 N氏には乗客たちの心の声が聞こえてくる。がんばりなさい、叔父さん!もっと会話をスムーズに! これぞストックホルム症候群。しかし、響いてきたのは… 「山に藤の花がすごいなあ!ほら、あそこなんかすごいよ」 「……うん」 見たまんまじゃないか。ざっくりした風景批評。抽象的ボキャブラリー。思わず乗客たちも車窓を見るが、すごいというほど咲いていない……。 そして、また重い沈黙。まもなく、「次のサービスエリ

密室の高速バス・空回りの恐怖に脅える男!

高速バス車内で酒を飲む、気まずい二人これはコロナ流行前の高速バスにおける重大事件である。 N氏(著者ナポリ)は5月のゴールデンウィーク中、東京から東海地方へ向かう高速バスの中にいた。 車内はそこそこ混んでいる程度。その中に60代後半と30代前半くらいとおぼしき男性2人組はいた。 親しげな口調なので最初は親子かと思ったが、そうではなく二人はどうやら叔父と甥らしいことがわかった。 どういう事情なのかは知らないが、どうやら初めての二人旅らしい。最初から、ぎこちない雰囲気が漂

ニセ雅子さま、現わる!

ニコタマ、フタゴと呼ばれたきた街今回のお話の舞台は東京世田谷区二子玉川。通称ニコタマ。 N氏は以前、ここに住んでいたことがある。ここの住人は「どこに住んでるの?」と聞かれると、世田谷区とは言わず「ニコタマ」、あるいは「フタゴ」と答える場合が多い。 世田谷区が広すぎるために「世田谷区のどこ?」という追加質問を受けることも多く、めんどくさいので返答を一度で済ませたい。 しかし、どこかで二子玉川のブランド名をちょっと言いたいという心理もある。 これは横浜に住んでいる人が、同