テーブルに乗った悪魔が起こした惨劇
洋風居酒屋で起こった悪魔の惨劇
N氏があの事件を聞いたのは、もう十以上年も前になる。
この話をしてくれた女性はいまだ独身だが、若くして部長職に出世したらしい。
その彼女から聞いた、新宿のある洋風居酒屋で起こった惨劇の一部始終である。彼女の言葉を借りて解説しよう。
「若い男が三人、テーブルで飲んでたのよ。年はまだ若かったの。20歳ちょっとかな。一人がだいぶ酔ってたんだけど、どうもその子が仕事のことかなんかで、ほかの二人にいろいろきびしく言われてたみたいなの。
そのうちにその子は『わかったよ、うるせえな!』とかなんとか言って、テーブルの上に急に立ちあがっちゃったのよ。
なにするんだろう?って、私たちポカンと見てたら、いきなりファスナーを下げて……」
排泄作業を始めたのだ。半分安心してほしい。彼がしたのは『放水管』による排尿だけである。
「もう驚いちゃって!お客さんは悲鳴をあげるわ、どなり散らすわ、だけど汚くてだれもそばに寄れないわで、店内が大パニックよ。
だってそいつ、よりによって360度回転して撒き散らしたんだから!」
360度の放水作業を終えた男は、そそくさと店を出ていってしまった。そして、仲間の男たちも金を置いて店を逃げ出したのである。
ドブに咲く一輪の花
気の毒なのは店のスタッフである。客が蜘蛛の子を散らすように帰ってしまった店内で、全員が素手で雑巾を持ち、あたり一面、びしょびしょのテーブル、椅子、床を拭いたのだから。
悪魔が起こした悪逆非道な事件のなかで唯一、ほっとできるエピソードもある。
さすがに良心の呵責にたえかねたのか、仲間のひとりがもどってきて、友人の非礼を謝罪しながら掃除に参加したという。
この一部始終を見ていて、帰らなかった彼女はさすがである。
しっかり手を洗ったとはいえ、汚れものを扱った店員が自分の酒や食事を運んでくるのを想像すると、N氏なら店にとどまるのをためらうだろう。
さすが、部長に出世する人間は豪胆だ。
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