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[3−27]最強のぼっち王女がグイグイ来る! オレは王城追放されたのに、なんで?

第27話 お前なら、火中の栗くらい拾えそうだな

 アルデオレは、ティスリが気を使ってくれているとはちょっと信じられなかったが……オレがそんな戸惑いを感じている内に、昼休憩は終わってしまう。

 村の若い連中とティスリは、一通りの面通しを終えて、あとはナーヴィンを中心に雑談をしているようだが、そこにウルグが声を掛けた。

「ほーれ、休憩時間はもう終わりじゃぞ。自分の仕事に戻れ」

 すると全員がブーイングを上げる。なんだが学校のノリそのまんまだな。卒業してけっこう経つというのに。

 そんな感じでオレが呆れていると、ティスリがウルグを見た。

「ウルグさん、午前中の農作業で、実は提案があるんです。もしよろしければ、彼らにもその提案を見せたいのですが」

 ティスリにそう言われ、ウルグは首を傾げた。

「別に構わんが、提案とはなんじゃ?」

「午前中に農作業をやりながら、ちょっとした魔法を作りまして」

「魔法を作った? さっき使ってくれたヤツではないのか?」

「あれは農作業用の魔法ではありませんでしたので、だから専用の魔法を作りました。その魔法を皆さんで見て頂いて、より改良を加えたいのです。上手くいけば今後の作業がラクになると思います」

「本当か? ならばぜひ見せてほしいぞ」

 ということでオレたちは、ナーヴィン達共々、畑に戻ることになった。

 ティスリは、魔法の説明をウルグさんにしながら歩いて行くので、その少し後ろを付いていく。魔法や農業の説明を聞いても分からないしな。

 するとナーヴィンがオレに声を掛けてくる。

「オレ、魔法を見るなんて初めてだぞ」

「そりゃそうだろうな。衛士をやっていたオレだって、滅多に魔法は見られなかったんだから」

 オレがそう言うと、ナーヴィンが感心しながら言ってくる。

「それにしてもティスリさんはすごいな。魔法まで作れるなんて」

「まぁなぁ……」

 そもそもの話をすれば、農作業をやりながら、頭の中だけで魔法を開発するなんて、魔法の研究者をやっている人間だって出来ないと思うが……

 ティスリの天才ぶりをナーヴィンに伝えたら、ますます興味を持たれてしまうだろうからオレは黙っておく。

「にしてもアルデより強くて、政商の娘で魔法士で、それでいてあんなに美少女で……完全無欠じゃね?」

「そうだなぁ……」

 それを補って余りあるほどに気が強くて生意気なのだが、前を歩くティスリに聞かれてもまずいのでオレは言わないでおく。

「それでいて、性格もおしとやかで上品で気品に満ちているし。オレたちと同じ平民だなんて思えないよな」

「あぁ………………」

 コイツはティスリの一体何を見ているのやら?

 オレは、ティスリの性格やこれまでの所業を洗いざらいぶちまけたい衝動に駆られるも、すぐ後ろにユイナスが歩いているのでかろうじて堪える。

「なぁアルデ。ティスリさんの護衛、オレと変わってくれない?」

「あのなぁ……お前は戦えないだろ」

「じゃあオレを追加ってことで。どうせお前のことだから、ティスリさんの世話は出来ないんだろ? それをオレがやるから」

「そもそも男が女性の世話なんて出来るか。それにティスリは、侍女とかいなくても自分一人でなんでもやれるぞ」

「じゃあ何でもいいから、ティスリさんの旅にオレを連れていってくれよ。もともとオレだって村を出るつもりだったし」

「ダメに決まってんだろ」

「なんでだよー?」

「お前を連れてったところで、なんのメリットもないからだよ」

「それをいうならアルデだって同じじゃん。彼女、自分の身は自分で守れるんだろ」

「それは………………まぁ、そうかもしれないが……」

 そう言われてみれば、守護の指輪一つとっても、ティスリに護衛なんてまったく必要ないだろう。

 強いていえば平民の文化や慣習に疎いくらいだったが、ここ数カ月の旅でそれも理解しただろうし。となると従者の役割も必要なさそうだ。

 …………あれ?

 オレってもしかして、たいして仕事してなくない?

 ティスリといると、王城半壊したり、領主を逮捕したり、たぶん明日には不正を働く役人を縛り上げに行ったりするのだろうけれど、だから字面だけ見ればとんでもない事態に巻き込まれているわけだが、ティスリがいればなんとでもなるし。

 となると、それでも旅のお供が必要ってことなら……別にナーヴィンでもいいってことになるわけで……

 ティスリって、なんでオレを雇ってるんだ……?

「おーい、おーいアルデ。人の話を聞いてるのか?」

「え、あ……な、なんだよ」

 名前を呼ばれて我に返ると、ナーヴィンが話を続けてきた。

「だから、オレを連れていったら得られるメリットを説明しただろ」

 ぜんぜん聞いてなかったが、いずれにしろ、ナーヴィンを旅に連れて行くメリットなんてゼロに変わりないが……

 言い出したら引かないナーヴィンは、放っておいたらティスリに詰め寄って、せっかく猫を被っているというのに、しつこく絡んだ末に本気で怒らせかねない。

 そうなると、やっぱり後が面倒だ。

「あー……ならちょっとした試験をして、それをパスできるなら考えてもいい」

「試験? どんな試験だ?」

「まぁティスリにも聞いてみないとだが、明日あたりに、オレたちはちょっと野暮用で町役場にいくからな。もしそこで功績を挙げられたなら、旅の同行を考えてもいいぞ」

「町役場って、村長ミズーリさんが納税しに行ったりしている場所のことか?」

「ああ、そうだ」

「お貴族様の詰所みたいな場所に、なんの用があるんだよ」

 ぽかんとするナーヴィンにオレはニヤリと笑う。

「付いてくれば分かるさ。それとも、貴族相手の面倒事はイヤか?」

「と、とんでもない!」

 ナーヴィンは、勢いよく首を横に振る。

「ティスリさんと一緒にいられるのなら、例え火の中・水の中だ!」

「よく言った。お前なら、火中の栗くらい拾えそうだな」

「………………え?」

 オレがそう言うと、ナーヴィンはぽかんとして言ってくる。

「いやあの……本気で火の中に飛び込むわけじゃないよな?」

「当たり前だろ。あくまでも例えだ例え」

 ナーヴィンがちょっと狼狽うろたえていると、オレたちはミアの麦畑へと戻ってくる。

 するとティスリが振り返り、みんなに言った。

「それではこれから、刈り取り魔法の実演をしてみますので、皆さん、わたしの後ろで確認してみてください」

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