[4−2]最強のぼっち王女がグイグイ来る! オレは王城追放されたのに、なんで?
第2話 果たして扉は、何事もなく開いていき──
アルデは二階に上がり、ティスリの部屋をノックしたが反応はなかった。だから声を掛けてみる。
「おーいティスリ、起きてるのか? 昼食が出来たんだけど、どうする?」
しかし声を掛けてもティスリから返事はなかった。
これは……まだ寝ているのか、二日酔いがツラくて声も上げられないのか。
あるいはオレたちに合わせる顔がないのか……
まぁいずれにしても、やっかいなことに変わりはないけどなぁ。
「ティスリ、もしかして体調が悪いのか? 水差しを持ってきたから、ちょっと入るぞ、いいな?」
扉を開けた途端、爆発したり電撃が放たれたりなんてしないよな……? ここ、オレんちだし……
自分が黒焦げになったイメージが脳裏をよぎるも、身内しかいない我が家で、そこまでする必要があるはずもないので、オレは意を決して扉を開ける。
果たして扉は、何事もなく開いていき──
──窓辺に置かれたベッドには、まんまるになった掛け布団が乗っかっていた。
掛け布団が、まるで巨大なカタツムリのようになっている。ベッドの上には、丸まった布団のほかに何もないので、ティスリは布団の中にいるようだが……
「おいティスリ、どうした? やっぱり具合でも悪いのか?」
心配になったオレが声を掛けるも、ティスリは無反応だ。
「ティスリ、寝てるのか?」
オレはベッドに近づき、丸まった布団をポンポンと叩いてみる。すると布団がビクッとなったから、ティスリは確かにこの中にいて、目も覚めているようだが……二日酔いが酷くて起き上がれないのかもな。
「水差しとコップ、サイドテーブルに置いておくからな」
体調が悪いのに長話するのも悪いと思って、オレはすぐに引き返そうとしたが、そのとき。
布団の塊から細腕がにょきっと生えたかと思うと、オレのズボンが掴まれた。
「ん? なんだよ?」
なぜ掴まれたのか分からないオレはティスリに問いかけるも、ティスリはとくに反応を示さない。だというのにズボンの裾をギュッと握りしめたままだ。
「どうしてほしいのか言ってくれないと、オレも対処に困るんだが?」
と声を掛けてみてもやはり無反応だ。
このままでは埒があかないので、オレは布団を引っぱがすことにする。
「おーいティスリ、目が覚めてるなら、とりあえず顔を見せろよ」
そしてオレは布団を引っ張るが……
ん?
オレが布団を持ち上げようとした瞬間、オレのズボンを掴んでいた細腕が引っ込んだかと思うと、布団を押さえつけている。
どうやら布団を引き剥がされないよう、両手両足で押さえているようだ。
「……なんだ? 顔を見せたくないのか?」
イヤなら無理に起こそうとも思わないので、オレは布団から手を離すと、そのまま部屋を出て行こうとするのだが……
そうすると、またズボンを掴まれるのだ。
「……おいティスリ、いったい何がしたいんだよ?」
「………………」
「黙ってたら分からないだろ?」
「………………」
「なんとか言えよ、おーい?」
「………………」
いくらオレが声を掛けても、ティスリはだんまりのままだ。
ズボンの裾をしっかと握りしめたまま。
「はぁ……なんなんだよ、まったく……」
仕方がないので、オレは盛大にため息をついてから、ベッドサイドに置かれていた木製のスツールに腰を下ろそうとして──
──その瞬間。
「隙アリ!」
「あっ……!」
オレは勢いよく布団を持ち上げる。
こうしてようやく、オレはティスリの顔を拝むことに成功するわけだが。
「………………はいぃ?」
オレは思わず間抜けた声を出す。
布団の中に丸まっていたティスリは、どうせふてくされているか、怒っているかだと思っていたんだが……
なんでか涙目になっていた……!?
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?