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[4−28]最強のぼっち王女がグイグイ来る! オレは王城追放されたのに、なんで?

第28話 それはたぶんチョット違うんじゃないかな!

 実はティスリわたしも服の下に水着を着ていた、というか着せられたのですが……

 アルデのあんないやらしい視線を目の当たりにしては、水着になるなんて絶対できなくなりました!

 まったくアルデは!

 ミアさんの水着姿に見取れるとか、痴漢行為も甚だしい!!

 それは確かに、水着を着たミアさんは、同性のわたしでも惚れ惚れするほどの姿です! そこは認めましょう!

 例えるなら、著名な彫刻家が丹精込めて彫り上げた女性像のごときプロポーション。そんな身体に、露出が多いにも関わらずなぜか控えめに見える水色ワンピースの水着を着せたのなら、それは確かに美しくて見取れてしまうかもしれませんが──

 ──アルデが見ちゃ駄目なのです! 絶対に!!

 なぜなら!

 なぜならアルデは!

 えーと……なぜなら!?

 とにかく理由は分かりませんが駄目なのです!!

「それでオレらは……いつになったら目隠しを取れるのでしょーか……?」

 ということでアルデには(あとついでにナーヴィンさんにも)、フェイスタオルで目隠しをしておきました! もちろん、絶対にほどけないよう魔法でガッチガチに固定してあります!

 そんなアルデにわたしは言いました!

「この海にいる間中、ずっと目隠ししてなさい!」

「なんでだよ!? だったら水着をやめればいいだろ!」

「それでは泳げないでしょう!?」

「これじゃオレ達が泳げねぇが!?」

 そうして午前中は、アルデを目隠ししたまま海水浴なるものを楽しみました。

 もっとも、わたしは結局水着にならなかったので、素足で海水を感じる程度でしたが、それでも打ち寄せては引いていく波は新鮮でした。

 そんなことをしていたら、あっという間にお昼になったので、わたしたちは今、なぜかわざと古めかしく作られた木造オープンカフェで食事を待っています。もちろんお客さんはわたしたちだけで、働いているのはテレジア家の侍女達です。

 リリィが言うには、この建物は『海の家』というそうで、ひなびた感じが貴族の間でいま大人気とのこと。庶民的な佇まいなのに、貴族の間で人気というのも不思議なものですね。水着といい、流行とは何が広まるのか分からないものです。

「な、なぁティスリ……これじゃオレ達、メシも食えないんだが……」

 厨房からいい匂いが漂ってきてお腹が空いたのか、アルデが哀れみを誘う声を出してきます。

 ですが、いくらしおらしくしたってわたしは欺されませんよ!

「ふん、知りません」

 ということでわたしがそっぽを向いていると、アルデの隣に座るユイナスさんが、アルデに腕を絡ませながら言いました。

「だいじょーぶだよお兄ちゃん! わたしが『はい、あ〜ん』ってしてあげるから!」

「いやそれはいい。あと暑いからひっつくな」

「夏なのにお兄ちゃんが冷たい!」

「涼しくていいだろ?」

 などと兄妹の微笑ましいやりとりを見ていたら、ミアさんが言ってきました。

「ねぇティスリさん……そろそろ目隠しはいいんじゃないかな?」

「え?」

 意外なことを言われて、わたしが思わず聞き返します。

「ですがそれでは、またアルデのいやらし──」

「うん!? それはたぶんチョット違うんじゃないかな! 男の子ならある程度は仕方がないっていうか!?」

 再び真っ赤になるミアさん。どう見ても、恥ずかしさがまさっているように見えますが……

 そんなミアさんでしたが、はにかんだ笑顔で言いました。

「ほら、せっかくのバカンスなんだし。アルデにも楽しんでもらいたいかなぁって……」

「む……そ、それはまぁ……そうかもですが……」

 と、そこで「なぁみんな、オレのこと忘れてない……?」というナーヴィンさんのつぶやきが聞こえてきましたが、ユイナスさんの声に掻き消されました。

「わたし、はんたーい。お兄ちゃんは、ずっと目隠ししてればいいよ」

 予想外のその意見にわたしは首を傾げます。

「いいのですか? ユイナスさんは、アルデに水着姿を見せたかったものとばかり思っていましたが……」

 わたしが尋ねると、ユイナスさんは頬杖を付いて、ふてくされた感じで言いました。

「ふんだ。わたし以外の女に見取れるんだったら、見せない方がまだマシよ」

「ああ……そういうことですか」

 するとアルデは「いやだから、見取れていたわけじゃないんだが……」と見苦しくも言い分けしてきますが当然スルーです。

 いずれにしても、意見が二つに割れてしまいましたね。となると……一応、水着姿をしている最後の女性意見も聞きましょうか。

「リリィはどう思いますか?」

 するとさっきから、わざとらしいため息をつきまくっていたリリィが、覇気のない声で答えてきました。

「別にどぉーーーでもいいですわ……はぁ……お姉様の水着姿が見られると思ったのに……」

 最後のほうの台詞は聞かなかったことにしましょう。

 となると賛成1・反対1・棄権1ですか。

 もちろんわたしは反対ですし、となればやはり目隠ししたままとしましょう。

 わたしがその決定を言い渡そうとしたそのとき、アルデがわざとらしい声を上げてきます。

「あ、あ〜〜〜オレ、本当は……ユイナスの水着姿、見たかったんだよな〜?」

「えっ!?」「はぁ!?」

 ユイナスさんとわたしの驚く声が重なります!

「やっぱユイナスは、なんだかんだいってもカワイイカラナ〜? 水着姿、ミリョクテキだったのにナ〜? もう見られないなんて、ザンネンダナ〜〜〜???」

「ちょっとティスリ!」

 アルデの言葉を真に受けて、興奮で顔を赤くしたユイナスさんがわたしに言ってきます。

「はやく目隠し外しなさいよ!」

「で、でも、台詞が棒読みかつ疑問形ですし、これは明らかに──」

「あなた、わたしとお兄ちゃんのバカンスを台無しにする気!?」

「そ、そんなつもりはないですよ!?」

「解除しないっていうのならもうティスリとは──」

「わ、分かりました! いま魔法を解除しますから!」

 そうしてアルデ(とついでにナーヴィンさん)の目隠しがはらりと落ちます。

「ふぅ……ヒドい目にあった……」

「むしろそれはオレじゃね……?」

 盛大にため息をつくアルデの腕を、ユイナスさんがグイグイ引っ張って立たせました。

「ほらお兄ちゃん! 見て見て! わたしの水着姿!!」

「え、ああ……可愛い可愛い……」

「………………なんか、気持ちがこもってなくない? そんなことならまた目隠しを──」

「メチャクチャ可愛いぞ妹よ! さすがだな我が妹よ!?」

「でしょでしょ!? じゃあこのまま一緒に泳ぎましょう! この大海原を二人っきりで!!」

「いやオレ、腹減ってんだが……あ、ちょっと引っ張るなって!」

 ユイナスさんは、アルデの腕をグイグイ引っ張って、再び波打ち際へと行ってしまいました。

「……えーっと……」

 そしてわたしはミアさんを見ます。

「本当によかったんですか? 目隠しを外しても」

「え、あ、うん!」

 ミアさんは、未だ頬を赤らめながらも頷きます。

「こういうのにも慣れておかないと……ちょっとはユイナスちゃんを見習わないとと思ったので」

「ですがあの二人は兄妹ですし……」

「それでも……少しは見習いたいなと思うんです」

「そうですか……」

 ミアさんのそんな言葉に。

 わたしはどうしてか、複雑な気分になるのでした……

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