千葉県柏駅への特別な感情
味玉手揉み中華そば(醤油) にし尾@柏
千葉県柏市。
この街には何というか思い出したいような思い出したくないような特別な感情が横たわっている。
大学生の頃に付き合っていた彼女との思い出が地雷のようにそこかしこに眠っているのだ。言ってみれば、山崎まさよしにとっての桜木町が、僕にとっては柏みたいな感じだ。
ちょうど柏に高島屋ステーションモールというデパートができたばかりの頃で、車で買い物やご飯食べるためにちょくちょく行った。
久しぶりに柏へ行く用事があり、駅へ降りる。
しかし、そこは僕の知っている柏ではなくなっていた。ステーションモールすら変わっていたから、もはや彼女のことを思い出すような場所もほぼ無くなったと言っていい。
歳を重ねるごとに、昔の記憶はどんどん朧げになっていく。場所や物には、忘れかけた思い出を呼び戻すトリガーのような働きがあると思うのだけど、それがなくなってしまった。もう柏に来ても思い出したいようなそうでないような特別な感情に思いを馳せることもないのだろう。
そう思うと、ちょっと寂しさを感じてしまう。
13時過ぎの時間だったので、ご飯でも食べようと思った。以前、一度高校時代の友人と立ち寄ったらーめんが美味かったことを思い出し、店へと歩きだす。前回は友人と話しながら歩いてたので思わなかったが、想像より遠い。10分以上はかかって、住宅地の中と言ってもおかしくないくらいの場所に、ポツンと立つ一軒家が見える。「麺処にし尾」という看板とガラス張りの外観がなければ飲食店だと気がつかないだろう。
前回は夕食どきだというのもあり、かなり並んだ。もしかしたら40分以上並んだかもしれない。が、今日は先客10名ほどだったので、それほど待たずに済んだ。
内側のスペースが細いコの字というか二の字とでも言えばいいかという白木のカウンター。
頼んだのは味玉手揉み中華そば(醤油)。醤油スープも麺もすごく美味かった思い出がある。楽しみ。
出てきた中華そばは、やはり驚くほど旨い。
少し背脂が浮いた昔ながらの中華そば的な風味なのだが、この完成度が尋常ではない。濃いめの醤油のカエシがキレを作りつつ、鶏を中心にいくつかの出汁が合わさったスープのまろやかさを感じる。豚と鶏の3種類のチャーシューも、とろとろ、ジューシー胸肉そして燻製と、全て味わいが違う旨さの組み合わせ。何よりも手揉みの平太麺が抜群の旨さ。醤油スープの味の濃さはこの麺のためにバランスを合わせているのだなと感じる。懐かしようなそれでいて、とんでもなく新しいような、特別な一杯だと思う。
過去の思い出を失って、これが僕の最新の柏の記憶となった。
またこの味を食べたいという特別な感情も芽生えた。
20年、30年後も、ここにあり続けてほしいと願っている。
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