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チャーギュー食わないなんて人生損してる

贅沢焼牛らぁ麺 牛骨らぁ麺 マタドール@北千住


「え? コーラ嫌いなの!?」
「うん」
「マジ? それ、人生損してるよ」
 隣にいる小学校1年生の男の子ふたりの会話が聞こえてきて、最後の一言でぐふっと笑ってしまった。

 西新井駅近くにある「The SPA」というスーパー銭湯内のお食事処にいる。

 土日のスーパー銭湯はサウナの流行りも手伝って盛況ぶりに拍車がかかっている。サウナが混み過ぎていたので、一旦食事処でハイボールでも飲むことにした。
 が、やはり土日だから食事処も混み合っていてファミリーが多い。僕の隣テーブルには、子供繋がりの2つの家族が一緒にサウナに来たらしく、ちょうど注文をし始めた際、冒頭の会話が聞こえてしまった。
 6歳児、人生を語る。

 笑ってしまったものの、「あれ?」ふと笑いごとではないなと我にかえった。この主観の押し付けって、普段気づかずにやってしまっているよなと。相手は「嫌い」という相手側の主観を提示しているのにも関わらず。
 別段、相手に強要してない個人的主張と自覚しているならいい。ただ、コーラは大体みんなが好きなものという大多数の意見をバックに、「お前おかしいよ」という感覚でそれを言ってしまっているとしたら、危険だ。幼少の頃からこういう環境や現実の中で生きていて、そこに気がつかないまま成長していってしまう。子供の言葉は現実社会の反映だと思うと、この問題は常に根深い。
 と考えると、この記事だってある意味同じことを言っている。
「コーラ飲まないなんて、人生損してるよ」と言う小学生。
「このラーメン食べないなんて、人生損しているよ」と書いている僕。
 いや、違うよ。僕はただ個人的な好みを主張してるだけだから。偏愛グルメだって言ってるし。
 とはいえ、40年以上多く生きても、やってることは一緒。僕の50年の人生は、いまだ小学生のレベルのままなのだった。損しているよと言いながら、40年以上の人生を損していたのは僕だったのかもしれない。ぐふっ(今度は吐血)。

 くそー、やはりサウナは平日の日中に限る。平日なら小学生もファミリーも来ないから、勝手にこんな心のダメージを負うこともない。なんてそんなストレスも、汗と共に体の外へ流し出せるのがサウナの良いとこだよね!(現実逃避)
 サウナ・水風呂・外気浴のセット3回と露天風呂、寝湯で、そこから2時間くらい味わって「The SPA」を出た。うん、抜群にととのったね。

 そこそこカラカラなこの体にどんな栄養を与えてくれようか?
 それはもう決めてあった。北千住でチャーギューをしばくのだ。

 「牛骨らぁ麺 マタドール」。
 牛骨ラーメンのお店では古参にあたるお店だと思う。しばらく牛骨を離れていると、突発的に牛骨スープ飲みてえ! と禁断症状に襲われる。そもそもそんなに店が多くないジャンルではあるけど、マタドールが牛骨ラーメンの中では一番好き。
 醤油と塩で迷うけど、今日は醤油。塩は塩でめちゃくちゃ旨いんだけど、スープの感じは醤油の方がストロングスタイル。選ぶのはもちろん贅沢焼牛らぁ麺。贅沢はいわゆる特製にあたる。そして、ここでは焼豚の代わりに焼牛(チャーギュー)いわゆるローストビーフを使っていて、特製のスタンダードと同様に3枚トッピングされている。それで1050円は破格!

贅沢焼牛らぁ麺

 ローストビーフを牛骨スープで食べたことあります? 旨いに決まってるでしょ。

 ところが、そのローストビーフなんかはただのトッピングで、スープそのものがすげえ旨いんですよ。牛のうまみを詰め込んだ牛汁。まさにフォンドボー。ダシダみたいな粉末モノなんかとは比較にならない旨み。麺も細めでスープと相性バッチリ。
 さらに、白ネギ、青ネギ、おろし玉ねぎの3種類のネギが散らしてあって、こいつらがスープと麺をアシストしまくるのだ。ネギの合わせ方を変えるだけでも、味わいが変わる面白い旨み加減。

 さらに、チャーギューをめくれば新たな驚きが待っている。

「…ありのまま、今、起こった事を話すぜ!
 チャーギューをめくったと思ったら、突然味が濃くなった
 何を言ってるかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった…」

 実はチャーギューの下には、コンビーフ状の細切れな味付けチャーギューが隠れている。こいつと玉ねぎをからめながら麺を啜れば、このラーメンは第二形態へ変化する。亡き鳥山明先生を偲んで言えば、スーパーサイヤ人に変化したくらいの圧倒的な能力値上昇を体感する。
 まさか今までのラーメンですら、前菜だった…というのか?
 向き合った人間は絶句する。そしてこの第二形態が抜群に旨い。ここからは手が止まらない。かめはめ波、元気玉が連続で襲ってくるから、一心不乱に食べ続けるしかない。気がついたら空になった器をレンゲで掬い続けている自分に気づいて我にかえるほど。ああ、完飲していたのか…。

 店を出てみると、胃の中、口の中まで牛で犇めきあっていることを知る。もうしばらく牛は要らないと思うくらい牛まみれ。牛丼のアタマだけをラーメンのどんぶりいっぱい食べたくらいのウシ感。ただ、また突発的にこれを欲するのだろう。そのくらい脳に刷り込まれる牛味なのだ。そういえば、つけ麺は食べたことないので、次は挑戦してみようかなとも思っている。

 やっぱり、こういうラーメンを食べた後は、どうしても誰かに伝えたくなる。それがたとえ小学生とレベルが変わらないものだとしても。

 50歳児はかく語りき。
「マタドール食べないなんて、」

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