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24課メモ「くれます」1『みんなの日本語』
教えるのが難しい文法の例としてあげられる文法項目「あげもらい」。でも、私は「あげる」「もらう」だけなら、そう難しいとは感じません。ここに「くれる」が入ってくるとまぎらわしくなると思っていました。「もらう」と「くれる」はものの移動の方向が同じだからです。でも、克服しました!私の教え方は少し特殊かもしれません。
私の中の困りごとは、「もらう」を使う場合と、「くれる」を使う場合が明確に説明できなかったこと。でも、ある日、転機が訪れました。
学生に、お母さんについて、話してもらっていたときのことです。
私:お母さんはどんな方ですか。
学生:私のお母さんは、きれいです。そして、親切です。ん~、お母さんは料理が上手です。お母さんは私にいつもおいしいご飯を作ってあげます。お母さんのご飯はおいしいです。今。。。食べたいです。
この学生は、初級ですが、上手に話す学生でした。ですから、「もらいます」を使おうと思ったら使えたはずです。でも、「あげます」にしてしまった。「お母さんは」という主題で、話し続けていたからです。主題をそろえる文脈の中で「くれます」を使ったり「もらいます」を使ったりするというのが、使いわけ。しかも、外国人も同じ主題のまま話し続けたくなるなら、話は早い!
ものの移動の方向だけを考えると、「もらいます」と「くれます」を並べたくなります。よくあるのは
私は 佐藤さんに チョコレートを もらいました。
佐藤さんは 私に チョコレートを くれました。
という言い換え練習。でも、これを言い換える場面なんて、そうそうありません。言い換えできたからって、何⁈と思ってしまいます。
並べるべきは「あげます」と「くれます」です。
佐藤さんは 山田さんに チョコレートを あげました。
佐藤さんは わたしに チョコレートを くれました。
語順も助詞もばっちり同じです。違うのは「私に」となるところ。初級では「父・母」「お父さん・お母さん」の使い方の違いとして、「(本質的ではないですが)自分のお父さんやお母さんのことは父・母という」と教えるので、同じノリで、自分にもらった時は「あげます」ではなく、「くれます」を使うと教えればよく、シンプルでとても簡単になりました。「もらう・くれる」をセットで教える人が多いから、チームで教える場合、混乱させるかな、と少し心配しましたが、『みんなの日本語 教え方の手引き』を見ると、やはり「あげます・くれます」のセットで教えていて、問題ないと判断しました。ちなみに、大辞泉で「くれます」を引くと
「人が自分に、または自分の側の者にものを与える」
とあります。「くれます」は「もらいます」と同じではないのです。なあんだ、と思いました。私の不勉強でした。
さて、教えるときには、導入も、上記のお母さんの例をそっくりそのまま使って、「誰かに何かをもらいますか?その人はどんな人ですか」という問いをすると、だいたい上記のような話をしてくれます。そこで、文脈の中で「私に」のときは「くれます」になると教えます。何一つ道具はいりません。練習の時に実際にものの受け渡しをしながら、練習します。
それから、もう一つ、「くれます」はウチとソトの関係を如実に表します。別のある日、グエンさんという学生がやってきて言いました。「先生、昨日、チャンさんは、店長に日本語が上手になったとほめてもらいました。」
グエンさんとチャンさんはとても仲がいい友達です。グエンさんはチャンさんの勉強が遅れているのを心配していつも手伝っていました。だから、先ほどの言葉を聞いたとき、一瞬「あれ、仲がよさそうと思っていたけど、ライバル的な要素があるのかな。グエンさんはチャンさんだけほめられて、ちょっとへこんだのかな。」と思いました。でも、なんだか嬉しそうです。そう、ここは「店長がチャンさんをほめてくれました」というべきだったのです。そうすれば、友達のことをほめられて嬉しかったグエンさんの気持ちが伝わります。「くれます」を使う「私」には「私のウチの人」が含まれます。「もらいます」を使うと「ソト」の人になるのです。
ですから、私は「くれます」を使うのは、「私に」のときと「友達とか家族とか、自分がもらったときと同じぐらい嬉しい人に」のときだと教えています。
このあと、実践的な練習をしていると、「くれます」と「もらいます」を混同してしまって、「あれ?」となります。その時にはじめて「くれます」と「もらいます」を並べて整理すれば、すっきりと理解できます。大きなポイントがおさえてあれば、多少混乱することがあっても、基本に立ちかえって理解し、納得することができます。
長くなりました。『みんなの日本語』の教科書の内容に触れることができなかったので、「くれます」2に続きます。
まとめ
「くれます」のポイントは、「あげます」とセットで考えること。ウチとソトの関係が関わってくるので、理屈は教えなくてもいいが、教師は意識しておく必要がある。
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