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24課メモ「くれます」2『みんなの日本語』

ここでは、実際に24課をあつかう時の注意点を書きます。気づかずやると、あ!となるトラップが満載の課なんですが、わかってやれば大丈夫です。

1.「は」と「が」の問題

まず、例文です。

例文1.おばあちゃん お菓子を くれます。
例文2.佐藤さん くれました。

こんなに至近距離で「は」と「が」を並べるなんて、学習者が気づくじゃないか、勘弁してくれ~と思った、逃げ腰な私。逃げてはいけません。立ち向かうのです。わかれば、簡単。

例文1.A:太郎君はおばあちゃんが好きですか?B:はい、好きです。おばあちゃんはいつもお菓子をくれます。

この会話の主題は「おばあちゃん」。今、おばあちゃんの話をしているから「は」です。

例文2.A:おいしいワインですね。B:ええ、佐藤さんがくれました。フランスのワインです。

この会話の主題は「ワイン」。Bさんの発言を完全な文にすると、「このワインは佐藤さんがくれました。」ですが、ワインの話をしていることはわかっているので、「このワインは」を省略しているだけです。

落ちついて考えれば難しくないのですが、ふいに「どうしてこっちは〝は”でこっちは〝が”なんですか」と聞かれたら、焦るものです。

だから、確かに『みんなの日本語』は大変だけど、準備しておくことができるから、ある意味助かるし、教師も一つ一つ成長していけるところがいいと思います。

ついでにいうと、この会話の主題は「このワインは」なので、「佐藤さんにもらいました」でもかまわないと思います。「くれます」1で述べたように、佐藤さんを「ウチ」の人として話しているのだと思います。練習B-2も同じです。あんまり快く思っていないご近所さんかだれかから受け取ったのであれば「もらいました」というのではないでしょうか。

説明がつかないのは、練習C-3です。「ホームステイはどうでしたか」と聞いているから、そのまま主題がホームステイなら「お母さんおすしを作ってくれました」となるはずなのに、「は」になっています。無意識に話題が家族の話に変わっているのでしょう。「楽しかったです」のあとに、「家族の皆さんが親切にしてくれました」のように、主題が変わったサインがあると、説明しやすいのですが、残念です。このまま使う時で、学生から質問があったら、家族のことに話題が変わったからだと説明します。

2.「を」の問題

1.さとうさんは おじいさん 道を 教えてあげました。
2.さとうさんは おじいさん 車で 送ってあげました。

またまた、急に聞かれると焦る質問です。これも簡単。

2は、たまたま人を目的語にとる動詞だっただけです。つまり、

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対象をいれるなら

佐藤さんは おじいさんに おじいさんを 送ってあげました。

となるのですが、おじいさんが2回になるので、対象のほうはもう言わないということです。連れていきます・連れてきます・案内します・紹介します・手伝います・ほめます(37課初出)などが、目的語に人をとりやすい動詞になり、注意が必要です。特に「紹介します」は24課の新出語彙なので、語彙導入のときに、これらの単語を思い出し、「を」としっかり結び付けておけば、混乱はおこりません。その時「友達に紹介する」と「友達を紹介する」の違いまでしっかりわかっていれば、文法の理解が楽になります。

3.「の」の問題

わたしは カリナさん 自転車を 修理してあげました。

これも、「を」の問題と同じ仕組みです。対象までいうなら

わたしは カリナさんに カリナさんの 自転車を 修理してあげました。

となるのですが、「カリナさん」が 重なるので、対象の「カリナさんに」を省略するというわけです。

以上が気づいた点です。細かいことも言いましたが、教科書では使う動詞などはしぼられていますから、学生のレベルによってどこまで練習する動詞を広げるかは調節し、この段階で細かいことまで追求する必要はないと思います。