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10年も想い続ければ、それは。

#ご当地グルメ の募集をみて、これは!と思うものがあったので。僕が10年振りに再会した、とても美味しい「せとか」という蜜柑についての思い出を書いてみようと思います。

 

年度末の忙しさと理不尽さの荒波に揉まれ、挙句にやんわりとずっと体調が悪い。心だけが時折体を置いて楽しげにしているのが幸いな毎日。

平日休みのヨメさんの待つ家に帰ると、見慣れない段ボールがひとつ。

側面に書かれた「せとか」という文字で、いとも簡単に心が体を置いて羽ばたいた。

 

「やった!届いたんだ!!!」

僕が楽天で注文した、「せとか」という品種のみかんが届いたのだ。

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「せとか」をご存知だろうか。
ウィキペディアによると、品種名は「早崎瀬戸」、「瀬戸内地方」、「香り」に由来しているらしい。

果実の特徴は、

果実の大きさは200グラムから300グラム程度で、タンゴールタイプとしては比較的大玉である。
果面はなめらかで美しく、果皮は非常に薄く色も赤橙色を呈している。
浮き皮の発生も少ない。アンコールの親品種であるキングマンダリンに似た香りがある。
果汁糖度も13度から14度と極めて甘味が強い果実で食味が良い品種である。

だそうだ。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%81%9B%E3%81%A8%E3%81%8B

 

通常価格が高価なんですが、注文したのはいわゆる粒の揃わない訳あり品。ひと箱2000円程度になっていたのを予約注文しておいたのだ。
思わず段ボールを抱えて小躍りしたくなった。

 

さっそくその日のうちにひとつ切って、彼女と味見をしてみることに。

表皮が薄く、手で剥くのに向かないせとかはカットした方が食べやすいらしい。
届くまでに調べていた情報を信じて、包丁を入れる。

その瞬間、ふわっと甘い柑橘の香りが広がった。

「香りが強いね」

その香りはダイニングテーブルに掛けて待つ彼女まで届いたようだ。

「ね、すごいいい香りだよ。」

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みずみずしい果肉はキラキラとしてとても美しい。

一口齧ると、まるでみかんジュースを飲んでいるというか、加糖していないとは思えない強い甘みがぶわっと口内を満たす。

「うっま!これこれ。これだわ。」

僕が言うこれ、とはせとかとの出会いの瞬間の衝撃のこと。

 

僕が初めてせとかを口にしたのは、大学4年の終わり友人たちと旅行に行った広島でのことだった。

僕含め食べることに旅の重きを置くメンバーで、牡蠣とかあなごめしとか他にも美味しい海の幸に舌鼓をうつ旅だった。
その中で「地元のケーキ屋さんでケーキを買ってホテルで食べる」という企画があった。
予約したホテルの近辺に、ちょうどマリオデザートというケーキ屋があったことがきっかけでした。

 

そこで季節のケーキとしてせとかのタルトを選んだ。
聞いたことない名前の柑橘で、地場のものっぽさを感じたくらいの理由だったと思う。

居酒屋で地元のグルメを楽しんで、ホテルで〆のケーキ。

「!!」

そのひとつのケーキが衝撃的で。
旅行から帰った僕は旅の思い出のひとつとして、せとかの美味しさを話すようになった。

 

それから10年。

思いの外高価で関東ではなかなか手が伸びない金額でしか出回らないと知ってから、せとかは「いつかまた食べたいもの」として長らく僕の心の隅に居座った。

そしてたまたま見つけた訳あり品の詰め合わせで、こうして再会したんだ。

 

考えているばかりで食べないなんて、勿体なかった。
もっと早く買ってみれば良かったなんてありきたりな後悔は、たっぷりの果汁と一緒に飲み込んだ。

10年も想い続けたなら、もうそれは恋なんじゃないか。

 

傷まないうちに、と毎日のように食べ続けて4月の頭には箱は空っぽになった。

さようなら、恋したせとかよ。

また、来年。

 

 

 

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