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少女とお父さんのおきまり

カフェで働き始めてもうすぐ10ヶ月

大学時代、アルバイトをするならカフェはないだろうな。つまらなそうだから。と選択肢にも入っていなかったことを思い出すと、カフェで働いていることがとても不思議。

同じような日々でも、自分の心もちと、その時に来てくれるお客さんによって毎日違う気持ちにさせてもらえるので、案外カフェの仕事は面白いなと思います。

お客さんとは、深く話せるわけではないけれど、眺めているといろんな物語が見えてきたりします。(勝手に想像しているとも言えますが笑)

毎週月曜日の16時ごろ、決まった時間にお店にやってくる女の子とお父さんがいます。小学2年生の彼女のお決まりの注文は、カフェ自家製のバニラアイスクリーム。お店のスタッフが手作りで作っています。

初めて、アイスクリームをを注文してくれた時
”17時のご飯前に食べるには、なかなか大きいよな(サーティーワンのレギュラーダブルくらい)”
”お父さんと分けて食べるだろうな”
なんて勝手に予想して、スプーンを2本つけて持って行った私。
その予想に反して、女の子は1人で美味しそうにペロっと完食。その様子を見てからは、スプーンは1本、がおきまり。


そんな2人とは、注文を聞く時と、お会計の時に少しだけお話しをします。
ピンクのランドセルを背負って、ピンクの服、ピンクの靴を履いていることが多いのに、本当は水色が好きなこと。3つ下の妹とは、よく喧嘩をすること。ゴールデンウィークは、2日連続でディズニーランドに行ったこと。
毎回少しだけ、彼女のことを知れるのが、密かな私の楽しみになっていました。


いつものようにアイスクリームを食べる女の子と、その向かいに座り、女の子の様子を眺めるお父さんを見て、ふと懐かしい気持ちになりました。

ちょうど私が少女と同じ小学2年生だった頃、私の家族はアパートから、庭付きの一軒家に引越しました。週末になると、母は家事や仕事で家にいることが多く、兄はサッカーの少年団に入っていたこともあり、父と2人で出かけることが多くありました。

家具や雑貨、ものづくりが好きな父は、休日を使っては、棚を作ったり椅子を作ったり、庭の花壇や道を作ったり。初めての一軒家、自分の庭を一から作る父の姿はとても楽しそう。
週末になると、家から30分ほどのホームセンターに一緒に行って材料を買い、一緒に庭づくりに励みました。セメントを混ぜる、石を敷き詰める、ノコギリで木を切る、どれも小学2年生の私にとっては初めてのことが多く、ドライバーを使う父がとてもかっこよく見えたのを覚えています。

そして、もう1つはサッカー観戦。
地元のサッカーチームを熱狂的に応援していた父。自転車で15分ほどの場所にサッカースタジアムがあるため、一緒について行きました。
サッカーがよく分からなかった私が楽しみにしていたのは、スタジアムの売店で買うシナモンチュロスと、ゴール裏でぴょんぴょん跳ねながら応援歌を歌うこと。
今でも、ホームセンターに入ると、ホームセンター独特の匂いに懐かしさを感じるし、地元のプロサッカーチームのカラーを見るとふと昔を思い出したりします。

女の子にとってのお父さんとの時間、アイスクリームやカフェでの時間は、私にとってはシナモンチュロスやホームセンターなんだろうな。なんてふと思い…。

今でこそ、父とは頻繁に話すことは無くなったけれど、子供の頃を思い出すと出てくる父との記憶はとても大切なもので。
お父さんと娘。2人だけの時間。
毎週、同じカフェにお気に入りのアイスを食べに行く。
お父さんにとって、女の子にとって、きっとこの時間はかけがえのないものになるような気がしていて。

誰かとのおきまりがあること。時間を超えて、そのおきまりが、大切な思い出になっていくこと。
忙しいからと、誰かとの時間を大切にできなくなってしまうことも多いけれど、思い出した時に、じんわりと幸せを感じられるような、そんなおきまりを増やしていきたいと、2人を見ていると思います。

これからも2人には、なるべく向かいの席に座って、ゆっくりとして時間を過ごしてほしい。そして、その2人をキッチンから眺める時間が密かな楽しみになっている私。お店が混むのは嬉しいことだけれど、月曜日の16時ごろは、あまり混みませんように…

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