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Garçon ギャルソン!! 〜その2・ヒメ様〜

本社から研修で入った私が見た
ギャルソンとの珍事
愛をこめてつづる第2弾。
その1をお読みでなければ、まずそちらをお読み頂く方がよろしいかと思います。

そのレストランの作りは
1階が フロント、BAR&ブラッスリー
2階は 予約制レストラン
3階は パーティー用バンケットルーム


サービスするギャルソンたち・・・
いつだって、プロはステキです。
その邪魔にならぬよう
研修初日の私は、
あっちによけ、こっちによける。

フロアーは、にぎわってまいりました♫
担当テーブルが決まっているギャルソンは
お客様へのサービスに専念しております。

一番若い垣田くん、この日は
予約なしでお越しになるお客様を担当のよう。

フロントからメートルに電話があり、
垣田くんが呼ばれました。

「フリーおふたり。ターブルヌフ」
「おふたり!ヌフ。チーっす」


その言い方が・・・
私には彼が何をやっても
ヤンキーにしか思えない

ターブル、ヌフ…は9番テーブルの意味。 

やがて総支配人と若いカップルが現れ、
垣田くんは、テラスの扉近くにご案内。
空いているお席はそこのみ。一応、窓際。

2人は20代の真面目そうな男性と、
おとなしそうな女性。

椅子を引き、男性にメニューの説明。
垣田君、ちゃんと仕事している。

すると私は、あるギャルソンから、
下のバーにカクテルを取りに行け、と。

え!?・・私もやるですか?・・
のんきに眺めている場合ではありません!

実は、私、学生時代、
大阪のとんかつ屋で
バイトをしておりました


そう、トレンチ(日本語でおぼん)は持てる!

バランスよく物をのせて
持つ自信ありました。


「ハイ!!!」 私は張り切って
カクテルを取りに1階のバーに行くと、

ジャンレノです、渋いです、
みたいな顔のバーマン
が、
出来立てのカクテルを2つ、
カウンターに出したところでした。

うわ!
(これはフルートグラスと後から知りました)

とんかつ屋で、信楽焼きの
平たく重〜い皿にのったとんかつを
一度に4皿は持てましたが、

この繊細なグラスは、
細ーーーい、長ーーーい!?

これ持って階段を上がるわけだ。
まして、靴は買ったばかしのヒール。

・・・倒すなよ、と自分に言い聞かせる、
へっぴり腰で階段をあがる、
目はグラス一点に釘付ける・・・


一度引き受けると、次次と。。。
ええーーー!?またですか!?

ドラフト、スプモーニュ、ダイキリ、
それと〜、
なんやら、わからん!
ワタシはゲコです!酒は呑まんとです!
どれが、どれですか。。。


見学のはずじゃなかったんですか!と、

もうヤンキー垣田くんも、なにもかも、
見ている余裕はなくなりました。

バーでカクテルを待っていたときでした。
事件は起きたのです!

垣田くんが担当するカップルの女性が、
フロント横の化粧室から出てきたのが、
私の立つバーから見えました。

色白〜い、と思っていると、
女性はフロント横の椅子に座ろうとして
フラ〜ッと倒れてしまったのです。

フロントには他のお客様もおられ、
辺りが急に騒がしくなりました。

その時です!!
垣田くん、階段を飛ぶように降りてきて、
女性のもとへ行きました。

垣田くんは、

つかまれますか?と言って
女性をしっかり抱き上げたのです。

まさに、お姫様抱っこです!!!


そして階段を2段飛ばしで
2階を過ぎ、3階まで一気に上がったのです!

もう一度書きます。2段とばしです!
次に出す足は3段先を踏んでいるわけです!

それで、3階まで、
ずっと、しっかりお姫様抱っこです!
私には生涯無縁の抱っこなのです!!

私は学生時代、バスケの4番でした。
5番と並んで運動着のまま廊下を歩くと、
調子にのってる野球部が


よう!大鵬、北の湖と声かけてきました。

どんな時代でしょうか。

要するに体がデカイ。あらゆる寸法が、です。
女としての思春期はズタズタでした。

北国にいた私には、
お姫様抱っこは、本州で作る
テレビドラマの中でしか、あり得ないのです!

フロントにいた他のお客様も、
呆然と階段を見上げている。

私はジャンレノに飲み物を渡されたので、
2階に戻りました。

垣田くんはお連れさまの男性を上へご案内。

その頃、フロアで一番いい席とされている、
コーナーのブース席のお客様が、
メイン料理を終えました。
担当は、長身イケメン、江藤さん。

私の上司、企画室長が、
ここへ来る時に、

あの店にCMにも出た、
元モデルがいるぞ、

男が見ても惚れるぞ、
ネットリした口調で言いましたが、

この人です、確かに。
でも私はイケメンが苦手なので
体勢には影響なしでした。

戻ってきた垣田くんに江藤さんが

「カキ、俺んとこ、使っていいぞ」
「あ、いいスか?」
「貧血か?ニューカマー?」
「はい。なんか繊細そうな感じなんスよ」
「ラストまでいいぞ、なんとかするから」
「(敬礼)あざ〜〜ス!!!」

ニューカマーとは初めてのお客様。

江藤さんは担当のお客様をエスコートして
階段を降りて行き、

垣田くんはテーブルを整え直し、
キャンドルを灯し、姿を消す。

垣田くんがフロアに戻ってきたとき、
若いお二人の席は店で一番よい席。
ゆったりしたソファで体は楽、
コーナーで並ぶ席は互いの距離も近づく。

驚いたお二人は、垣田くんのサービスで、
そのあとは嘘のように笑顔いっぱいの
ディナーになっていました。

私がお酒を取りに1階に降りると、
BARを通り越えた奥にある
ダークウッドの床、皮張りのブース
暖炉が見えてジャズが流れるブラッスリーで、

先ほど2階から移動されたお客様に
デザートとコーヒーをサービスしている
江藤さんがいました

バーマン、ジャンレノも加わり、
和やかに、お酒の話をしている4人。

お客様をもてなす・・・

ギャルソンという仕事を選んだ人は
お客さまが喜んでいるのが嬉しい!
彼らのハートはシンプルに、
その思いに満ちている
ことを
感じた夜でした。

やはり、人は見かけによりません。
垣田くんは、それからも私の教育係。

やがて、
おばさんから、お姉ちゃんに
私への呼び名が変わり

アニキ気分で、面倒を見てくれました。

バーとレストランを行き来する私と
ギャルソンをめぐる別の話しは、
また後日・・・

長文、お読み頂きありがとうございました!

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