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観てきた!「特別展 虎屋のおひなさま」at 根津美術館

おひなさま、と決して侮るなかれ・・・
世界最高峰と言えるくらいの、ハイレベルすぎるミニチュアの数々。
職人の方々の、恐ろしいまでの情熱と魂を感じる超絶技巧の応酬。

終始、驚嘆しっぱなしでした。これは本当にすごいです。
こんなすごいものが、関東大震災や戦火を乗り越え、非常に良い状態で現代に受け継がれたことの奇跡。そして目の前で鑑賞できることの幸せをかみしめました。

再開を待ち望んでいましたが、臨時休館が延長され、そのまま会期終了となってしまいました…非常に残念です…

もしまたいつか公開される時には、ぜひ!ぜひご覧になっていただきたい!と強く思った、素敵すぎる展覧会です。

場所:根津美術館(東京・南青山)
会期:2020年2月22日(土)~3月29日(日) ※臨時休館延長につき終了…
時間:10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館:月曜
料金:一般1,300円、学生1,000円、中学生以下無料


◎観に行こうと思ったきっかけ

どこかの美術館で、フライヤーを手にしたことで開催を知りました。
虎屋さんは個人的に、ロゴとかお店構えとか、「虎屋文庫」の取り組みや、商品のパッケージやチラシ等々、会社としてのたたずまいというか、デザイン全般が特に好きな会社です。
赤坂店のギャラリーやミッドタウンの展示にも定期的に足を運んでいますし、喫茶もいろんな店舗を利用しています。茶道のお稽古を始めてからは尚更。なんだかいつも落ち着くんですよね・・・

ひなまつりの季節と言えば、三井記念美術館(東京・三越前)での「三井家のおひなさま」の展覧会が恒例です。 これまで個人的に、そこまでおひなさまを芸術鑑賞の対象として意識してなかったのですが、今回はあの”虎屋”さん家のおひなさま、とのことで、観てみたいなぁと興味がわきました。


◎どんな展覧会?

明治時代、虎屋十四代店主の黒川光景氏が娘のために揃えた雛人形と雛道具が、この展覧会の主役です。ちなみに根津美術館でのお披露目は、8年ぶり3回目だそう。合わせて、雛道具に含まれる「三棚」などの実物や、ひなまつりにまつわるお軸、虎屋のお菓子の絵なども展示されています。

現代の雛飾りは、住宅事情もあってか、お内裏様とお雛様のペアだけの平飾りやケース飾り、多くて3段飾りが主流のようで、7段飾りは相当豪華な部類ですよね。(ちなみに私の実家は地方の一軒家のため7段飾りでした。本当にありがたい限り・・・)
虎屋さんはというと・・・・なんと14段。しかもかなりの幅広サイズ
飾り付けられた時のカラー写真が会場内に掲示されてますので、ぜひご覧ください。もももものすごいです・・・。
飾られる雛人形と雛道具自体は、ごく一般的なサイズ。雛道具の種類と量が、もうとんでもないことになっています。14段の幅広サイズでもぎゅうぎゅうに飾りつけられていました。飾るのもしまうのも確実に2~3日かかっていたのでは。


◎ぜひ音声ガイド&単眼鏡をレンタルで

私が訪れたときは、翌日から臨時閉館となるタイミングでした。駆け込みで混んでるかな・・・と思ったものの、普段は多い外国人もご高齢の方も少なく、館内のスタッフさんも”お客様がかなり少ない”とお話しされているほど、普段よりもゆったりと鑑賞できました。

ですが、今回は音声ガイドをレンタルされることをおすすめします(¥500)。展示には解説パネルがところどころ出ていますが、音声ガイドでは、解説パネルにない内容がかなり聴けます。

また、根津美術館の音声ガイドは、特別展だけでなく館内全ての展示について解説しています。茶道にまつわる展示室など館内全体の鑑賞に役立ちますのでぜひ!

合わせて、案外知られていませんが、根津美術館では単眼鏡もレンタルできます。しかも実質無料で!!!館内入って右のミュージアムショップで、保証金¥5,000をお渡しするだけです。今回の展示はミニチュアサイズですので、単眼鏡があると非常に楽しめます。単眼鏡を使ったことがない方も、この機会にお試ししてみてください。


◎細かすぎる雛道具は、お父さんの趣味でもあった

そもそもひなまつりには、2つの行事がミックスされています。

・古代中国で行われた上巳:じょうし(3月3日)の行事
・古くから日本で行われてきた、人の形をした紙や、人形で身体をなでて穢れや災いを移したものを川に流した行事

年に一度の女の子のお祭りになったのは江戸時代半ばからです。

雛道具は、宮中の嫁入り道具を模したもので、箪笥や鏡台とお化粧道具、茶道具などがあります。子どもの頃、飾りつけながらなんとなーく教えられたことを、鑑賞しながら思い出しましたが、こんなにたくさんの品々があったのか、と改めて驚きました。

例えば、三棚(さんたな)。
手箱や香道具などを置く「厨子棚(ずしだな)」を中央に、お化粧道具を置く「黒棚(くろだな)」を右に、巻物や書物などを置く「書棚」を左に置く、3つセットのものです。展示室では、実物サイズと雛道具とを見比べることができますが、手乗りサイズの雛道具は、もうびっくりするくらい実物に精巧に作られています。

展示された雛道具は主に、上野池之端の七澤屋 (ななさわや) というお店が手掛けたもので、おそらく江戸時代のもの。
ミニチュアサイズなのにすべて漆塗りの漆器!で、牡丹唐草文(ぼたんからくさもん)が、職人さんの手によって蒔絵で装飾!!!されています。
牡丹は冨貴の象徴、蔓(つる)は途絶えることなく代々伝わっていく、という意味合いがあり、縁起物の組み合わせなんですよ。

雛人形は京都の老舗人形店・丸平大木人形店(まるへいおおきにんぎょうてん) で新品を購入したようですが、雛道具は江戸時代・・・なんで?と思ったのですが、図録によると、素晴らしい雛道具一式なので、古美術がお好きだった黒川光景氏自身も欲しくって、この組み合わせにしたのでは?とありました・・・

でも、納得。これは確かに欲しくなるよね!と思うくらいに、素晴らしい品々なんです。囲碁や将棋の道具の碁石や駒、百人一首の札、冊子、茶道具のお茶杓や、煎茶道具、貝合わせの貝、お琴などの楽器まで・・・どれも小さいのに、もう引くくらいに精巧に作られています。
さらに、漆器だけでなく陶磁器やガラスもありました。茶碗やお猪口など、やきものでもこんなに正確に同じサイズと絵柄のものを、ミニチュアでたくさん作るなんて・・・!そしてガラスは切子!!!
江戸時代の職人さんがどれほどすごい技術を持っていたのかを考えたら、気が遠くなりました・・・これはぜひ実物を目の前で鑑賞して実感していただきたいです。


◎初めて知る、おはぐろの苦行っぷり

雛道具の中には、おはぐろに使われた道具もありました。おはぐろは、正式には『鉄漿(かね)』と言いますが、展示を通して初めて知ること&驚くことが多かったです。

音声ガイドによると、おはぐろは平安時代からあり、当時は成人の証で男女共にしていたそうですが、江戸時代になると、女性の貞節の象徴として既婚女性だけの習慣になります。
おはぐろに使う液体は、実はものすっごい臭くてまずかったそうですよ・・・何せ、お酢に鉄屑、錆びた釘を沸かした後、木の樹液を粉末にしたものを混ぜて作っていたんだそう。絶対に口に含んじゃだめなやつですよね・・・廃れて本当に良かったと心の底から思いました。


◎グッズは何買ったの?

図録(¥1,800)を購入しました。
実物を単眼鏡で存分に鑑賞しましたが、図録でもじっくり観たいと思って。購入して正解でした。14段で飾られた写真や、奥のほうに展示された屏風などの図柄もしっかり鑑賞できます。雛道具はどれもこれも、実寸大かちょっと大きめに掲載されているのでは・・・いずれにしても眺めるたびに驚愕します…

図録は過去の展覧会も含め、会期終了後もミュージアムショップで購入できますので、ぜひお手に取ってみてください。

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合わせて、淡交社が出してる蒔絵のムック本も購入。写真がきれいだったのと、蒔絵に関する細かな技法などについても勉強したくて。


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◎まとめ

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日本人は、ミニチュアを愛でることを平安時代から楽しんでいましたが、このひなまつりも素敵な文化だなぁと改めて思いました。

ぜひぜひ、また近々、改めて展覧会が開かれることを祈ります。

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