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観てきた!所蔵作品展・MOMATコレクション at 東京国立近代美術館

この夏も足を運びたい特別展が多くの美術館・博物館で開かれています。

ですが同じくらい、いや、それ以上に、通っていると言ってもいいくらい個人的に好きな美術館のコレクション展、いわゆる常設展示・収蔵作品展があります。東京国立近代美術館の収蔵作品展・MOMAT(モマット)コレクションです。

なんと今なら、10月まで絶賛開催中のピーター・ドイグ展のチケットで無料!ぜひぜひこの機会に、多くの方にハシゴしていただきたいですし、MOMATコレクションだけなら大人はワンコイン¥500で、高校生以下は無料!です。短い夏休みは、涼しい美術館でのんびりまったり、気軽にアートを楽しんでみませんか?


◎そもそも東京国立近代美術館ってなに?

名前に「国立」と入っている通り、全国に6つある国立美術館の一つで、国内で最初にできた国立美術館です。MOMAT(モマット)は、この美術館の略称で、Museum of Modern Art,Tokyoの略。

ちなみに、6つの国立美術館はこちら。

・東京国立近代美術館(東京・竹橋)https://www.momat.go.jp/
・国立西洋美術館(東京・上野) https://www.nmwa.go.jp/
・国立新美術館(東京・乃木坂) https://www.nact.jp
・国立映画アーカイブ(東京・京橋) https://www.nfaj.go.jp/
・京都国立近代美術館(京都・岡崎/東山) https://www.momak.go.jp
・国立国際美術館(大阪・中之島) http://www.nmao.go.jp/


ちなみにちなみに「近代」とは、この施設に限らず、だいたい明治以降のことを指してます。

最寄り駅は東京メトロ東西線の竹橋駅。皇居のお堀のすぐそばにあって、大手町や神保町からも歩ける距離です。皇居ランナーの方なら”竹橋の坂のところにある建物”というと何となく分かる方も多いのでは?

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◎で、MOMATコレクションってなに?

この美術館で定期的に行われる展覧会は、大きく分けて2つ。
特別展と、今回紹介するMOMATコレクションと呼ばれる、美術館が所有する作品の展覧会です。

参考までに過去の特別展をご紹介すると、岡本太郎や竹内栖鳳、安田靫彦、熊谷守一、横山大観などなど。直近っても1年前(!)の「高畑勲展」も話題&素晴らしかったです。


また、「窓展」や「日本のくらし展」のような、建築に関連する展覧会も度々行われている印象がありますし、フランシス・ベーコンやパウル・クレー、開催中の「ピーター・ドイグ展」など、海外作家の展覧会も企画されています。

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このMOMATが所有している作品の数、どのくらいあると思います?
・・・・なんと13,000点以上!!!これは日本最大級です。

これだけたくさんの作品を持っているので、いつも「MOMATコレクション」という展覧会タイトルですが、だいたい春夏秋冬くらいのペースで展示作品が入れ替わってるんですよ。

日本画、洋画、版画、水彩・素描、写真など美術の各分野にわたる13,000点(うち重要文化財15点、寄託作品2点を含む)を超える充実した所蔵作品から、会期ごとに約200点をセレクトし、20世紀初頭から今日に至る約100年間の日本の近代美術のながれを海外作品も交えてご紹介する、国内最大規模のコレクション展示です。(美術館ホームページより)

セレクトして200点って!すごい数です・・・。だいたいの特別展でも、多くて120点前後ですので、全部を全部しっかり観ようとすると相当ハード・・・!なので、独断と偏見で楽しみ方のコツをご紹介します。


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◎Naomi_N的 ここを観てほしい!MOMATコレクション展

現在の出品リストでの展示期間は10/25(日)まで。日本画や版画などの一部の作品は、状態保護の観点から、8/25(火)より後期の展示に変わります。


展示は4階からスタートして2階まで降りながら観る、という流れになってます。スペースごとに1~12の番号がついていて、できるだけ分かりやすいように分類して展示されていますよ。

ちなみにほぼ全ての作品は写真撮影OKです。わたしはいつも、気になった作品をキャプション(作品の情報や解説文)含めて撮影していて、お家で改めて観たり、作家について調べたりしています。
また個人的に、作品解説だけでなく、MOMATコレクションのいろんなところに出ているさまざまな文章は、アートに関する文章表現の教材として参考にしています。表現の姿勢というか、ニュアンス、温度感のようなものが、ちょうど良いなぁ、素敵だなぁと思っています。

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まずは4階。わたしが今、特に観てほしい!と思うのは1と4のお部屋です。

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美術館サイトから画像をお借りしました

① 4F・1:ハイライト

まず1のお部屋には、美術館的に「とりあえずここだけでも観てって!」という作品が並んでいて、「ハイライト」というわかりやすいネーミングもついてます。エレベーターを降りたら右→左の、照明も壁の色も暗めの、重厚感あるお部屋で、ぐるっと一周する感じで作品が並んでます。

現在は、10月に東京から金沢に移転オープン予定の国立工芸館の紹介と、収蔵している陶器やガラス・着物など工芸作品や、フランシス・ベーコンやジョージア ・オキーフなどの作品を楽しめます。

なお、この展示室は椅子やベンチがたくさんあるので、ぼーっと作品を眺めるのにもおすすめです。

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工芸館が大好きだったわたしは、久々に作品を愛でられて楽しかったです。

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② 4F・4:小原古邨

4のお部屋には、個人的に大好きな版画家・小原古邨(こせん)さんの、美しくて繊細な花鳥画がずらっと並んでいます。

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浮世絵研究者・藤懸静也氏の旧蔵品だそうで、前期・後期でなんと32点も観られるとのこと。嬉しすぎます・・・
ここはそんなに広くないスペースですが、昨年3月に太田記念美術館で観て以来だったので、うろうろ見入ってしまいました。たぶん30分近くいたかも…

今回のMOMATコレクションにおける個人的なメイン展示だったので、本当に至福のひとときでした。

古邨さんの作品は、明治から昭和にかけて海外向けに作られていました。なので江戸時代の浮世絵より、彫りも摺りも使っている絵の具もかなり進化してますし、”素朴でほっこり”みたいな版画のイメージが変わるような作品・作家だと思います。
最近は徐々に名前を知られるようになってきた作家ではありますが、今回のこの展示で、一人でも多くの方に観て知ってもらえたら嬉しいなぁと思ってます。


ちなみに同じ4階の2のお部屋で展示している点描作品の数々も好きです。”点描”という技法そのものが妙に好きでして、スーラなど新印象派のイメージが強かった点描が、実は日本ですでに水墨画で使われていた!と知ったときは驚きました。
数は多くありませんが、常に点描画を楽しめるので、好きなスペースです。

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ワンフロア下の3階で特に観てほしい!のは6と10のお部屋です。

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③ 3F・6:戦争美術展の作戦記録画

6のお部屋には、かなり大きなサイズの、戦争を描いた絵画作品が複数点並んでいます。4階から階段で降りてきて6のお部屋に入るとき、いつも圧倒されてしまうんですよね・・・。
また、MOMATコレクションを観るようになって初めて、全国を巡回して非常に多くの観客を集めた”戦争美術展”というものがあったことも知りました。

今回は、1943年に東京・上野の東京都美術館で行われた、第2回大東亜戦争美術展に出品された作品が鑑賞できます。

アジア・太平洋戦争下、軍の委嘱で制作された公式の戦争絵画を「作戦記録画」と呼びます。軍が主題を選び、戦地に派遣された画家が制作、作品は完成後に軍に収められ、戦争関連の展覧会に出品されて国内各地を巡回しました。(中略)
1943年は、ガダルカナル島からの撤退やアッツ島での守備隊全滅、学徒兵出陣など戦局が悪化し、国民の生活も厳しさを増しつつあった時期です。にもかかわらず、主催者発表によれば、東京での動員は1ヵ月の会期で15万人を超えたといいます。

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多くの画家がお国のために、激戦地で戦う軍に同行し、作戦記録画を描いていたという紛れもない事実。何とも言えない気持ちになります・・・。

また、MOMATでは、藤田嗣治さんの戦争記録画を多数収蔵しています。
戦前のパリで、色白のアンニュイ女性や猫を描いていた作家が、戦争を生々しく描いているのです・・・。
藤田さんの戦争画で有名なのは≪アッツ島玉砕≫ですが、今回は≪○○部隊の死闘−ニューギニア戦線≫が展示されています(画像右の茶色い作品)。
こちらも本当に、観ていて息ができなくなるような作品でした・・・。

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今日は、8月15日です。
終戦から75年の節目ということや、自分が年を重ねてきたからなのか、今年は特に、戦争に関する新聞やテレビの報道・特集が気になり、できるだけ読んだり観たりしています。

戦時下を生きたわたしの親族には、特攻隊のパイロットだった人や、沖縄にルーツをもつ人もいます。でも多くが、泉下の人になってしまいました。
今この時と、確実に地続きで、たった数十年前にこの日本で起きていたこと、という”当たり前”も、日常生活の中ではついつい忘れがちです。

この美術館を訪れるたび、常設のコレクション展に、何気なく、でもしっかりと、戦争絵画が組み込まれていることは非常に大きな意味がある、と思います。
今回も、夏休みの小学生や中学生と思われる子たちが、じっと作品を見つめている姿を見かけました。

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④ 3F・10:日本画を中心にしたテーマ展示

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10のお部屋には、日本画を中心に、大きな屏風絵などもどーんと展示できるガラスケースのスペースがあります。椅子もたくさん置いてあり、4階の「ハイライト」のお部屋同様、ぼーっと作品を眺めるのにぴったりの空間です。

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今回の展示では、近代日本の日本画、版画、工芸に見られる風景表現、 とりわけ雨、風、雪、雲、水、大気といった自然現象がどのように表現されてきたか、に注目した展示になっています。

個人的には、川瀬巴水さんや奥山儀八郎さんなどのずらっと並んだ木版画は必見だと思いました。とにかくこの藍色が素敵なんですよね。来週8/23(日)までですが、ご都合つく方はぜひ実物をご覧になって下さい!!!

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⑤ 2F・11:見つめる眼、感じる自然

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さらにワンフロア下の2階へ。今回の展示で初めて観て、強烈に記憶に残ったのが、この11のお部屋の作品群でした。

特にグリーンが印象的な3つの大きなパネル。現代美術家・秋岡美帆さんの作品です。目の前にしたら、緑の香りがする強い風と、夏の日差しを感じました。

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現在、秋岡さんの特集展示が、お住まいだった三重県の三重県立美術館で行われているそう。行ってみたかったですが、こちらの動画で楽しめますよ。素敵です…!

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同じ2Fのギャラリー4:北脇昇 一粒の種に宇宙を視る は、コレクション展の流れとは別ですが、収蔵作品からの企画展です。
ぜひ多くの方に、軽い気持ちでちらっとのぞいてみていただきたい!と思った展示でした。

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こんな作家がいたんだ!と初めて知って驚きましたし、何とも興味深い世界観の作品でした。面白かったです。

こんな出会いがあるところもまた、コレクション展を巡る醍醐味だと思います。

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◎疲れたら 無理せずすぐに 休憩を

"観る"って、自分が思うよりも実は結構、体力を使うんですよね…。もしぐるぐると歩き疲れたら、4階の奥のスペース「眺めのよい部屋」でまったりするのがおすすめです。その名の通り、ぼーっとするのにぴったりのお部屋なのですよ。

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美術館の最上階に位置する休憩スペースには、椅子デザインの名品にかぞえられるベルトイア・チェアを設置しています。明るい窓辺で、ぜひゆったりとおくつろぎください。大きな窓からは、皇居の緑や丸の内のビル群のパノラマ・ビューをお楽しみいただけます。(美術館ホームページより)

疲れてなくても、お天気が良い日などはぜひ立ち寄ってみてください。
奥まったところにあるからか、だいたい誰もいないことが多いです。

ちょっとお茶したい方、お腹が空いた方は、ミクニのレストランへ、ぜひ♪

ちなみに、途中で一旦、レストランに寄ってからコレクション展の続きを観たい!という場合や、ロッカーに預けた荷物からカメラやお財布を出してきたい、って場合は、入場の際にチケットを見せた受付の方に声をかけて「再入場券」をもらうことをお忘れなく!!!

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◎結論。 お好きなところからお好きにどうぞ

念のため、お出かけの際はこちらをご覧ください。
MOMATコレクションの展示室は、だいたいいつも空いてて、ゆったり鑑賞できます。現在、事前予約制をとってはいますが、急に思い立って出かけても、よっぽどでない限りすぐに入れますので、ご安心を。

今どき、たった¥500で、高校生以下なら無料で!誰もが気軽に、100年分のバラエティー豊かな美術作品を間近に楽しめる場所は、そうそうありません。

でも、理解しなきゃ!作家のことを勉強しなきゃ!って気負う必要は皆無です。
館内は、だいたい時系列順で展示スペースが配置されていますが、全部を全部、順番通りにしっかり見なくて全然OK!ですし、気分転換がてら、ふら~っと涼みに出かけて、ワンフロアだけぐるっとお部屋を巡って、なんかいいなぁっていう作品をちょっと眺めて、ゆるっと帰る、っていう過ごし方でも、十分楽しいと思います。


もし、もっと知りたい!素敵!!!と思える作家や作品に出会ったら、併設されているミュージアムショップで、ポストカードや作家の書籍を探してみるのも楽しいと思いますよ。そのまま神保町に流れて、喫茶店でまったり、とか、カレー食べる!とか、古書店めぐりとかもいいですね。

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ちなみに・・・
この記事では全く書いてませんが、「ピーター・ドイグ展」、もちろんハシゴして観てきました。こちらについても、近日中にまとめたいと思っています。会場は賑わっていましたよ~。


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