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【5分小説】 侵略計画 #11 最終話

1話5分ほどで読めるエンタメ連続小説です。サクッと読める内容になっております。
それでは肩の力を抜いてどうぞお楽しみください。

3cmの生物が地球侵略を目論むお話です。果たして成功するのか!?

第一話から読みたい方はこちらから!↓↓

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11、本当の侵略計画

 暗くて、息苦しくて、孤独で。でもそんな中でも温かくて。私の人生などなんの意味があったかはわからないけれど、せめて最後くらいは何か成し遂げたかった。が、それも無理だったようだ・・・。

 ゆっくりゆっくり吸い込まれていく。

 とうとう、意識が遠のき始めた。

 いきなり背中が大きな手に押されているようであった。これは、あれだろうか、次の世界へ飛ばされていると言うことだろうか。そうなのであればきっと地獄が待ち受けているのだろう。

 パーンと目の前が明るくなった。そして空を飛んでいる感覚になった。いきなりママの顔が目の前に現れた。

 ん?ママの顔?

 私は目をカッと開けた。すると・・・

 本当に空を飛んでいるではないか!

 すぐに私は空を飛んでいるのではなく落下しているのだということに気づいた。
 そしてガツーンと体がフローリングに叩きつけられた。

 「イッデエエエエエ!」

 腹の底から声を張り上げた。
 そして打ち付けられた背中の方に手を回そうとしたらネバネバしたものが手からぶら下がっていた。体をベタベタと触るとどうやら全身ネバネバに塗れているようであった。そして、世にも恐ろしいほどの悪臭が鼻をついた。

 あ、これはミネチャンのゲ・・・

 「お前、何しやがるんだ!」
 背後からドスの聞いた声が響いた。
 「お前のせいで何もかもがメチャクチャだ。どう責任をとってくれるんだ!」
 私はゆっくり立ち上がり、ヒゲマメの方へと振り向いた。
 「私達が、他生物の星と住処を荒らして乗っ取る権利なんて、微塵もないんだ!」
 「だから今更なのだ!そんなのはわかりきっている!」
 「じゃあ、なぜ。」私は目を見開いた。
 「征服とは支配と搾取だ。支配者としてトップに君臨した、たった一人が勝者となれる。権利なんて物は建前で、全ては支配者が握るのだ。その支配者こそが私だ!私は生粋の勝者になるはずだった!が、しかしお前のせいで・・・。」ヒゲマメは唇をかみながらすかさず腰からレーザーガンを抜いて私に向けた。「ソラマメよ、手を上げろ!私の支配下に入ると言うのならば命だけは助けてやる。」
 私はゆっくり手をあげた。
 「お前の支配下に・・・。」
 「そうだ。そっちにいくから動くな。」ヒゲマメは一歩ずつ慎重に近づいてきた。そして私の目の前まで来た。私はヒゲマメの目を、キっと睨んだ。

 「お前の支配下になるくらいならば、死んだほうがマシだ!」

 「それは間違った答えだ。」
 ヒゲマメはレーザー銃を構え直したかと思うと

 バーーーーーーーーーーーン!

 ・・・私は撃たれたのか?

 ・・・反射的に閉じた目をゆっくり開けた。

 するとそこには・・・

 ヒゲマメのいた所にはスリッパを履いたママの足があった。

 おお・・・、なんと恐ろしや・・・。

 周りを見渡すと、全員が私を見ていた。同じ飛行体に乗っていたマメ族のみんな、ママ、いつの間にか駆けつけていたテックン、そしてパパ。
 横を向くとミネチャンも上体を起こしキョトンと私を見つめていた。

 私は肩をすくめた。

 ・・・
  ・・・・・
   ・・・・・・

 誰一人として、この状況で言葉を発しようとする物はいなかった。

 するとママは足をまた上げた。

 ヒゲマメに続いて私がやられるのか!?
 私は両手で目を覆い、歯を食いしばった。

 しかし、その瞬間はなかなかやってこず、指の隙間からそっと上を見上げると、 ママはスリッパを脱いで裏側を見ていた。ママの歪んだ顔から察するにきっと世にも残酷な光景が広がっているのだろう、その光景を想像しないように努めた。
 「ソラマメさん!」
 上空から私を呼ぶ声がした。見上げると、一体の飛行体が私めがけて飛んできた。そして寸分の狂いもなく私の目の前に着陸すると、ハッチが開きハナマメが飛び出してきた。
 私が目を見開くと、ハナマメは私に抱きつき、そのまま二人で倒れ込んだ。
 「よかった。死ななくてよかった。」今にも泣きそうな声でハナマメは繰り返し言った。
 「私を誰だと思っている。そう簡単には死ぬわけないだろう。」
 私はニカっと笑いながら言った。そして二人で声を上げて笑った。
 立ちあがろうとしたら、滑って二人とも馬鹿みたいにまた転がった。
 笑っていると「あの」と声がした。上を見るとママが屈んで私たちを見下ろしている。私は目を見開いてママを見つめた。
 ママは私とハナマメ、そして上空に浮いたままこの状況を飲み込めないでいるマメ達を見て口を開いた。
 「よかったら、体を綺麗にしてから、みんなでポテチ食べます?」
 
 私がいなくなっている間にミネチャンはママに私のことを全て説明していた様で、まだ少々疑っているところはあれど、一応私を殺さずに様子を見よう、という判断をしてくれたとのことだった。そして先ほどのヒゲマメとのやりとりを見てい色々と察してくれたようであった。
 私たち、マメ族全員がダイニングにいた。そして大量のポテチにありついていた。やはり私の予想通り、皆一口食べた瞬間から虜となっていた。マメもニンゲンも、皆一緒になって幸せそうにポテチを食べる光景は、私の心になんとも心に温かいものを流し込んだ。気づいたら私の顔は綻んでいた。
 「何ニヤニヤしてるのよ。」
 ハナマメこそニヤニヤしながら私の隣に座った。
 「今わかったのだよ。」
 「何が?」
 「私が本当に欲していたもの。」
 「へえ?それは何?」
 私はハナマメを真っ直ぐに見た。「友達だよ。」
 ハナマメはキョトンとして私を見つめた。
 「星でも、部下でも、奴隷でも、権力でもない、友達が欲しかったんだ。」私は笑っているミネチャンの横顔を見つめた。「私は、いつも孤独だった。家でも職場でも。」
 遊んでいる子マメ達の笑顔を見て、またさらに顔を綻ばせた。
 「そして長い間ずっと、欠陥マメな私に友達ができるわけがないと、私自身が思っていたのだ。だから何か大きなことを成し遂げて誰かを振り向かせたかった。だから地球征服なんて恥ずかしいことを・・・。」
 ハナマメはじっと私の話を聞いていた。
 「単純に、友達になって欲しいと言えば良かったのに。弱虫な私はそれができなかった。そんなこともできないやつと、誰も友達になんてなりたくないよね。」
 私は、ハハハと冗談混じりに笑ったが心はどこか晴れない。
 肩を落とす私の手を取り、ハナマメはにっこり笑った。
 「ソラマメさんは、私の自慢の友達よ!」
 その言葉を聞いた途端に私の目に涙が溜まった。バレないようにそっぽを向いた。
 「ソラマメ泣いてるの!?」
 いつの間にかミネちゃんが隣に来てすぐにバレてしまった。そんな事はない、とさりげなく涙を拭いながら経緯を説明した。そうしたら、ミネチャンも「私も友達だよ!忘れないでよ!」と今まで見た中でいちばんのかわいらしい笑顔を浮かべて言った。
 さらに涙というのは止めようと思えば思うほど流れてくるものだ。

 「本当に良かったの?」
 母船の操縦席に座り小さくなっていく地球を背にしながら、ハナマメは私に聞いた。
 「うん、これで良かったんだ。むしろこうじゃなきゃいけなかったんだ。」
 私は青い地球をぼーっと見つめながら、自分に言い聞かせるようにポツリと呟いた。
 私を始め、マメ族のみんなで話し合った結果、やはり帰還しようということで意見が一致したのだ。地球は面白みと美しさが凝縮されている星であり離れるにはあまりにも惜しいところであった。しかし、やはり、規模が大きいがゆえに、私たちが暮らしていくとなると、かなりの困難を極めると判断したのだ。草花や木々、種などがなんせ大きいので家を作るために栽培や育成をしたとて取り扱うのが非常に困難だろう。草花だけの問題であれば小さなモノだけを集中的に集めて利用すればいいかもしれない。しかし、何よりも生息している昆虫や生き物が大きすぎて、命の危険と隣り合わせの生活が強いられることだろうと判断した。
 そして何より、人間の力を借りなければ生きてはいけないだろう。そこが決定打となり帰還することにした。
 人間の力を借りて生きていけば確かに安全は保証されるかもしれない。しかし、人間達が私たちを守る義理が一体どこにあろうというのか?いつ手のひらを返して私たちを追い出したり傷つけようとしたりするか、わかったものではないというリスクは負わざるを得ないと感じた。そんな考え方はできればしたくないが、だからと言って無責任に、永住を決定することはできないと、そういう結論が出た。
 別種族が一緒に共存するという事は、ものすごく難しい事なのかもしれない。お互いに助け合える存在になった時にこそ共存という道が開かれるのだと思う。一方が守られるだけの存在であった時に、守る側が嫌になってしまえば元も子もないのだ。
 私たちが去る時にミネチャンは泣いて止めようとした。また、あのおもちゃの家に住めばいいじゃない、私が一生ソラマメを守っていくからと、泣きながらそう言ってくれた。

 でも、そこに甘えてはいけないのだと思った。

 あの、おもちゃの家でソラマメマン見放題の環境にいれば私は間違いなくなんの成長もない自堕落マメのままで終わってしまう。きっといつかは崩壊する日が来るだろうと思った。
 そんなのは嫌だった。強く立派で胸が張れるようなマメになった時に、またミネチャンに会いにくるよ、そう彼女と約束をして別れた。

 もう自分から逃げるのはおしまいだ。

 「そうだ、ひとつ聞きたいことがあるのだ。」私はハナマメと食堂に向かっている時に聞いた。「あの時なぜ僕を助けようとしたのだ?最初は疑っていたのに。」
 天井から助けに来てくれたハナマメを思い出しながら聞いた。なんともドラマティックな助け出し方に今では思い出すと笑いが込み上げそうになる。
 「ああ、あれはね、単純にヒゲマメにムカついたからよ。あいつね、最初は土地代も家代も激安、しかも食事にも困らない夢の地へ連れて行ってくれるっていうから来たのよ。渡航費もそんなに高くなかったし、ちょっとお金にも困ってたから、安易にその話に乗っちゃったわけ。
 でも、あなたが捕えられた時、あなたの言葉が妙に引っかかってね、こっそり資料をのぞいたのよ。そうしたら土地やら安全な暮らしなんてのは真っ赤な嘘。自分だけの帝国を作り上げることを企んでいたのよ。
 ヒゲマメ帝国大作戦ですって。ネーミングセンスダッサイわよねぇ。
 連れてこられた私たちは奴隷にさせられるところだったみたいで、それを問い詰めたら、今度は、言う事を聞かないと子マメがどうなるかわからないぞ!って脅されちゃって。
 だから、あなたを助けることにしたの。条件付きでね。」
 あの時、ハナマメが出した条件。それは、私を助ける代わりに、ヒゲマメをやっつけてくれ、というモノであった。まあ、結局私は何もせずともママがファインプレーをしてくれたおかげで、大助かりの結果になったわけだが。
 「あのマメも可哀想なマメなんだけどね。」ハナマメはそう言いながらも軽やかにステップを踏みながら言った。「ヒゲマメはさ、有能な経営者だったんだよ。何個も会社を持っていて。でもね、ギャンブルにハマったり、詐欺に遭っちゃったり、色々重なったみたいでね。そして経営は傾くわお金は盗られちゃうわ。で、とうとう、ヤバイってなった時に、あなたのメッセージを見て、今回の計画を思いついたんだろうね。唯一手元に残ったこの船を使ってね。
 まあ詳しいことはよくわからないけれど。」
 ハナマメの可愛らしい笑顔の奥には憎しみや悲しさが見え隠れしていた。きっと私の知らないものを、もっともっと抱えているのだろう。
 「それよりもさ、ご家族のところへは会いにいくの?」
 私は父と母の顔を思い出そうとするも靄がかかったように思い出せない。
 「いや、あの家族とは縁を切るんだ。なんてったって仮に息子を見放すような人たちだ。そんな人達とは関わらない方が良いだろうと思って。」
 ハナマメは立ち止まった。そして深刻そうな顔をした。
 「そのことなんだけど、ちょっとついてきてくれる?」
 首を傾げる私の事などお構いなしにハナマメは私の腕を引っ張った。そして資料室に引っ張り込んだ。
 「ヒゲマメの資料の中でこれを見つけたの。ちょっと聞いてくれる?」
 スクリーンの中に表示されているその『音声データ』をハナマメは開いた。すると、ザーという雑音が部屋中に響いた。

 「父上!父上!私です!宇宙船が壊れてしまいました。助けてください!」

 なんとあの日の、宇宙船が壊れた時に父に助けを求めた時の私の声ではないか!
私は固まったまま続きをまった。そして父の声が、あの時は飛び飛びだった音声がはっきりと綺麗に聞こえてきた。

 「・・・大丈夫か?今助けに行くからな!死ぬな!無事に帰ってこい!助けを送るからな!」

 私は驚愕した。

 父は、助けに来ようとしてくれていた。

 あの時聞こえたのは確か

 「・・・イジョウ・・・
   ・・・タスケ・・・  イクナ・・・
    ・・・カエッテ  ・・・クル・・・
     ・・・ナ・・・」

 照らし合わせると、しっかりと父が助けを寄越そうとしてくれた声に合った。

 私は奥歯を噛み息を止め、涙を流すまいと務めた。
 「先に食堂に行ってるね。」
 ハナマメはそっと言い、資料室を後にした。
 彼女がドアを閉めた途端に涙がドバドバと溢れた。

 なんてことだ。

 私は何か大きな勘違いをしていたようだ。

 大きな、大きな

 あまりにも悲しい勘違いを・・・。

 食堂に行くとハナマメが子マメと楽しそうに喋りながら食べていた。
 私を見つけると一層華やかに笑い、こっちこっち、と手招きした。子マメも一緒になって、ソラマメ〜!と呼んでくれている。
 私はにっこりと笑って二人の元へ、いや最高の仲間であり同士であり、何よりも最高の友達のもとへと、向かった。

 私の侵略計画は、こうして大成功を収めたのだ。
 え?侵略できてないじゃないかって?

 いやいや、幸せへの侵略ができたのですよ、私は。

 完

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お読みいただきありがとうございました!
今回こそが最終回!!ここまでお付き合いいただいた方、本当にありがとうございました!!

他にも連載や読み切り作品を執筆して参る所存にございます。
よかったらまた遊びにいらしてください♪

また会う日まで〜!

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奈緒美フランセス
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