【5分小説】 侵略計画 #4
1話5分ほどで読めるエンタメ連続小説です。サクッと読める内容になっております。
それでは肩の力を抜いてどうぞお楽しみください。
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第4話 ミネチャンはどちらの味方!?
さあ、まだ見ぬ友よ。そろそろ見つけに来て欲しいところだぞ。・・・これだけの情報が揃っているのだ。巨大生物に囚われ、ポテトチップスと言う食べ物があり、ポコの扉が外へ通じていると言う・・・その情報だけでは、やはり無理があるか・・・。
以前よりも最悪な状態に陥ってしまった。ここからの唯一の脱出方法であった脱出ポッドも奪われてしまった。
前回、脱出ポッドでの脱出・・・言いづらいな。まあ、そんな事はどうでもいい。とにかく脱出ポッドでの脱出が失敗したのは、どうやらママのせいだったみたいだ。飛行しているところをはたき落としたようだ。私が涙を流しているのなんてそっちのけでパパと話している時に、私を指さし、透明の棒を握り叩き落とすようなそぶりをして見せていた。背後からとは何とも汚い手を使うやつだと怒り心頭である。
その時は私の処分だか行末だかを話していたのかはわからないが、結局その日から3日間ほど過ぎても彼らは何もして来なかった。いや、しなさ過ぎたと言うべきだろう。なぜならば、私はさらに窮地に追いやられることになる。ママがテックンに私の食事の支給をストップさせたのだ。
まずい。餓死させられるぞ。
夢のため、野望のため、仲間達のため、ポテトチップスのために諦めちゃいけない。わかっているのだが、どうしても心折れそうになってしまう。こんな殺風景な檻の中で手も脚もでない、ちっぽけな自分が何とも惨めで仕方がない気分だった。こんなちっぽけな私は夢を抱くことすら許されないのだと、そう言われているような気分なのだ。
もう、このまま何もせずに命果てるまでじっとしている他ないと言うのか・・・。
空腹が限界を越えそうになったある晩、ミネチャンが自分専用のスクリーンをいじっているのが見えた。霞む目で見つめていると、そのスクリーンには、何と私にそっくりな生き物が映っているではないか!緑色で体はトップモデルのように丸く、手足も惚れ惚れするほどに短く細い。ヒラヒラと背中につけているのはマントだろうか。普段であればマントとは何とも悪趣味な、と一蹴するところだが、なんせここから出ることへの鍵を握っているかも知れないと思うと、そのマントはキラキラと眩しいくらいにカッコよく見えた。
しかしあれは、何かしらの交信シグナルが映し出されているのだろうか?ミネチャンはキャハハと笑いながら手を叩いている。スクリーンの中の、私に似た者は何かを喋っているが私には理解のできない。どうやら巨体生物達の言葉を喋っているようだ。
その者をじっと見ているると、仮説が私の中に突然と生まれた。
もしかしたら私のことを心配した仲間達がよこしたレスキューかも知れない。
もしかしたら私の計画を一緒に遂行する仲間になってくれるかも知れない。
私は、渾身の力を振り絞りスクリーン内で喋るその者に向かって叫んだ。
「我が名は####。銀河の果てよりこの地へ来た!そなたはもしや私を救いに来た使いの者か?」
スクリーン内のその者には届いていないのかこちらには見向きもせずに喋り続けている。私はさらに声を張り上げた。
「我が名は####。銀河の果てよりこの地へ来た!そなたはもしや私を救いに来た使いの者か?」
やはり、聞こえていない。それどころか笑顔を作っている口角は一層上へキュッと吊り上がり、回ったり跳ねたり腕を振り回し始めたではないか。それを見ていたミネチャンも立ち上がり、その動きを真似し始めた。
そこで私は全てがわかった。この動きは挨拶だ!挨拶をしないから反応をしてくれないのかも知れない。
やる事は一つしかない。相手を真似して自分の存在を知らしめなければ。
手、手、足、足、ジャンプで「ヤア!」。何回も同じ動きを繰り返すので私も空腹で力が出ない自分に鞭を打ちながら何度も真似をした。しかしその者は振り向いてはくれなかった。
もう動けないと、ヤア!を振り絞りながら倒れ込んだ。もうだめだ。私の存在にはとうとう気づいてもらえなかった・・・。
しかし、諦めかけたその時、ヤア!ヤア!と連呼する声が一層大きく聞こえてきた。もしや、気づいてくれたのか?スクリーンのあった方を見ると、そこには、
ミネチャンの巨顔が!
お前じゃなーーーーい!
ミネちゃんはヤア!ヤア!と私に向かってしきりに叫んでいる。思い切りの「お前に用はない」の顔を作ってみせるも、ミネチャンはお構いなしにヤアヤア叫んでいた。そして、スクリーンと私を交互に見比べた。目を丸くして、口をパクパクさせている。「ソラマメマン?ソラマメマン?」と語尾の音をあげて何かを尋ねているようであった。スクリーン上のその者は何とも幸せそうに両手を宙に舞わせている。しかし全く反応を示してはくれない。こちらの話は聞こえていないようだ。
私もスクリーンとミネチャンを見比べた。もしや、ミネチャンはあのスクリーンの者と私が同一人物だと思い込んでいる?そうだとしたら・・・。
これは使えるかも知れない。
私は、さっきの挨拶の動きを一通りこなし、腹の底からヤア!と野太い声を出した。そして姿勢を低くし全速力で駆け出した。できうる限りの「カッコいい顔」で、檻の中をグルグルと駆け回った。そして、ここぞ!と言うところでクッと方向転換をし、ミネちゃんの方面へとかけた。ガツンと言う鈍い音と共に私は頭から透明の壁にぶつかった。そしてビターンと背中から思い切り転げ、同じく思い切り痛がるそぶりを見せた。その後には泣いているかのようにウッウッとしゃくりあげた。さらに悔しいと地団駄を踏んだ。
えーんとあざとい嘘泣きをしながらミネチャンを見上げると何を見せられているのかと言わんばかりに訝しげに眉を顰めている。
私はスッと背筋を伸ばし、ゆっくりとミネチャンをじっと見つめた。そしてミネちゃんを指さし、そして檻の天井を指し、目の前に透明な檻があるかのように、そしてその蓋を掴むように両手をぐっと握った。そしてその蓋をパカっと開けるそぶりを見せた。
最後にもう一度、切実にミネチャンを見つめた。
ミネチャンは首を傾げ、何か言っている。何を言っているかはわからないが、何となく頷いた。もう一度スクリーンの中の者を見つめたあとに、ミネチャンはゆっくりと蓋に手をかけた。
つ、伝わったぞ!諦めなければいつかは報われるというのは、どうやら本当だったようだ!
ミネチャンはガチャガチャと蓋を外そうとするも中々外れない。私はそれを必死に見守ることしかできない。
パカっという、今の心情にはおよそ似つかわしくない軽快な音が響いた。そしてゆっくりと天井が外れた。
やっと、やっとだ、ひとつ目の自由が手に入るぞ。そう思い希望が喉のてっぺんに押し寄せるような感覚が湧いたのも束の間、遠くから「ミネチャン!」とママの声がした。
ミネチャンの手が止まった。
まずい!このままではまた蓋を閉じられてしまうかも知れない。
私は腕をこれでもかというほどに伸ばし、声のする方を指さし、そして自分の首を絞める動作をし、パタっと死んだふりをした。そしてミネチャンに強力な念を送るかのように目をカッと開き、手を、お願い、と言わんばかりに合わせた。
ママニ コロサレル タスケテ オネガイ
ミネチャンは困惑の色をはっきりと残したまま、信用していいものかと探るように私を見た。
ママは部屋に入ってきてミネチャンの背後から言った。
「ミネチャン ソラマメチャンハ コノヒトニ アゲルカラネ。
バイバイノ ジカンヨ。」
ママの背後には今までに見た事のない、顔にモジャモジャの毛が生えている巨大生物が立っていた。
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