見出し画像

冬の言葉との出会い

絵を描くとき、屋外に出てスケッチすることを基本にしています。冬は寒いのでなかなか屋外スケッチに踏み切れないのですが、立春も近づき、久しぶりに京都北山の府立植物園に出かけました。

植物がたくさんあるところに行くと、ホッとし、無意識の緊張がゆるみます。ふだん都会では眠らせてしまっているいろんな感覚が開いて、美しい植物たちがどんどん目にとびこんできます。冬の植物園は花が少なく、人もまばら。でも、絵を描く気持ちの私にとっては見どころ満載です。

午前中の植物園はまだ雪が残っていて、雪の中で寒そうに咲く花がステキに感じられました。

雪の中のエリカ

昨日の見どころは特に、冬枯れの木立と乾いた落ち葉。サルスベリやウメモドキの樹皮の美しさが目をひきます。

サルスベリ

また、京都府立植物園には世界中の様々な種類の針葉樹があり、それらが落とす葉が多様で美しいことを発見。ふかふかに葉が積もった地面を歩き、森の匂いをかぐのも楽しい。深い森の中を歩いているかのような、絶好の森林浴。

緑と赤の対比

そんな風にして、夢中で植物園を歩き回り、描きたいポイントを見つけては、スケッチをしました。冬の枯れた樹木の美しさと、カサカサとした広葉樹の落ち葉の色あい。針葉樹の葉がふりつもる森。

絵を描き終わり、タイトルを考えるなかで、これらを何と名付けようかと少し検索してみました。こんなにステキなのに、冬枯れって呼ぶのもなんだかさみしい気がしたのです。すると、私が体験した楽しくて美しいものにはほとんど全部、きちんとした日本語があることを知りました。季語です。

冬枯れの木や林は、冬木(ふゆき)、冬木立(ふゆこだち)、寒林(かんりん)、などと呼びます。

ただの落ち葉ではなく、年月が経った冬の落ち葉には、朽葉(くちば) という言葉がありました。

落ち葉には、日ごろから葉が美しいなぁと思っていた柿やホオノキなどの落ち葉にも、ひとつひとつ言葉が与えられていました。

柿落葉(かきおちば)、朴落葉(ほおおちば)、
銀杏落葉(いちょうおちば)
季節とこよみ(https://floweryseason.com/fuyu-kare/)

日本語はすごい。きっとこれらの言葉は、昔の人たちが美しいと思ってたくさん歌に詠んできて、季語になっていった言葉。
さらには、落ちた針葉樹の葉の美しさを表す言葉もありました。

落葉松散る(からまつちる)
季節とこよみ

めちゃくちゃピンポイント。これは、からまつに限って使う言葉のようですが、針葉樹の葉の落ちて積もる美しさを、昔の人はちゃんと知っていたのです。

自分が体験した美しさに言葉が与えられていた。その事が、何より驚いたような、嬉しいような気持ちになりました。言葉があることによって、それが確固たる形をもった美しさであることを保証されたような、背中を押されたような、そんな気持ち。

寒いからと家に閉じこもっていたら、知ることのなかった冬の言葉たち。出かけて良かったなあ。

そんな、”冬木”と”朽葉”の美しさを描きました。

スケッチブックより


いつかまた、"落葉松散る(からまつちる)"も描いてみたい。



読んでくださってありがとうございます。植物を暮らしの中で楽しむ方法を、絵や文章を通して発信していきたいです。それが回りまわって、”自然”と”人”を守ることに繋がればと思います。まだまだ未熟ですが、サポートしていただけると嬉しいです。