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正しい姿勢を求めて苦しむのはやめましょう

あるセッションの後、生徒さんの一人がおっしゃいました。

 『正しい体というのはないんですね!』

そして彼女は、今までの人生で、いかにずっと「正しい体」というものが存在していると思い込み、それに自分を合わせようとしてきたかを、打ち明けてくださったのです。彼女は、身体を駆使する分野で活躍しており、仕事でもパフォーマンスでも今まで様々な業績を残してきた人ですが、長年、足腰の痛みに苦しんでおられました。彼女は体を主に使う仕事をしている人はですが、そうでなくても、多くの人が「正しい体」や「正しい姿勢」があると思い込んでいます。「正しい姿勢」を物差しにして自分を測り、そこに合わせようとするのです。結果、体には無理が来て、一番自然で楽、かつベストに機能できる状態がわからなくなってしまう。

 セッション中、体の感覚を探っていく動きをしている時、彼女は、与えられた指示に従い、自分の体をギリギリのところまで持っていって、達成しようとします。一生懸命です。『いや、できるギリギリのところまで持っていって、ストレッチしないで。少しでも無理してるなと感じたら、その手前でやめてください。』『大きく、いっぱいいっぱいやろうとしないで。一生懸命やろうとしなくて良いですよ。いかに自分が楽にできるかに集中してください。』『小さいゆっくりの動きをして見て。自分の体が、もっと感じられますよ。』と、自然の動きが出てくるようにガイドします。「一生懸命にやらない」ことが、彼女のように業績で認められてきた人には難しいんです。

 最初は、「あそこが痛い、ここが痛い」と言い続けていた彼女も、徐々に自分の体の中を探ることに集中し始めました。そうするうちに、あれほど歪んでいた左側の骨盤が右側と揃ってきました。彼女の両足は、バイタリティを取り戻してきて、どっしりとした存在感が蘇ってきたのがわかります。

 立ち上がった彼女は、「今まで、一つのある路線に乗って、ずっと走ってきたけれど、今、違う路線に乗り換えて走り出しました。」と満面に笑みを讃(たた)えておっしゃいました。

体は、その声を聞いてあげるだけで自然の姿を表してきます。 

固定観念に沿った正しい体や姿勢というものは存在しません。自分という人間の骨格や筋肉のつき方に沿った、重力に従う自然な体の状態動きだけが、唯一の「正しい体のあり方」なのです。

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