「酒井商会」酒井英彰さん、4月11日の答。
―縮小営業さえできなくなった今―
東京都が、居酒屋を含む飲食店に対して「営業時間を5〜20時、お酒の提供は19時まで」と要請したのは4月10日。しかし休業要請ではない。
世間では「これは朝酒、昼酒の推奨か」とも揶揄されたこの要請に、最も打撃を受けるのは当然、酒場だ。
その居酒屋であり、若者たちの〝密〟が危惧されている渋谷にある「酒井商会」。店主の酒井英彰さんはこの制限をどう受け止め、切り抜けるのか、要請発表の翌日に訊いた。
志村けんさんの訃報を機に
実質、夜の営業ができないということですよね。
これからどうしていくのか、昨日の今日なのでまだ考えている真っ最中です。僕らは一貫して、できる限り営業し続けようというスタンスでしたから。
これまでのことを話すと、2月くらいに「日本橋・銀座・浅草・横浜の飲食店は海外のお客さんが減って、休業するお店も出てきたらしい」とは聞こえてきました。ただ自分も、周りも、ほとんど危機感はなかったですね。
3月下旬までは満席で、相変わらず忙しい日々だったんです。
3月3日に予定していたカリフォルニアのワイン生産者を招いてのイベントは、さすがに来日できなくて延期になりましたが、結局参加予定だったお客さんが席を埋めてくれましたし。
だんだん「不要不急」「夜間、週末の外出自粛」といった声が高まっていきましたが、僕が決定的な危機感を覚えたのは要請より30日、志村けんさんがお亡くなりになった日(報道された日。亡くなったのは29日)です。
その日は電話がずーっと鳴りっぱなしで、出ると決まってキャンセル。それ以降のキャンセルも驚くほど、ガクッと増えてました。
それだけ志村さんは誰もが身近に感じていた人なんだなと……ちょっと絶句するくらいの影響力。
この1日で流れがガラリと変わりましたが、でも僕は「一喜一憂せず、平常心で、来てくれたお客さんを迎えよう」と決めた。これは自粛の波のなか、葛藤の末に出した答なので、この時点では迷いませんでした。
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