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「コート・ドール」斉須政雄さん、4月12日の答。


―いつも通り―

1986年に開店、静かな住宅街、三田で34年を迎えるフランス料理店「コート・ドール」。斉須政雄シェフの著書『調理場という戦場』(朝日出版社)をバイブルとして修業に励んだ料理人は多い。
そうしてシェフになった者たちが、今、「何が正解なのかわからない」ともがいている。では、斉須シェフはどうなのだろう?答があってもなくてもいい、ただ師の言葉を訊きたくなった。

小舟に乗って大海を漕いでいる

僕だって怖いですよ。
見えない敵がいて、それに向かって、毎日が小舟に乗って必死に大海を漕いでいるようなものです。明日どうなるかなんてわからない。
道標なんかない。僕は今70歳ですけど、20代の人と同じように、日々ドキドキしながらやっています。

イカワさんよりすこし長く生きてるといったって、こんな経験はしたことがない。もちろんペストとかスペイン風邪とか知りませんし、でも今回のコロナウイルスはそれほどのことでしょう?
「コート・ドール」なんて、まだ35年目です。リーマン・ショックや大震災も困難でしたけど、それを凌駕する事態が起こっているわけです。だって日本全国だけでなく、世界中が巻き込まれているのですから。

「コート・ドール」は時間短縮以外、いつも通りに開けています。
ただ、お客さんがレストランに来たくないと判断されるなら、それはしかたがないこと。お客さん、やはりね、いらっしゃいませんよ。1日2名、4名、たまに6名の時もある、というくらいです。

来てくださる方は、顧客もいらっしゃるけど初めての方もいらっしゃるし、応援するためといった意味ではなくて、単にキャンセルをされなかった方々だと思います。すべてキャンセルになった日は、臨時休業です。

レストランを開けるか、閉めるか、どうするのがいいのか。
答はないですよね。正解は僕もわからない。僕らは1組でもお客さんが予約を入れてくれる限り、開けている。それだけです。
衛生管理は普段からしっかりしているので、いつもと変わらずに。

営業時間は要請を順守します。一昨日(4月10日)、飲食店の営業は20時まで、お酒は19時までと発表されましたから、ディナーは20時まで。決まったことは決まったので、国や都に異を唱えても勝ち目はありませんから。

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