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「眠庵」柳澤 宙さん、5月16日の答。

―淡々と営業―

2004年、神田の古民家で開店し、2020年で16年。「眠庵(ねむりあん)」の柳澤 宙(やなぎさわ ひろし)さんの前職は化粧品会社の研究員、その前は大学で応用微生物学を専攻。世界を微生物の目から見る蕎麦職人は、人類未曾有の危機にどう対峙したのだろう?

世界が変わったのは、3回目


世界が変わったな、と感じました。
この感覚は、2001年の9・11(アメリカ同時多発テロ)、2011年の3・11(東日本大震災)と同じで、今回のコロナ禍が3回目です。

19年前の9・11の時、状況が落ち着いてからですが、私はアメリカのワールドトレードセンター跡地へ行きました。9年前の3・11では、津波のあった東北へ。
変わってしまった世界と、それに関わるこれからの自分のことを考えるためには、現場を見て、肌で感じなければいけないと思ったからです。

どんなことも、現場(元)に近づいていくことは大事で、「元」を知ることで対応と対策が立てやすい。私には、昔からそういうふうに考えるところがあります。
もともと大学で応用微生物学の研究をしていて、蕎麦職人になるまでは化粧品会社の分析・開発チームにいました。だから、そういう考え方なのかもしれません。

たとえば蕎麦なら、打ち方より挽き方、挽き方より原料へと「元」に近づいて考えてみる。そのために蕎麦の産地を巡って、畑という現場に立ってみて、感じたり情報を得たり、生産者と話し合ったりします。

しかし今は、現場が世界中。自分の店もそうですが、今生活している街も現場です。
今回は店の近くの秋葉原まで行って、閑散とした街の様子を見たり、下町の酒場に行って、普通に営業しているなかに混じってみたりもしました。地域によって事情の差があり、街の人の感じ方の違いや、温度差がありますよね。

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